著者
生藤 大典 森勢 将雅 西浦 敬信
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.3, pp.588-596, 2012-03-01

近年,鋭い指向性を有するスピーカとして,パラメトリックスピーカが注目されている.パラメトリックスピーカは直進性を有する超音波をキャリヤ波として利用し,再生すべき音響信号で振幅変調した振幅変調波を放射することで鋭い指向性を実現する.放射された振幅変調波は,空気の非線形性によりひずむことで元の音響信号に復調する.しかし,低域の再生が困難であり,倍音成分の発生により再生音がひずむという音質劣化の問題がある.パラメトリックスピーカの音質は,振幅変調波を生成する変調方式に依存する.従来の変調方式は,振幅変調波における側波帯の利用方法が異なり,主に両側波帯(Double SideBand)を利用する方式と,単側波帯(Single SideBand)を利用する方式が提案されている.本論文では,従来の変調方式の利点を併せ持つ変調方式を検討し,パラメトリックスピーカの音質向上を目指す.具体的には,両側波帯の周波数ごとの重みを制御することで,低域強調及び倍音成分の低減を実現する変調方式を提案する.評価実験より,提案する変調方式による低域強調及び倍音成分の低減,またそれに伴う音質向上を確認した.
著者
辰巳 直也 森勢 将雅 片寄 晴弘
雑誌
研究報告エンタテインメントコンピューティング(EC)
巻号頁・発行日
vol.2010-EC-15, no.17, pp.1-6, 2010-03-05

Vocaloid 「初音ミク」 の発売以来,歌唱合成に対する注目が高まりつつある.Vocaloid では,メロディーと歌詞を入力することにより歌声を生成できる.また,表情パラメタを調整することにより様々な表情を付与することができる.しかし,より人間らしい歌声にするには,表情パラメタの調整を細かく設定することが必要なため,非常に煩雑で時間がかかる.本研究では,あらかじめ,特定の歌唱者 (GACKT) の歌い方にみられるビブラートやポルタメントといった音量,音高等の特徴を表情パラメタとして抽出しておき,それらを Vocaloid の出力に付加することで,より,当該の歌唱者らしい歌い方を実現するような GACKT レゾネータの開発を目指す.
著者
吉田 有里 森勢 将雅 高橋 徹 河原 英紀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SP, 音声 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.282, pp.31-36, 2007-10-18
被引用文献数
3

数分にわたる曲全体を一括して分析することのできる新しく開発されたTANDEM-STRAIGHTを用い、プロ歌手によるポップス系歌唱を分析して得られた歌唱音声中の母音スペクトルの統計的性質を調べた。分析には、男女各一名による歌唱音声が用いられた。STRAIGHTスペクトルから求められたMel帯域フィルタ出力とMFCCの主成分分析の結果は、いずれも第5主成分までに全分散の90%以上が含まれることを示した。また、求められた固有ベクトルとMFCCの基底関数の張る空間が類似する傾向が認められた。歌唱音声は、話声と比較して、基本周波数、発声のパワー、歌唱法などによるスペクトル変動が大きく、各母音の分布は元のパラメタ空間においても、低次の主成分で張られる空間においても、大きく重なっている。これらの結果が、母音情報に基づく音声変換法においてどのような意味を持っかについて議論する。