著者
中村 譲治 森下 真行 堀口 逸子 中川 淳
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.87-94, 2004-04-30
被引用文献数
7

広島県豊田郡安浦町において,MIDORIモデルに従って歯周病予防を目指した成人歯科保健事業に取り組んだ.事業の企画に先立って実施した質問紙調査の結果,歯周病の自覚症状をもつ人の割合が,年齢とともに増加していることが明らかになった.そこで,このようなQOLの問題を解決するために必要な保健事業を企画するため,住民も加えた「考える会」を立ち上げた.考える会において健康教育プログラムを作成していく過程では,住民も参加してグループワークを行い,プログラムや保健行動の優先順位を決定し,評価の指標や目標値を決めていった.その結果,30代女性において,「歯間清掃用具を使用している人の割合を増やす」,「年1回以上定期健診を受けている人の割合を増やす」の2つの最優先プログラムと目標値(それぞれ30%および50%)が決められた.「歯間清掃用具の使用」については「ひよこ歯科健診」を充実させることと,町内の保育所や幼稚園の保護者会を利用することの2種類の健康教育プログラムを策定した.健康教育の内容は,教育・組織診断によって得られた準備・強化・実現因子を考慮し,グループワークのなかで決定した.このように,MIDORIモデルを応用することで解決すべき要因が抽出・整理され,安浦町のニーズと現状にあった成人の歯周病予防のための事業計画を策定することができた.
著者
木林 美由紀 大橋 健治 森下 真行 奥田 豊子
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.550-557, 2004-10-30
被引用文献数
10

幼稚園・保育園に通う幼児141名(6.1±0-3歳)を対象に,チューインガム法と感圧紙法(デンタルプレスケール^[○!R])を用いて咀嚼力を評価した.さらに,保護者と担任教諭および担任保育士を対象に幼児の日常の食行動および生活行動について質問紙調査を行い,咀嚼能力との関連性について検討し,以下の結果を得た.1.単位時間当たりの溶出糖量と咬合力には,性差は認められなかった.溶出糖量は,身長との間には正の相関関係が認められた.2.対象児の摂食時における咀嚼状態の評価は,施設内の担任者と保護者との評価に異なる傾向が認められた.3.保護者による評価で,偏食の少ない対象児は,偏食が多い対象児より溶出糖量が有意に高く,溶出糖量と対象児の偏食の程度は有意な関連性が認められた.4.保護者が食事を作るとき,意識して堅い物をメニューに加えている家庭の対象児は,デンタルプレスケール^[○!R]による咬合力が有意に高かった.5.担任教諭・担任保育士による評価において「友人ととてもよく遊ぶ」と評価された対象児は,ほかの対象児よりも溶出糖量が有意に高く,溶出糖量と「友人と遊ぶ」項目に有意な関連性が認められた.以上の結果から,幼児の咀嚼能力は,幼児の食行動や生活行動と関連しており,幼児と保護者に対する食教育の重要性が示唆された.
著者
宮城 昌治 藤岡 道治 山崎 俊二 福永 真佐美 笹原 妃佐子 河端 邦夫 長尾 誠 河村 誠 森下 真行 岩本 義史
出版者
広島大学歯学会
雑誌
広島大学歯学雑誌 (ISSN:00467472)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.24-30, 1993-05-06
被引用文献数
7

本論文の要旨は平成4年6月の日本口腔衛学会近畿・中国・四国地方会総会において発表した。本研究は一部平成3年度文部省科学研究費(一般研究(C)No.01571122)によった。
著者
森下 真行 宮城 昌治 河端 邦夫 石井 みどり
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.780-785, 1999-11-30
被引用文献数
5

平成7年度広島県歯科保健実態調査事業報告書のデータをもとに,広島県におけるう蝕,歯周疾患治療および欠損補綴治療ニーズを算出した。選挙人名簿登録者から無作為に5,017名を抽出して調査対象とした。対象者のうち1,544人が受診し,受診率は31.2%であった。う蝕治療のニーズ量は,未処置歯数に要再修復歯数を加えたものとした。歯周疾患治療のニーズ量はCPITN最大コード別割合に,年齢階級別人口を乗じたものとした。補綴処置を必要とする欠損部位を有するにもかかわらず,処置を受けていない者の人数を欠損補綴ニーズ量とした。全体のう蝕治療ニーズ量は約468万本で,人口構成の割合が高かった40歳台が最も多かった。ニーズ量を歯科医師一人あたりに換算すると2,463歯,一診療所あたりでは3,631歯であった。歯周疾患治療のニーズ量は全体で約180万人であり,男性では40歳台でコード3,女性では50歳台でコード3の人数が最も多かった。欠損補綴治療を必要としている人は約36万人で,20歳以上の全人口に占める割合は16.5%であった。歯周疾患治療ニーズ量はCPITN最大値コードを用いて推計したので,過小評価されている。したがって,歯周疾患治療に要する時間は,う蝕治療と同等かそれ以上である可能性が考えられた。今後さらにこのような実態調査を継続し,歯科治療ニーズ量の推計を行うことが重要と考えられた。
著者
山村 辰二 森下 真行 辻村紀代子 福永 真佐美 岩本 義史
出版者
広島大学歯学会
雑誌
広島大学歯学雑誌 (ISSN:00467472)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.415-418, 1993-12-01

本論文の要旨は平成4年5月の第35回春季歯周病学会,平成4年6月の第25回広島大学歯学会総会において発表した。また本研究は,一部文部省科学研究費(一般研究C No.03807137)によった。
著者
三藤 聡 宗永 泰一 三谷 信行 岡田 政久 森下 真行
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.34-41, 2004-01-30

尾道市において,個々の幼児の状況に応じた効果的な歯科保健指導を行うため1歳6ヵ月見健診と3歳児健診の情報を結びつけたシステムの構築を行った.データ入力に光学的な読みとり装置を採用することにより,アンケートおよび歯科健診結果の入力が容易に行われるようにした.また,アンケートおよび歯科健診結果を入力することによって,経年的なデータの蓄積と迅速な歯科保健指導票の出力が同時に可能となるような新しいコンピュータソフトを関発した.歯科保健指導票は1歳6ヵ月見健診時のアンケート結果を入力することにより,個々の改善すべき生活習慣を出力するものとした.このシステムによって1歳6ヵ月見健診時に歯科保健指導を実施したところ,限られた時間内に個々の状況に応じた指導が可能であった.このシステムでは,歯科保健指導票を出力するためのデータの入力が,同時に次の年度の1歳6ヵ月見健診時のアンケート結果と3歳児健診時の歯科健診結果の関係を調査するためのデータの集積ともなっているため,経年的なう蝕に影響する要因の変化への対応が可能である.また,尾道市に限らずどの地域においても利用可能であると考えられた