著者
桑原 大輔 梅原 拓也 岡田 泰河 木藤 伸宏
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.186-194, 2023-10-20 (Released:2023-10-20)
参考文献数
40

【目的】これまでに,高齢心不全患者の運動耐容能と下肢筋力の改善に適した運動療法について知見は乏しい。本研究の目的は,高齢心不全患者に対する運動療法が運動耐容能と下肢筋力の改善に有効か検証することとした。【方法】本研究のデザインは,システマティックレビューとメタアナリシスとした。2023年1月以前の臨床論文から,5つの電子データベースより,運動耐容能と下肢筋力に対する運動療法の効果を検証したランダム化比較試験を検索した。【結果】8編が対象となった。統合の結果,有意な効果を示したのは,最高酸素摂取量と6分間歩行距離および筋持久力であった。有意な効果を示した論文では,慢性期の心不全患者に中強度以上の有酸素運動とレジスタンストレーニングまたはバランス運動による複数の運動療法を実施していた。【結論】高齢心不全患者の運動耐容能の改善には,複数の運動療法を組み合わせることが有効である可能性が示唆された。
著者
桑原 大輔 梅原 拓也 中村 早也香 木藤 伸宏
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-9, 2022-09-30 (Released:2022-10-01)

[目的] 本研究の目的は、健常者の片脚立位における姿勢制御機能の良好と不良で、等尺性股関節外転筋力および股関節周囲筋の筋厚と筋輝度に違いがあるか明らかにすることとした。[方法] 男性健常者13名26肢とし、片脚立位における姿勢制御機能を良好と不良の2群に分けた。アウトカムは、等尺性股関節外転筋力、筋厚と筋輝度とした。得られたデータを用いて、2群の差の比較と実質的効果量を算出した。[結果] 等尺性股関節外転筋力および股関節周囲筋の筋厚や筋輝度は、2群間で有意差も中等度以上の実質的効果量も認めなかった(P<0.05)。 [結論] 本研究で扱った対象者および片脚立位の姿勢制御機能評価指標では、等尺性股関節外転筋力や筋厚・筋輝度は、大きく関与しない可能性が示された。
著者
富山 大輔 梅原 拓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.15-23, 2020 (Released:2020-07-16)
参考文献数
22

本研究の目的は,訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)利用者の日常生活活動(Activities of daily living:以下,ADL)変化に影響する因子を明らかにすることである。対象は,2017年12月から2018年6月の間に訪問リハを6か月間利用した者とし,疾患による除外基準は設定しなかった。調査時期は,調査開始時と6か月後とし,基本情報,握力,Bedside Mobility Scale(以下,BMS),Functional Independence Measure(以下,FIM)を調査した。握力,BMS,FIMについては変化量(6か月後-調査開始時)を算出し,FIM変化量に影響する因子を検討した。対象者は35名であった(平均年齢77.4±10.4歳,女性21名)。重回帰分析(ステップワイズ法)の結果,発症からの期間,握力変化量,BMS変化量が影響因子として抽出された。標準偏回帰係数は,発症からの期間で-0.331,握力変化量で0.353,BMS変化量で0.320であった。自由度調整済み決定係数は0.392であった。訪問リハ利用6か月後のADL向上には,発症後早期からの介入,握力の改善,ベッド周囲動作能力の改善が重要であることが示唆された。
著者
梅原 拓也 梯 正之 田中 亮 恒松 美輪子 村中 くるみ 井上 純子 村上 恒二
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-10, 2016 (Released:2017-02-20)
参考文献数
32

【目的】本研究は,脳卒中患者のADL 回復の対策として,PT,OT およびST の介入量の増加が有効であるかどうかを検討することである。【方法】入院時FIM 運動項目により患者を低群,中群,高群に分類した。各群のFIM 利得に影響する因子の検討のために,ロジスティック回帰分析を行い,抽出された因子ごとにカットオフ値や診断性能を算出した。【結果】対象者と抽出因子数は,低群297 名・5 因子,中群190 名・2 因子,高群170 名・3 因子であった。3 群に共通の因子は,PT とOT の総単位数であった。各群におけるこのカットオフ値・陽性尤度比・陰性尤度比・事後確率は,低群で747 単位以上・2.26・0.63・71.0% であり,中群で495 単位以上・1.5・0.67・62.0% であり,高群で277 単位以上・1.86・0.45・65.0% であった。【結論】重症の者ほど回復は予測しやすいが,より多くの因子でなければ精度の高い予測は難しい。
著者
梅原 拓也 田中 亮 永尾 進 富山 大輔 川畑 祐貴
出版者
公益社団法人 広島県理学療法士会
雑誌
理学療法の臨床と研究 (ISSN:1880070X)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.7-12, 2014-03-31 (Released:2015-03-13)
参考文献数
27
被引用文献数
1

「目的」本システマティックレビューおよびメタアナリシスの目的は,変形性膝関節症(膝OA)に罹患して人工膝関節置換術(TKA)を受けた患者に対する術前および術後の運動介入が在院日数に及ぼす影響について検討することである。「方法」4つの電子データベースを使用して,運動介入が在院日数に及ぼす影響を調べたランダム化比較試験(RCT)を収集した。実験群とコントロール群を比べた在院日数の差のデータを統合した。エビデンスレベルは,GRADEシステムを用いて評価した。「結果」8編のRCTが特定され, 6編は我々のメタアナリスにて統合可能なデータを報告していた。 3編の論文のデータを統合した結果, 術前の運動介入が在院日数に及ぼす有意な影響は示されなかった。一方, 残り3編の論文の統合データは, 術後の運動介入,特に早期運動介入が在院日数に及ぼす有意な影響を示した。エビデンスレベルは,術前の運動介入および術後の早期運動介入それぞれ「中」以下と判断された。「結論」我々は,TKA後の早期運動介入によって膝OA患者の在院日数は短縮できるというエビデンスを明らかにした。