著者
根本 正之 大塚 広夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.184-192, 2004-09-30
被引用文献数
3 4

谷戸地形での雑草群落の構造的な特性とそれを維持してきた管理手法との関係を明らかにするため,同一谷戸内にある農道,畦畔および放棄水田内に発生した雑草の生態的特性と種間相互関係について比較検討した。132地点の方形区から得られた119種のサンプルをTWINSPANによって分類した結果,シバ,チガヤ,オギによって特徴づけられるスタンドがそれぞれ農道,畦畔,放棄水田に対応していることがわかった。地上部が頻繁に破壊される農道は陣地拡大型小型雑草のシバ,シロツメクサの他,木本類や大型雑草の芽生えもあり,不安定なスタンドであった。また年一回の刈取りが行われた畦畔には多くの種が含まれるものの,チガヤが超優占種となり,他種の現存量はヨモギとセイタカアワダチソウを除けば非常に小さかった。一方,放棄水田内ではオギが優占し,それとセリ,スギナやツル性雑草が空間をすみ分けて共存していた。雑草種の潜在的な草丈に基づく植生状態指数(IVC)は雑草群落の持続安定性の指標となるが,本調査地においてはその値は多様性指数と呼応していないことがわかった。
著者
郷倉 久徳 根本 正之 川原 淳
出版者
一般社団法人 環境情報科学センター
雑誌
環境情報科学論文集 Vol.20(第20回環境研究発表会)
巻号頁・発行日
pp.111-116, 2006 (Released:2008-12-02)

公園内の生物資源を保護し利活用するためには、画一的な管理では不十分で、立地条件に基づいたきめ細かな管理が必要となる。本研究では国営昭和記念公園で保護の対象となっている野生のネジバナが自生する、管理手法の異なる草地で植生調査を行い、管理が草本群落の構造に及ぼす影響を明らかにした。次に景観上から有用植物とされるネジバナの生活史を調査し、ネジバナの栄養成長期にみられる周辺植生が、光を透過しやすいイネ科雑草であること、また草刈り後の刈草を除去することがネジバナを生育域内で保全する上で重要であることを指摘した。
著者
中村 直紀 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.27-33, 1994-05-13
被引用文献数
2 1

Eupatorium odoratum はキク科の多年生低木で熱帯アジアの焼畑放棄地にしばしば侵入し優占群落を形成する。焼畑放棄地でよくみられるベニバナボロギク、カッコウアザミ、ギョウギシバ、カタバミおよびE. odoratum の実生成長に及ぼす E. odoratum の他感作用とその庇蔭効果について検討した。石英砂を充填したポットに各植物の実生を移植し、その表面に粉末にした E. odoratum 生葉を添加して、これらを温室内の相対照度が各々100%、 30%、 10%の人口庇蔭条件下で栽培した。またE. odoratumの粉末の代わりに他感作用のみられない腐葉土の粉末を添加して同様の庇蔭条件で栽培し、両者を比較した。E. odoratum 粉末の添加と庇蔭の双方の処理を施した場合、キョウキシバを除く他の実生の成長は、庇蔭処理のみのものと比較してより強く抑制され、しかも抑制の程度は10%区の方が30%区より強かった。一方ギョウギシバの実生は庇蔭処理単独で著しく成長が抑制された。そのため庇蔭条件下での粉末添加による成長抑制効果は明らかでなかった。
著者
根本 正之 長崎 祐二 池田 正治
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.159-166, 1992-07-31 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13

近年, 沖繩本島や八重山群島においてオガサワラスズメノヒエが優占する荒廃草地が増加してきた。オガサワラスズメノヒエは, 周年に亘って成長する, 生育型が叢生-ほふく型のイネ科多年生雑草で, 家畜に対しても有害である。したがってその防除法の確立が望まれるが, オガサワラスズメノヒエの生理・生態や防除に関する研究は殆どないので, オガサワラスズメノヒエが発生したいくつかの人工草地で生態学的調査を行った。オガサワラスズメノヒエは草地内で純群落を形成するまでには至らないが, 採草地周辺部あるいは刈り取り作業機の横すべりや, 牧草の取り残し等によって生じた裸地にいったん侵入すると, その形態的可塑性を有効に発揮し, 確実に空間を占有した。一度草地内に侵入したオガサワラスズメノヒエの防除は極めてむずかしいが, オガサワラスズメノヒエより草丈が高く, かつ, ほふく型で地表面を被覆する性質をそなえたジャイヤントスターグラスの牧草としての導入はオガサワラスズメノヒエ群落の抑制に有効であるらしいことがわかった。
著者
根本 正之 大塚 俊之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.26-34, 1998-05-06
参考文献数
16
被引用文献数
5

水田畦畔を含む農耕地周辺に自生する小型植物のムラサキサギゴケ, オオジシバリ及びヤブヘビイゴを植栽した試験区はおいて, これらの小型植物が8月上旬から10月上旬にかけて発生した雑草に及ぼす影響について検討した。1) 供試植物ぱいずれも多年生のほふく-偽ロゼット型の生育型を示すが, その葉群構造は異なった。オオジシバリの草高が最も高く, 他2種はほぼ同様の草高で推移した(Fig. 1, Table 1)。いずれも 4月中旬からほふく茎の伸長が旺盛となった。ほふく茎の伸長速度はヤブヘビイチゴが最大であった(Fig. 2)。ムラサキサギゴケは地表面を密に被覆し, その地上部現存量は最大であった(Table 1)。2) 供試植物のない対照区と比べて, 供試植物を植え付けた処理区ではいずれも発生した雑草の地上部乾重が有意に少なく, 供試小型植物はよる発生雑草の生育抑制効果が認められた(Fig. 3)。供試植物のほふく茎が一様に処理区内を覆った7月23日時点の, 処理区全体に占める緑葉部分の割合(%)と, 最終除草(8月9日)後に発生した雑草の地上部乾重との間にぱ負の相関が認められた(Fig. 4)。3) 試験圃場内に発生した雑草は39種でそのうち約80%は一年生雑草であった。すべての区において, 発生雑草中メヒシバの現存量が圧倒的に多かった(Table. 2, Fig. 5)。処理区ごとに求めた発生雑草の多様性指数ぱヤブヘビイチゴ区が最大で, ムラサキサギゴケ区で最小であった(Table 3)。
著者
根本 正義
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.p147-156, 1985-12
著者
根本 正之 小林 茂樹 川島 榮 金木 良三
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.198-204, 1983-10-25
被引用文献数
2

永年草地の強害草であるエゾノギシギシの生態的特性を把握するため、静岡県富士宮市の朝霧高原に位置する優占草種の異なる採草地を対象に調査した結果、以下のことが判明した。1. ラジノクローバー優占草地やオーチャードグラスが優占していてもその株化が進行している草地ではエゾノギシギシの被度が高かった。オーチャードグラスとラジノクローバーが混在するケンタッキーブルーグラス優占草地では、生育する雑草の種数は多かったが、エゾノギシギシも含めそれらの発生量は少なかった。リードカナリーグラスを5年前に追播し、それが優占している草地では、そこに生育する雑草の種数、量とも少なく、エゾノギシギシは確認できなかった。2. 5月上旬、草地内の裸地には多くのエゾノギシギシの芽ばえが発生した。大きな裸地ほど多数の芽ばえを許容できるが、裸地内の芽ばえの発生は不均質であった。3. エゾノギシギシはラジクノローバーおよびケンタッキーブルーグラス優占草地ではこれらの牧草よりも草丈が高くなるが、リードカナリーグラス優占草地ではそれによって被われた。またエゾノギシギシの主茎の直径はリードカナリーグラス<ケンタッキーブルーグラス<ラジノクローバー<エゾノギシギシ純群落の順に大きくなった。4. エゾノギシギシの出現頻度が高い草地に形成されたリードカナリーグラスのパッチの内部では、エゾノギシギシはパッチの中心部に近い個体ほど徒長し、茎は細く、一株当りの茎数は少なかった。一方葉は立ち上がり受光体勢をよくするが、リードカナリーグラスとの競合期間の最も長い中心部では枯死消滅していた。
著者
根本 正之 笹木 義雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.20-29, 1993-05-28
被引用文献数
3

光環境をめぐる作物と雑草の競合は、これまで寒冷紗による遮光実験や圃場における作物と雑草との混植実験に基づいて解析されてきた。寒冷紗の下と圃場の群落内では光の波長組成が著しく異なるが、その違いに着目して解析した研究はほとんどない。本研究では、この二つの異なる光環境下でツユクサを栽培し、その生育特性について比較検討した。光環境が常に一定な寒冷紗処理区では、ツユクサの草高は対照区より高く、最終調査時の8月1日まで伸長した。また分枝の発生が顕著であり、光強度の増大に伴い葉数が増加した。一方、ギャップサイズの減少により光環境と土壌の水分条件が継続的に変化した草地内のツユクサは、草高の伸びが7月25日前後で停止、分枝の発生は全く認められず、葉数の増加はほとんど認められなかった。また葉重比が寒冷紗処理区や対照区より明らかに小さかった。 開花開始時期は対照区が最も早く、次いで寒冷紗処理区、草地内ギャップの順であった。しかしながら粗個体再生産効率には差が認められなかった。ツユクサの生産構造は可塑性が非常に大きかった。特に草地内のギャップでは光環境の違いと水分ストレスの影響を受け、寒冷紗処理区の個体とは明らかに異なった形質を示した。 以上のようにツユクサの生育特性は寒冷紗処理区と草地内ギャップでは著しく異なることが判明した。
著者
根本 正之 村山 英亮
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究. 別号, 講演会講演要旨 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
no.43, pp.20-21, 2004-04-16

一般に都市的環境下にある道路の植えます、公園、寺社の境内、校庭、グラウンドなどに侵入して<る雑草(侵入植物群)は程度の差こそあれ、踏み付けや刈り取りという人間による物理的な攪乱を受けている。これとは対照的に都市空地は上述のような攪乱がみられなくなった都市の空間として位置づけることができる。人間による攪乱が取り除かれたり、管理が放棄された場合、他からの侵入や埋土種子に由来する雑草の定着によって当該立地の二次遷移が進行、しばしば都市にふさわしくない景観が形成される。本研究では空地発生雑草を省力管理するための基礎的知見を得る目的で、人間によるさまざまな干渉が停止する直前の立地環境の違いが、その後の二次遷移系列にどのような影響を及ぼしているのか調査した。