著者
根路銘 国昭
出版者
日経BP社
雑誌
日経メディカル (ISSN:03851699)
巻号頁・発行日
vol.39, no.12, pp.169-172, 2010-12

インフルエンザのあらゆるウイルス株を集め分析するウイルスハンターとして活躍。WHOのワクチン推奨株を決める会議で米国案に反対、最終的に日本のデータの重要性を認めさせたこともある反骨の研究者だ。こと研究にかかわるテーマなら、誰が相手でも論争をためらわない。根路銘の気質は、米国を見返したいという強い思いが育てた。
著者
五條堀 孝 根路銘 国昭 森山 英明 溝上 雅史 星野 洪郎 下遠野 邦忠 森山 悦子
出版者
国立遺伝学研究所
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1988

AIDS(後天性免疫不全症候群)ウイルスに対して、「総合的視野に立った有効な合成ワクチンの作成を目標とし、その研究開発のための方法論の確立を目指した試験的研究を行うこと」を目的として、相互に関連はしているものの分野的には非常に異なった4つの研究分野(「塩基配列デ-タの分子進化学的解析」、「ウイルス遺伝子の発現実験」、「X線による立体構造の解析」、「ワクチン効果試験」)の最先端技術をもつ研究者達が、有機結合的協力体制の下に研究サイクルを構築して、AIDSウイルスに対する合成ワクチン開発研究の方法論の確立を目指し、本研究は実施されてきた。1.五條堀・森山(悦)・林田は、HIVー1及びー2のenv領域アミノ酸配列デ-タより合成ワクチン開発の候補となるペプチド領域を同定し、さらにアミノ酸置換パタ-ンを推定した。2.溝上・折戸は、同定されたペプチド領域に対する合成ペプチドを作成し、これより抗血清の作成に成功した。3.星野は、HIV感染培養細胞での中和試験及びウイルス増殖抑制試験を行い、ウイルス増殖抑制に多少の有効性を確認した。また,日本人AIDS患者6名より単離されたHIVー1の塩基配列を決定し、海外で単離されたHIVー1との系統関係の解析を行った。4.下遠野・丹生谷は、env遺伝子の大腸菌プラスミドPUC19を用いた大量発現系の研究を行った。5.森山(英)は、1本の合成ペプチドの結晶解析を行った。以上,昨年度に引き続き各研究サイクルの研究が着実に行われ、それぞれ成果を上げることができた。最終的に有効な合成ワクチン開発には至らなかったが、このような研究サイクルの継続が、合成ワクチン開発への有効な手段であるとの感触を得ることができた。
著者
鈴木 康夫 岡 徹也 根路銘 国昭
出版者
静岡県立大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1989

本研究は、インフルエンザウイルスの受容体をイメ-ジした広域性インフルエンザワクチン開発の基礎の確立目的としている。本年度は本研究の最終年度であることを鑑み、当該研究をまとめ結論を引き出すことを考慮した。今年度は、昨年度に引き続以下の成果が得られた。(1)インフルエンザウイルスレセプタ-糖鎖を簡便かつ高感度で検索する新しい方法を開発した。(2)最も病原性が高く抗原変異による流行を続けているA型インフルエンザウイルスの全ての亜型(H1ーH13)のヘマグルチニン遺伝子の塩基配列、アミノ酸配列を決定することが出来た。また、同時に各ヘマグルチニン亜型が認識するレセプタ-糖鎖を明らかにした。これにより用いた全てのA型ウイルスヘマグルチニン亜型のレセプタ-シアロ糖鎖の認識は、ヘマグルチニンの変異とは関係なくNeuAcα2,3(6)Galβ1,4GlcNAcβ1,3Galβ1,4Glcβ1ー(ガングリオシドシアリルパラグロボシドが持つ糖鎖)をレセプタ-として最も強く認識することを初めて明らかにした(Virology,in press)。(3)上記共通のレセプタ-糖鎖に対するモノクロ-ナル抗体(NS24)の作成に成功した。天然および化学合成ガングリオシド誘導体を用いて調べた結果、本抗体は上記の糖鎖のみと反応し、極めて特異性の高い抗体であった(J.Biochem.,109,354ー360,1991)。(4)NS24によりインフルエンザウイルスの赤血球膜レセプタ-への吸着は効果目に阻害されることが解った。この結果からNS24はA型ウイルス共通のレセプタ-シアロ糖鎖を認識する抗体であることが判明した。(4)さらにNS24に対する抗イデイオタイプ抗体を産生するハイブリド-マの作成を試み、いくつかの抗ウイルス活性を持つクロ-ンを得ることに成功した。この結果はNS24が広域インフルエンザワクチンとして応用可能であることを示すものであり、ウイルス受容体をイメ-ジした広域性ワクチンの開発が可能であることを実証できたと考えられる。
著者
伊沢 久夫 根路銘 国昭 児玉 道 見上 彪 藤原 公策 久保 周一郎 KODAMA Michi
出版者
北海道大学
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1984

ボツリヌス中毒:動物のボツリヌス中毒の原因毒素であるボツリヌス菌【C_1】型およびD型毒素、その重鎖および軽鎖を精製して單クローン性抗体(以下MAb)を作出し、本邦で保存する菌株の全ての毒素と反応させ、毒素が4つのグループに別れることを明らかにした。マウス肝炎:1株のマウス肝炎ウイルスに対するMAbを作出し、1部MAbはウイルスポリマーと、残るMAbはウイルス核酸と特異性を示すこと、また両MAbは他のマウス肝炎ウイルス株とも反応することを見い出した。マレック病:本病による腫瘍に由来する株化細胞の表面抗原に対するMAbを作出した。MAbは野外発病鶏の腫瘍細胞とも野外飼育鶏の末梢血細胞とも大差なく反応し、陽性例にあっても腫瘍また末梢血細胞を問わず陽性細胞の出現率は低率であることが分った。豚コレラ(以下HC):ブタ白血病由来腫瘍細胞とHC免疫豚の系、また精製HCウイルス免疫マウス脾細胞とP3U1細胞の系では融合は不成功に終ったが、HC感染豚腎細胞免疫マウスの脾細胞を供試し抗体産生細胞を最近樹立した。インフルエンザとパラミクソウイルス感染症:インフルエンザウイルスのHAとNAに対するMAbを用い、本ウイルスの抗原変異と組換え体の起源を、またパラミクソウイルスのMAbを供試して本ウイルスのエピトームの安定性と抗原変異を明らかにした。ウシ白血病:作出した地方病性ウシ白血病腫瘍関連抗原のMAbは、野外発病牛の腫瘍細胞全例と反応し、本病の生前診断や予知に使用しうる可能性を示唆した。伝染性膵臓壊死症:作出した抗体産生細胞はいずれも継代不能あるいは微生物によるコンタミネーションのために維持しえず、研究は不成功に終った。