著者
奥田 慶太郎 原 弘道 川本 浩徳 竹越 大輔 内海 裕文 和久井 大 皆川 俊介 沼田 尊功 荒屋 潤 桑野 和善
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学 (ISSN:02872137)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.595-601, 2021-11-25 (Released:2021-12-17)
参考文献数
15

背景.外因性リポイド肺炎は,脂質成分を含む物質の吸入で起こる肺炎で有効な治療法はない.Mycobacterium massiliense感染症はM. abscessus complexに属する稀な抗酸菌感染症である.両者の報告は近年増加しているが,合併の報告は少ない.症例.25歳女性.発熱,胸痛,呼吸困難を主訴に当院を受診した.胸部CTにて多発浸潤影を認め,同部位で回収した気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lavage fluid;BALF)のDiff-Quick染色では多数の脂肪貪食マクロファージを認めた.経気管支肺生検(transbronchial lung biopsy;TBLB)では多数の油滴,油滴周囲の形質細胞浸潤を認め,リポイド肺炎と診断した.病歴より食用サラダ油の誤嚥が原因の外因性と考えられた.また喀痰,BALFの抗酸菌塗抹,培養が繰り返し陽性となり,質量分析にてM. massilienseが同定されたことから,外因性リポイド肺炎にM. massiliense感染を合併したと考えられた.リポイド肺炎に対しては,気管支鏡下区域洗浄,短期ステロイド投与,M. massiliense感染に対しては多剤併用化学療法を行ったが,改善,増悪を繰り返し,明らかな改善までに約9か月を要した.結論.我々はリポイド肺炎にM. massiliense感染を合併した1例を経験した.リポイド肺炎に抗酸菌感染を合併すると抗酸菌治療がより困難となる可能性がある.
著者
福元 重太郎 猪島 一郎 藤田 昌樹 桑野 和善 中西 洋一
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR TUBERCULOSIS
雑誌
結核 (ISSN:00229776)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.571-575, 2005-08-15
被引用文献数
10

症例は74歳女性。平成15年3月から10月まで当院総合診療部にて非結核性抗酸菌症(以下NTM症と略す。分離菌は<I>Mycobacteriumintreceltulare</I>)の加療が行われた。平成16年5月より喀痰・咳嗽が増悪し,NTM症の再燃と診断され6月14日に呼吸器科入院となった。胸部CTではぴまん性粒状影の増加と右肺に空洞・気胸・胸水の出現を認めた。喀痰にてガフキー陽性(集菌法にて3+),PCR法にて<I>M.intracellulare</I>陽性,また,胸水ADAが147IU/Lと高値であった。胸水から<I>M.intracellulare</I>は検出されなかったが,喀痰や胸水の検査から他の感染症を示唆する結果が得られなかったのでNTM症に対する加療を開始した。気胸,胸水は治療に伴い消失したことより気胸と胸膜炎はNTM症に合併したものと考えた。NTM症に胸膜炎が合併するのは稀であり, さらに気胸が合併したという報告はきわめて稀であり貴重な症例と考えられた。