著者
桐村 豪文
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.90, no.1, pp.25-37, 2023 (Released:2023-06-20)
参考文献数
42

フィリップスは、エビデンスに基づく政策と実践の推進をめぐって対立する立場の全体像を、「硬い心」の立場と「軟らかい心」の立場を両極にもつ連続体として捉えている。本稿が着目するのは、その連続体の中間に位置する「より柔軟」な立場である。その立場は、昨今の科学哲学の知見を踏まえ、因果関係の概念をINUS条件として捉え、ローカルな文脈を重視するアプローチを展開する。しかしそのアプローチも不確実性の問題に直面し、価値判断の必要性に回帰する。
著者
桐村 豪文
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.127, pp.177-187, 2022-03-29

90年代以降、とりわけ21世紀を迎えてから EBP を推進する勢いが世界的に増している。EBP の推進をめぐっては、とりわけ教育の世界では賛成と反対の立場の隔たりは著しく、その中間点を求める議論が求められる。そこで本稿では、「連続体の真ん中」に位置するというポスト実証主義という立場に着目した。まず第1節では、ポスト実証主義の立場に立った議論が米国における公的な議論に登場するに至った経緯について述べた。そして第2節では、権勢をふるっていた実証主義がポスト実証主義にとって代わるに至った背景を踏まえた上で、新たな立場であるポスト実証主義の思想的特徴について論じた。
著者
桐村 豪文
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.175-185, 2020-03-31

本稿では、教育政策の正当性を裏付けるために求める「エビデンスに基づく教育(Evidence-Based Education:EBE)」の要求について、正義の観点からその正しさに疑義を呈した。 EBE の要求には、それに反対する声が相対する。しかし両者はしばしば対話すること自体が困難であり、政治闘争に近い状況である。そこで本稿では、両者間の通約可能性を探るべく、デリダの提起する来るべき民主主義=脱構築の概念に期待を寄せ、その探究を行った。探究の結果、① EBE の要求の根底には、科学的/非科学的(臨床的)、量的/質的、因果論的/非因果論的、普遍的/特殊的といった階層秩序的二項対立が伏在するということ、②カートライトとハーディによる議論は、それら階層秩序的二項対立を脱構築するものであり、③ゆえに、それら階層秩序的二項対立に依拠するEBE の要求は正しさを維持できないということが示された。
著者
桐村 豪文
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.101-113, 2012-04-27

It may be true that improving student outcomes is the ultimate purpose of all educational policymakers and educational researchers. Improving the effectiveness of the intervention, which involves an educational program, a product, a practice, or a policy aimed at improving student outcomes is a typical purpose to be accomplished. However, it should be noted that this study addressed the question "how and why can you say that intervention X caused the outcome Y?" or "what gives assurance that intervention X caused the outcome Y?" and not "did intervention X cause the outcome Y?" That is, the purpose of this study was not to discuss the effectiveness itself but pave the way for discussing the effectiveness. The target of this paper is the methodology used in the Comprehensive School Reform Quality Center report, which evaluated and rated the effectiveness of models used by the schools in the Comprehensive School Reform program. The characteristic of the methodology is a Randomized Controlled Trial (RCT), which is the "gold standard" for evidence-based policies in the USA. This paper demonstrates why the methodology is superior to the econometric methodology based on the theory of Cartwright.