著者
板垣 史郎 内山 道子 金澤 佐知子 細井 一広 照井 一史 下山 律子 ????田 成紀 Ueno Shinya 早狩 誠
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.50-57, 2013-05-31

本研究では,食事が多様な食品機能成分の摂取経路という一面を有し,疾病予防法を構築する上で有用な切り口であることを鑑み,アンジオテンシンIから強力な血圧上昇を有するアンジオテンシンIIへの変換を司るアンジオテンシン変換酵素(ACE)を標的として,青森県特産の農産物及び水産物に含まれるACE阻害物質の探索を行った.青森県特産食材より蒸留水で抽出した抽出液について,ACE阻害活性の評価を行った.ACE阻害活性を示した抽出液から各種カラム分画法にてACE阻害活性物質を単離・精製し,質量分析法により,ACE阻害成分を同定した.その結果,カボチャ,ニンニク,大豆,大鰐モヤシの抽出液に特に強いACE阻害活性を見出した.その中から,カボチャを対象としてACE阻害活性成分の特定を試み,分子量303のムギネ酸前駆物質,ニコチアナミンがその機能実体である可能性を強く示唆する結果を得た.
著者
加藤 拓彦 小山内 隆生 和田 一丸
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2-4, pp.71-78, 2006 (Released:2021-09-21)
参考文献数
19

作業療法を行っている統合失調症患者 84例を対象とし,対象者の退院に関する意識と社会生活背景としての結婚および就労状況を明らかにすることを目的に面接調査を行った.その結果,退院を希望しない者は 29%であり,退院希望者に比べ入院生活に満足している者が有意に多く,年齢は有意に高く,入院期間および罹病期間は有意に長かった.退院への不安については,家族,経済や就労に対する不安が多かった.結婚状況では,対象者の 26%に結婚経験があったが,そのうち離婚率は 82%と高率であり,結婚継続の困難さが示された.就労については,就労希望者群では就労希望のない群に比し,退院希望者の占める割合が有意に高かった.これらの入院統合失調症患者に対し有効かつ積極的な作業療法を展開していくためには,以上に示した個々の対象者の社会精神医学的側面についての理解を深めることが重要である.
著者
鳴海 俊治 今西 賢悟 大山 力
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2-4, pp.101-106, 2011-12-26

2010年10月1 日より財団法人鷹揚郷からの寄付講座として弘前大学大学院医学研究科に先進移植再生医学講座が設立された.1997年10月16日に「臓器の移植に関する法律」が施行されて以来,青森県においても八戸市立市民病院から2 例の脳死下臓器提供があった.一方,2010年7 月17日より改正臓器移植法が施行され脳死下臓器提供者は増加しているものの,心停止下の提供者は減少しており,臓器提供全体は増加していないのが現状である.本講座の設立を機会に青森県の移植医療,特に肝移植と腎移植に関する歴史を紐解き,本邦及び青森県の移植医療の現状を報告するとともに,その発展に必要な事項や取り組みを述べる.
著者
上野 伸哉 古川 智範 二階堂 義和 下山 修司 柴 祐子 山田 順子
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2-4, pp.105-109, 2016 (Released:2021-06-01)
参考文献数
3

γ-aminobutyric acid (GABA)は成熟脳における主要な抑制性神経伝達物質であり,対応する受容体としてGABAA およびGABAB 受容体が存在する.GABAA受容体はGABA が結合することによりCl⁻イオンに選択性をもつイオンチャネルで,神経細胞膜電位の過分極をきたし,最終的に活動電位発生抑制をもたらす.このGABA 作動性の抑制機構はダイナミックに制御されていることが近年明らかとなってきた.この制御メカニズムを,①細胞内Cl⁻濃度制御,②GABAA 受容体サブユニット発現による制御,③受容体分布にかかわる受容体輸送(トラフィッキング)機構に焦点をあてて紹介する.
著者
髙橋 芳雄 足立 匡基 安田 小響 栗林 理人 中村 和彦
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2-4, pp.189, 2018 (Released:2021-04-26)

【目的】 本邦における中高生を対象にした大規模調査では、8.1%の生徒にインターネット依存傾向があることが明らかになっている(Morioka et al, 2016)。また、中学生においてインターネット依存傾向が身体的・精神的健康に対してネガティブな影響をもつこともわかっている。しかしながら、小学生を対象にインターネット依存傾向についての研究はこれまでにない。本研究では市内の小中学性を対象に調査を行い、児童思春期におけるインターネット依存傾向の実態把握及び、インターネット依存傾向と精神的健康の関連を検討する。 【方法】 市内全国公立小中学校に通う小学四年生以上の全児童生徒を対象に質問紙調査を実施し、8206人(96.3%)から有効回答を得た。インターネット依存についてはYoung's Diagnostic Questionnaire(YDQ)を用いて評価した他、児童生徒の抑うつ症状と生活の質(QOL)を同時に評価した。 【結果】 学年および性別を独立変数、YDQ 得点を従属変数として設定し、二要因の分散分析を行なった結果、学年の主効果および学年×性別の交互作用が有意であった。このことから学年が進むにつれて児童生徒のインターネット依存傾向が強くなること、学年によって性別がインターネット依存傾向に与える影響が異なることが示唆された。また、特に中学一年生から中学二年生にかけてインターネット依存傾向が特に強まることも明らかになった。続いて、YDQグループにおける抑うつおよびQOL の差を検討するために分散分析を行なった結果、“病的インターネット使用” 群では、他の群と比較して有意に強い抑うつ症状を示すともに、QOL が有意に低いという結果が示された。また、小中学性を分けて解析した際にも一貫して同様の傾向が認められた。 【考察・結論】 本研究の結果から学年が上がるにつれて、インターネット依存傾向をもつ児童生徒が増えること、特に中学二年生でインターネット依存傾向をもつ割合が大幅に増加することがわかった。今後は中学2年時に生じるインターネット病的使用の大幅な増加に寄与する因子を特定することが必要である。また、中学生だけでなく、小学生においてもインターネット依存傾向が児童の精神的健康やQOL にネガティブな影響を与えていることがわかり、インターネット依存傾向に対する早期介入の必要性が示唆された。
著者
町野 ひろみ 野村 理 和田 簡一郎 熊谷 玄太郎 田中 直 浅利 亨 石橋 恭之 花田 裕之
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2-4, pp.108-112, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
9

目的 : 津軽地方での外傷診療において,我々はりんご農作業に関連した頚髄損傷をしばしば経験するが,その受傷機転や臨床像には不明な点がある. 本調査の目的は,りんご農作業により生じた頚髄損傷の受傷機転と臨床経過を明らかにすることである. 対象と方法 : 2015年1 月から2019年8 月までに弘前大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された,りんご農作業に関連した頚髄損傷症例を対象とした.診療録より患者の属性,発生月,受傷機転,神経学的重症度および予後についての情報を抽出した. 結果 : 同定された10例のうち9 例が男性であり, 5 月と6 月に多発した( 7 例).受傷機転は2 つに分類され,乗用草刈 機運転に関連するもの( 5 例)と梯子などからの墜落( 5 例)であった.退院時のAmerican Spinal Injury Association Impairment Scale( AIS) は,Aが1例,Bが2 例,Cが2例,Dが3例,Eが2例だった. 結語:りんご農作業に関連する頚髄損傷は5 から6 月に好発し,乗用草刈機運転,梯子上の作業中に発生していた.重 症例も観察され,予防策の構築が急務である.
著者
伊藤 実喜 奈良 正人
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.96-96, 2015-04-06

弘前医学会例会の一般演題抄録は、一部の演題のみリポジトリにて公開