著者
根来 篤 梅本 匡則 任 智美 阪上 雅史 藤井 恵美
出版者
Japanese Society of Otorhinolaryngology-Head and neck surgery
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.188-194, 2004-03-20 (Released:2008-12-15)
参考文献数
8
被引用文献数
4 2

(目的)味覚障害の原因として血清亜鉛欠乏に伴う味覚障害がよく知られているが,血清鉄欠乏に伴う味覚障害はあまり知られていない.兵庫医科大学味覚外来における血清鉄欠乏症例の味覚機能を検討し,鉄欠乏性味覚障害の臨床像について検討した.(対象と方法)1999年1月から2003年2月の間に当科味覚外来を受診し,血清鉄低下を認め,鉄内服療法を行った25例(男性3例,女性22例,平均56.1±16.5歳)を対象とした.味覚機能は電気味覚検査,濾紙ディスク法で評価した.鉄剤はクエン酸第一鉄ナトリウム(フェロミアR)を使用,血清亜鉛低下症例には亜鉛製剤内服療法を併用した.(結果)男女比は約1:7,年齢分布は40歳と70歳の2峰性のピークを認めた.初診時電気味覚検査では約70%に閾値上昇が認められ,濾紙ディスク法における4基本味別認知閾値の平均値では,酸味の閾値がやや上昇していた.鉄•亜鉛内服療法群の味覚改善率は鉄製剤内服群より,自覚症状,電気味覚検査,濾紙ディスク法で上回った.鉄剤内服療法開始までの罹病期間別の治療成績では,各期間に改善度の差は認められなかった.(考察)血清鉄欠乏に伴う味覚障害を認めた時,鉄剤内服療法もしくは鉄•亜鉛内服療法を積極的に行う必要があると思われた.
著者
坂口 明子 任 智美 岡 秀樹 前田 英美 根来 篤 梅本 匡則 阪上 雅史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.2, pp.77-82, 2013 (Released:2013-04-11)
参考文献数
14
被引用文献数
10 15

味覚障害は原因がさまざまであり, 各原因別での改善率や治療期間, 経過の報告は多くない. 今回, われわれは味覚障害患者1,059例を原因別に自覚症状の改善率, 治癒期間について検討した.1999年1月から2011年1月までの12年間に味覚外来を受診した味覚障害例1,059例 (男性412例, 女性647例, 平均年齢60.0歳) を対象とした.全例に問診, 味覚検査 (電気味覚検査, 濾紙ディスク法), 採血 (Zn, Fe, Cu), SDS (Self-rating Depression Scale, 自己評価式抑うつ性尺度) を施行し経過を追った. 治療は亜鉛製剤, 鉄剤, 漢方薬, 抗不安薬などの内服を症状, 程度に応じて行った. また, 自覚症状の程度をVAS (Visual Analogue Scale) により評価した.味覚障害の原因分類では特発性が最も多く192例 (18.2%) であった. 次いで心因性が186例 (17.6%), 薬剤性が179例 (16.9%) であった. 転帰が確定し得た680例で自覚症状の改善率は, 感冒後64/92例 (70.2%), 鉄欠乏性31/35例 (88.6%), 亜鉛欠乏性85/116例 (73.3%) と比較的良好であったが, 外傷性は2/12例 (16.7%), 医原性は13/33例 (39.4%), 心因性は46/100例 (46.0%) と低かった. 平均治癒期間は, 薬剤性で約10カ月間と鉄欠乏性や感冒後と比較すると, 約2倍長期間に渡った. また症状出現から受診までが6カ月以上の例に対し, 6カ月未満の例では改善率が良好で, 回復までの期間は前者が後者と比べると有意に長かった (p<0.05).
著者
任 智美 梅本 匡則 根来 篤 美内 慎也 阪上 雅史
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.293-300, 2007-06-10 (Released:2010-06-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1

頭部外傷は救命が優先されるため, 味覚嗅覚障害に関して配慮がなされないことが多い. また報告も少なく, 十分に解明されていない分野である. 今回, 当科を受診した外傷後味覚嗅覚障害6例について, 臨床像, 検査結果, 治療経過を検討した. 外傷後味覚嗅覚同時障害患者6例に嗅覚, 味覚検査, 採血, 性格検査, 頭部MRIを施行した. MRIでは4例に前頭葉, 2例に側頭葉に所見がみられた. 嗅覚味覚検査では検知と比較して認知の結果が悪い傾向にあり, 外傷による嗅覚味覚神経伝達系の直接損傷だけでなく, 中枢性も原因として考えられた. 今後, 外傷後味覚嗅覚障害の病態を解明するのにさらに多くの症例を検討する必要があると思われた.
著者
根来 篤 任 智美 梅本 匡則 阪上 雅史
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.35-40, 2006-04
被引用文献数
1

味覚障害の診断において、亜鉛欠乏が原因となっているものは少なくない。今回、亜鉛欠乏性味覚障害例と健常例の舌乳頭を観察・比較し、亜鉛と舌乳頭形態の相関を検討した。舌乳頭観察にはUSBマクロスコープとコンタクトエンドスコープを用いた。茸状乳頭の形態、末梢血管流入の様子を分類、検討した結果、健常例では舌乳頭形態が卵円形で粘膜も薄く、末梢血管流入も良好であったのに対し、亜鉛欠乏性味覚障害例では、舌乳頭形態の扁平化、末梢血管流入の途絶などを認めた。今回の検討のみで、亜鉛と舌乳頭形態の相関を結論付けることはできないが、動物実験の結果と同様に何らかの相関があると考えられた。