著者
森川 友義
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.2_217-2_236, 2008 (Released:2012-12-28)
参考文献数
43

In recent years, so-called “Evolutionary Political Science” has drawn much attention from political scientists in the United States as well as in Europe. Little is known, however, about the overall framework of the approach, as it has been variously termed as “biopolitics”, “neuro-politics,” “evolutionary approach to political behavior” or “sociogenomics.” Scholars in this field share and emphasize human cognitive processes that have derived from an evolutionary perspective on human cognitive functioning and architecture. In light of the above, recent analyses on: (1) altruistic decision-making, (2) genetic influence on political behaviors, and (3) an “ultimate” approach to warfare are discussed in detail. In the process, I refer to important aspects of proximate vs. ultimate mechanism, nature vs. nurture, and general problem solver vs. “modular” architecture of the human brain -- arguments which are all closely connected with information processing mechanisms in the study of political science.
著者
森川 友義
出版者
日本政治学会
雑誌
日本政治學會年報政治學 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.2_217-2_236, 2008

  In recent years, so-called “Evolutionary Political Science” has drawn much attention from political scientists in the United States as well as in Europe. Little is known, however, about the overall framework of the approach, as it has been variously termed as “biopolitics”, “neuro-politics,” “evolutionary approach to political behavior” or “sociogenomics.” Scholars in this field share and emphasize human cognitive processes that have derived from an evolutionary perspective on human cognitive functioning and architecture. In light of the above, recent analyses on: (1) altruistic decision-making, (2) genetic influence on political behaviors, and (3) an “ultimate” approach to warfare are discussed in detail. In the process, I refer to important aspects of proximate vs. ultimate mechanism, nature vs. nurture, and general problem solver vs. “modular” architecture of the human brain -- arguments which are all closely connected with information processing mechanisms in the study of political science.
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

集団間あるいは国家間における、紛争・テロリズム(特に自爆テロ)といった生命の危険を有する状況で、『マキャベリ的知能』に基づく意思決定がどのように行われるかについて仮説を提供し、データを用いて検証を実施した。
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

公共選択理論やゲーム理論に基づいて政治に関する仮説をたてる場合、人間は経済的利益を追求する利己的な動物との前提条件を付するのが一般的である。しかし、複数の人間の自己利益と公共利益が並存するような「社会的ジレンマ」等の研究で分かってきたことは、人間は必ずしも自己の利益を追求するばかりではなく、自己を犠牲にしてまでも協力関係を築く可能性があるというということである。研究者の間では、このような人間は例外的としてとらえられてきた経緯がある。しかしながら、本研究では、このような協力的な人間が存在するという至近メカニズム(proximate mechanism)における事実を進化過程にまでさかのぼった根源的メカニズム(ultimate mechanism)からしたところ、条件が整えば、むしろ人間の進化過程では、遺伝子に組み込まれた資質として存在することができることを、数学的手法とシミュレーションを用いて検証した。その条件とは、(1)囚人のジレンマでは、通常の二択ではなく、ゲームに参加しないという選択を持つこと、(2)うそをつく能力を持つこと、(3)うそを見抜く能力を持つこと、(4)できれば、タカ派ハト派ゲームやゼロサムゲームといった別のゲームの選択肢が存在すること、であり、このような条件のもとに2万世代でどのように進化してきたのかについてコンピューターシミュレーションを行って検証したところ、うそをつく能力とうそを見抜く能力は拮抗しつつも、協力関係を促す遺伝子は確実に増殖することを発見した。この二年間に著者の関心は、政治脳へのシミュレーションアプローチから、紛争における自己犠牲の可能性、政治知識と政治脳の関係、男女間の配偶者選択における政治脳の可能性と広がった。特に現在の世界情勢を見るとき、紛争地域における自爆テロは頻繁に発生しており、おそらく遺伝子レベルにおいて戦争状態における自己犠牲の傾向がみられる点における関心が強くなってきている。
著者
森川 友義
出版者
早稲田大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

政治脳の進化過程を「囚人のジレンマ」において研究する第一段階(平成15年度)から、「ゼロサムゲーム」や「Hawk-Doveゲーム」を含めた複数のゲームに拡大する作業を行った(平成16年度)。一年目の成果は米国政治学会誌においてリード論文として掲載されたことで結実し、世界の政治学者から高い評価を受けることになった。この論文では、「政治脳」と「人間の協力性」との関係を明確にした。2人の人間関係において嘘をつく能力、見抜く洞察力、及び他者に対してある程度懐疑的になることの3つが人間の協力性を最も高める要因である、という一見してパラドクシカルな仮説を提出して、コンピュータ・シミュレーションによって検証を行った。更に経済学等でしばしば用いられる「合理性」という言葉について政治進化論の立場から新たな定義づけも行い、「合理性」とは社会科学で使われるものの他に、その時代環境に適合できるかどうかの「合理性」(そしてそれは必ずしも利己的ではない)も長い時間のスパンでは重要であり、伝統的な「合理性」の定義は普遍的なものでないことを主張した。第二段階では前年度のパラダイムを更に前進させたが、特に中心となったのは個人と個人の利害関係が直接的に対立するような非協力ゲームにおいて、得られる利得が小さかった場合、争いに参加するかどうかの意思決定について分析を行った。「意思決定の重層」(Orders of Intentionality)という全く新しい分野がそれであるが、相手の出方及び自分の出方を幾重にも推理しながら、最大の利得を獲得させようとする戦略であり、食料や異性の獲得といった人間の存在に根源的に関わるような場面で、リスク高く利得が必ずしも高くない場合に、人間は政治脳を最も駆使することが分かった。