著者
河野 修三 下田 忠和 飯野 年男 二階堂 孝 梅田 耕明 桜井 健司
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.72-76, 1995 (Released:2011-06-08)
参考文献数
18
被引用文献数
2 3

症例は68歳の女性. 平成5年7月に左鼠径部の有痛性腫瘤を主訴に来院し, 大網のヘルニア嵌頓の診断にて手術を施行した. ヘルニア嚢には3×2cmの腫瘤を認め, 同部を切除した. 病理検査の結果が転移性腺癌であったため, 生殖器および消化器の精査を行い諸検査で異常所見を認めなかったため, 腹腔鏡検査に引き続き, 開腹手術を施行した. 大網には多発性散在性に瘢痕様病巣が存在したので大網網嚢切除を施行した. 大網およびヘルニア嚢腫瘤の病理組織学的検査から腹膜原発漿液性乳頭腺癌と診断した. ヘルニア嚢に悪性腫瘍を発見することはまれなことである. 腹膜原発の漿液性乳頭腺癌は比較的まれな疾患であるが, 腹水貯留による腹部膨満感や腹部腫瘤触知により診断されることが通常である. ヘルニア嚢の腫瘤より同疾患が診断された報告はほかになく, 非常に興味深い症例と考えた.
著者
中川 辰郎 下田 忠和 大野 直人 桜井 健司
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.53, no.12, pp.2976-2980, 1992-12-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
17

胃癌の疑いで手術し組織学的に胃のサルコイドーシス合併と診断した症例と胃の所属リンパ節および胃壁内にサルコイド結節を伴ったpm胃癌の症例を経験したので報告する.症例1は68歳男性.主訴は食欲不振.透視で胃体中下部の大小彎に壁の硬化像を認め,胃内視鏡で同部にびらん,不正潰瘍を認めたが,生検では陰性であった.胃びまん性癌および胃悪性リンパ腫を否定できず胃全摘を施行した.組織学的には,胃全体の粘膜から固有筋層にラングハンス型巨細胞を伴う類上皮肉芽腫と所属リンパ節にもサルコイド結節を認め,胃サルコイドーシスと診断した.症例2, 52歳男性.心窩部痛の精査目的で入院.透視,胃内視鏡で胃体下部前壁にIIc病変を同定した.組織学的には印環細胞癌で深達度はpmであった.癌病巣とは別に幽門部の粘膜内に微小類上皮肉芽腫を認めた.サルコイドーシスは全身性疾患として注目されてきたが,消化管,とくに胃のサルコイドーシスについての報告は少なく,その臨床的意義について検討した.
著者
高橋 日出雄 穴沢 貞夫 東郷 実元 石田 秀世 片山 隆市 桜井 健司 石原 歳久
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.2741-2745, 1987-12-01
被引用文献数
13

消化管原発悪性リンパ腫24例を臨床病理学的に検討し,予後因子についても分析した.平均年齢は43.8歳で,男性に3倍多かった.回盲部が全体の60%を占めた.腸重積17%穿孔11%で急性腹症で来院する症例が多く目立った.Naqviの進行度分類では,I度1例,II度8例,III度10例,IV度5例と進行した症例が多かった.累積生存率による予後は術後5年生存率がわずか7%であった.非治癒切除例は2年以内にすべて死亡しているのに対し,治癒切除例の5生率は32%であった.予後の向上には早期症例の発見に努め,根治的広範囲切除が重要と考えられた.消化管の発生部位,進行度分類,治癒・非治癒切除などの因子が重要であった.