著者
中川 淳司 福永 有夏 ORTINO Federico LENG Lim Chin LALLAS Peter FELICIANO Florentino MAGRAW Daniel PLAGAKIS Sofia
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、近年利用件数が急増しているWTO(世界貿易機関)の紛争解決手続および投資紛争の仲裁による解決手続における透明性の確保をめぐる理論的問題点を整理するとともに、実務上の課題となっている透明性確保・向上のための諸方策の導入可能性について、内外の国際経済法研究者・市民団体の代表者が共同で検討し、これらの紛争解決手続における透明性の確保に関する将来の方向性を明らかにすることを目指すものである。平成20年度と平成21年度には、2度の国際研究集会(Society of International Economic Law設立大会(平成20年7月、ジュネーブ大学)、アジア国際法学会第2回研究大会(平成21年8月、東京大学))において「国際貿易紛争・国際投資紛争の解決における透明性」をテーマとするパネル・セッションを開催し、本研究のメンバー全員が各々の担当する研究テーマについて報告を行った。平成22年度は前年度および前々年度の研究成果を踏まえ、メンバー間でさらに意見交換を行ったうえで各メンバーが研究の最終成果を英文の論文として取りまとめる作業を行った。本報告書執筆時点でFlorentino Feliciano氏を除くすべてのメンバーおよびDaniel Magraw氏が主催する国際環境法センター(ワシントンDC)の研究員であるSofia Pragakis 氏から論文の原稿が提出されている。Feliciano氏の原稿提出を待って研究代表者とDaniel Magraw氏が共著でIntroductionを執筆し、Transparency in International Trade and Investment Dispute Settlementという表題の英文の編著として刊行する予定であり、現在ケンブリッジ大学出版会との間で刊行に関する交渉を進めている。研究成果の詳細は上記近著に盛り込まれたとおりであるが、以下で簡単にその概要を述べる。(1)WTO紛争解決手続および投資紛争仲裁手続における透明性とは、(i)紛争解決手続の公開、(ii)紛争解決に関連する文書(当事者の提出書面および解決結果(WTO小委員会報告及び上級委員会報告、投資紛争仲裁判断)の公開、の2点によって判断される。(2) これらの紛争解決手続における透明性は、国内裁判所や他の国際裁判(例えば国際司法裁判所)に比べると低いが、いわゆる国際商事仲裁よりは高い。この点は、(i)紛争の当事者の性格(前者はWTO加盟国同士、後者は投資受入国政府と外国投資家)、(ii)扱われる争点の性質(ともに貿易・投資に関する国家の規制の合法性が争われる一方、紛争の真の争点は私企業の利害に直接関連する事項であること)、(iii)紛争の最終解決に至る過程で紛争当事者の妥協による法廷外解決の可能性が排除されていないこと、などの特性にその根拠が求められる。(3)他方で、いずれの紛争においても国家の規制の合法性が争われ、その結果は当該国の経済社会生活に大きな影響を及ぼすことから、紛争当事国国民や市民団体の紛争に対する関心が高く、この点からこれらの紛争解決手続きの透明性を一層高めるよう求める要求が出てくる。(4)(2)で挙げた諸特性と(3)で指摘した要求を勘案し、両者の均衡点を求めることが必要であり、WTO紛争解決手続、投資紛争仲裁の各々について、扱われる争点の性質や当事者の特性の考慮(特に、投資紛争仲裁における外国投資家の営業秘密保持への配慮)を行いながら、透明性の一層の向上策を提案する。ただし、研究メンバーの中には、WTO紛争解決手続について、争点によってはむしろ輸入国の国内裁判所による解決(そこでは高度の透明性が保証されている)を優先させるべきであり、WTO紛争解決手続の透明性を高めることには消極的な見解を述べた者もいる。
著者
中川 淳一郎
出版者
大阪大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

我々はクラッシュ症候群の多臓器不全にいたるメカニズムに活性酸素種が強く関与していると考え、活性酸素種を制御するために抗酸化物質ETS-GSを用いて本研究を行った。その結果、抗酸化物質を経静脈的に投与することにより活性酸素種や炎症性サイトカインの産生が抑制され、引き続き生じる遠隔臓器障害が軽減し、生存率改善効果が得られた。活性酸素種はクラッシュ症候群において病態進行を誘導する一因であることが示唆された。
著者
山田 ルミ 稲垣 美智子 北出 優華子 古屋 圭介 津田 真一 伊藤 弘樹 西澤 誠 中川 淳 中野 茂 古家 大祐
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.392-397, 2012 (Released:2012-07-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2

【目的】糖尿病足壊疽などの重症足病変を予防するためには,壊疽の前駆所見のひとつである皮膚病変(乾燥や亀裂などの軽微な異常)への対策が重要である.そこで,保湿剤を自己塗布させる手法を用いたフットケア教育が患者の足に対する認識(意欲・関心)と行動を改善させることができるかどうかを検証することを目的とした. 【方法】糖尿病神経障害を有する糖尿病患者を対象に清潔ケアに加え保湿剤を自己塗布する実験群と清潔ケアのみを指導する対照群に群分けした.認識と行動は,質問紙による面接を行ない,介入前と比較し3か月後に改善がみられた患者を「向上」と判定し両群を比較した. 【結果】両群の性別,年齢,糖尿病罹病期間に有意差はなかった.行動は実験群で有意に改善し(p<0.01),意欲は向上傾向を示した.しかし,関心には有意差はなかった. 【考察】本研究において,保湿剤を用いた教育は糖尿病患者のフットケア行動を向上させたことが示された.この結果は,保湿教育が軽微な皮膚病変を有する時期における糖尿病患者のフットケアに役立つことを示唆している.
著者
中川 淳
出版者
同志社大学
雑誌
同志社法學 (ISSN:03877612)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.113-146, 1998-03-31

論説
著者
中川 淳一郎 藤井 智
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.46, pp.B-30_1-B-30_1, 2019

<p>【はじめに】</p><p>昨秋から臨床場面で提供されたトヨタ自動車のウェルウォーク(以下WW)は、長下肢装具型で膝関節を屈伸できる歩行練習ロボットである。主たる対象は脳卒中亜急性期片麻痺者だが、生活期を担う当センターでも歩容改善に向け活用を開始した。今回、脳卒中発症から9か月経過した短下肢装具歩行の一症例にWWを使用し、歩行能力が向上したので報告する。</p><p>【方法】</p><p>対象は、脳梗塞により左片麻痺、注意障害を呈した40歳代男性である。回復期病院を経て、232病日に当センターに入院した。下肢ブルンストロームステージはⅢで、末梢の筋緊張亢進が著明だった。歩行はT字杖と両側金属支柱付き短下肢装具を用いて3動作で見守りであった。歩容は非麻痺側への重心偏移と杖への荷重が著明で、かつ、麻痺側下肢の振り出しは骨盤の前後傾で行っていた。約1.5か月で病棟歩行は自立となったが、荷重方法の指示でかえって考え込む様子があり、歩行速度や歩行パターンに著変はなかった。そこで、278病日よりWWを開始し、1日40分(週5回)のPTのうちの20分、40日間で20回使用した。</p><p>結果はWWに記録されている実施情報、および期間の前後で測定した10 m歩行速度、6分間歩行距離などを用いた。</p><p>【結果】</p><p>WWの経過として、開始時は遊脚開始の荷重設定(以下、抜重値)を35%、遊脚期の振り出しアシストを3、立脚期の膝伸展のアシストを3、速度を0.9km/hに設定し、手すりを把持しながら、体幹前傾が軽減するよう徒手介助した。徐々に1.7km/hまで速度を上げると、荷重応答期(以下LR)で体幹前傾や膝関節の急速な伸展が見られたため、膝伸展アシストを4と増加し、遊脚開始のタイミングが合うよう抜重値を50%にしてPTは体幹の介助を行った。開始6回目には、非麻痺側立脚期に手すりを離せるようになり、さらにPTが麻痺側への体幹誘導をできるようになった。開始11回目には、徒手の誘導が少なくなり、フリーハンドでの歩行も取り入れることができた。同様の方法で20回目まで継続した。</p><p>WWを使用した結果、歩行パターンは2動作となり、10m歩行は、最速が22.8秒(23歩)から15.2秒(21歩)、6分間歩行距離は120.5mから197.8mとなった。</p><p>【考察】</p><p>本症例では、WWを使用することで、歩行中にロボットで下肢の振り出しの不足やLRでの不安定性をコントロールできた。さらに、手すりを離しながらPTが体幹を誘導することで、積極的に下肢への荷重を促進させることができ、2動作歩行の獲得につながったと考える。また、注意障害を考慮し、ロボットで歩行を担保することで、注意課題を限定して指導できたことも奏功したと考える。生活期の脳卒中片麻痺者であっても、歩容改善につながる一助にWWを活用できるのではないかと考え、症例経験を積み上げていきたい。</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>本報告にあたり、本人に口頭および文書にて説明し、同意を得た。</p>
著者
中川 淳
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.177-178, 1994
著者
中川 淳一郎 李 兆亮 布施 貴司 室谷 卓 伏見 知浩 渡部 貴士 野村 文彦 田原 憲一 呉 教東 山吉 滋 小玉 尚宏 阿部 孝
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.613-616, 2008-05-31 (Released:2008-07-01)
参考文献数
22

小児の異物誤飲は日常的に遭遇する疾患であるが,通常多くの異物は自然排泄される。今回,大量誤飲されたおもちゃの磁石が消化管内でループを形成し,滞留した症例を経験したので報告する。患者は11歳,男児。既往歴:自閉症。10日くらい前から嘔吐,上腹部痛が出現し,近医で内服加療を受けていたが,症状が持続するため当院に紹介となった。来院時の腹部単純X線写真で,上腹部に多数の金属棒を認めループを形成していた。X線写真所見と異物誤飲の既往歴より,異物はおもちゃの磁石と考えられた。内視鏡下に胃に穿通した8本の磁石を除去した。小腸内に残存した6本の磁石は腹部X線写真で経過観察し,自宅退院後の第21病日自然排泄を確認した。複数個の磁石誤飲では,消化管の穿通・穿孔などをきたす危険な異物となりうるため,可能な限り内視鏡的摘出を試み,できない場合には厳重な経過観察を行うべきと考えられる。
著者
最上 敏樹 吾郷 眞一 山形 英郎 酒井 啓亘 桐山 孝信 中川 淳司 中谷 和弘 児矢野 マリ 兼原 敦子 坂元 茂樹
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

3年+1年にわたって研究会の開催や協議を通じ、この意欲的な分野の先鞭をつけてきた。とりわけ立憲主義の問題は、わが国ではこの共同研究がきっかけになって活性化したと言っても過言ではなく、わが国学界に最先端の論題を導入し、国際水準の議論ができる基盤を作ったと自負している。それと旧来の機能主義の理論枠組みをどう接合するかについても大きな展望が開けた。
著者
中村 譲治 森下 真行 堀口 逸子 中川 淳
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.87-94, 2004-04-30
被引用文献数
7

広島県豊田郡安浦町において,MIDORIモデルに従って歯周病予防を目指した成人歯科保健事業に取り組んだ.事業の企画に先立って実施した質問紙調査の結果,歯周病の自覚症状をもつ人の割合が,年齢とともに増加していることが明らかになった.そこで,このようなQOLの問題を解決するために必要な保健事業を企画するため,住民も加えた「考える会」を立ち上げた.考える会において健康教育プログラムを作成していく過程では,住民も参加してグループワークを行い,プログラムや保健行動の優先順位を決定し,評価の指標や目標値を決めていった.その結果,30代女性において,「歯間清掃用具を使用している人の割合を増やす」,「年1回以上定期健診を受けている人の割合を増やす」の2つの最優先プログラムと目標値(それぞれ30%および50%)が決められた.「歯間清掃用具の使用」については「ひよこ歯科健診」を充実させることと,町内の保育所や幼稚園の保護者会を利用することの2種類の健康教育プログラムを策定した.健康教育の内容は,教育・組織診断によって得られた準備・強化・実現因子を考慮し,グループワークのなかで決定した.このように,MIDORIモデルを応用することで解決すべき要因が抽出・整理され,安浦町のニーズと現状にあった成人の歯周病予防のための事業計画を策定することができた.
著者
中川 淳子 川田 尚鋪
出版者
山陽学園大学
雑誌
山陽学園短期大学紀要 (ISSN:13410644)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.91-95, 2002

本学の一般学生(食物栄養学科2年次生)と運動部(バレーボール部)所属学生について身体状況調査、身体機能調査、生活時間調査を行い以下の結果を得た。1)身体状況調査では運動部所属学生の身長が一般学生のそれより有意に高かったが体重、BMIについては有意の差は無かった。また、一般学生の身体は全国の平均値と同じであった。2)身体機能調査では筋力では握力には有意差は認められなかったが、背筋力では運動部所属学生の方が有意に高かった。そして、身体の柔軟度を示す体前屈では運動部所属学生の方が柔軟性が高かった。また、運動部所属の学生は一般学生に比べ安静時脈拍が低値を示し、運動負荷による脈拍充進からの回復が速やかであることがわかった。全身の持久性能力のよい指標となる最大酸素摂取量については運動部所属学生の方が一般学生より格段に良好な高値を示した。3)5日間の生活時間調査によって得られた生活活動指数では運動部所属学生の方が一般学生より高く、活発に活動しており、その分睡眠時間は運動部学生の方が長くなっている。このようなメリハリのある生活内容が最大酸素摂取量の良好な数値、すなわち全身持久力の高い身体を形成するのに寄与しているものと考えられる。4)これらのことから、生活習慣病の予防だけでなく健康の保持・増進のためにも日々の生活に運動を取り入れ、それを習慣化するよう心がけることの大切さが強く示唆された。