著者
大木 聖子 中谷内 一也 横山 広美 纐纈 一起 泊 次郎 桒原 央治
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

社会が災害科学に期待することは自然災害の防止や軽減であり,それには災害を予測する必要があるが,予測が困難な場合が多いため,災害科学の社会貢献は不定性が高くなる.それを念頭に置かずに「踏み越え」が行われると科学者が刑事責任まで問われることがあり,イタリアのラクイラ地震裁判はその最近の例である.我々は,資料収集や聞き取り調査,判決理由書の分析等を行い,そこでの災害科学の不定性と科学者の責任を検討した.その結果,裁判の対象となったラクイラ地震の人的被害は,災害科学の不定性を踏まえない市民保護庁副長官の安易な「安全宣言」が主な原因という結論を得た.また,これのみを報じた報道機関にも重大な責任がある.