著者
髙岡 良成 森本 直樹 三浦 光一 野本 弘章 渡邊 俊司 津久井 舞未子 前田 浩史 五家 里栄 礒田 憲夫 室井 一男 山本 博徳
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.11-17, 2020-01-01 (Released:2019-12-27)
参考文献数
28
被引用文献数
1 2

症例は74歳男性.2018年X月に大動脈弁置換術の際に輸血を施行した.術後2カ月頃から肝機能障害を認め,HEV-IgA抗体およびHEV-RNA陽性(genotype 3b)でE型肝炎と診断した.その後の解析で輸血前のHEV-IgG抗体陽性,HEV-RNA陰性であったことからE型肝炎既感染例と考えられた.また輸血に使用した凍結新鮮血漿からHEV-RNAが検出され,解析できた遺伝子配列が患者由来HEVとほぼ一致したため,輸血によるE型肝炎と判断した.本邦では2017年までに本例を含めると,少なくとも26例の輸血後E型肝炎が発症し,その報告数は増加しつつある.北海道地区では輸血製剤において核酸増幅検査によるHEVスクリーニング検査が行われているが,それ以外の地区では施行されていない.よって全国での核酸増幅検査によるHEVスクリーニングの早期導入が望まれる.
著者
森本 直樹 倉田 秀一 沖津 恒一郎 砂田 富美子 赤池 康
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.146-150, 2013 (Released:2013-10-09)
参考文献数
22

Collagenous colitis (CC) は,従来比較的まれな疾患と考えられてきたが,疾患概念の浸透とともに報告例が増加している。本邦では特にランソプラゾール (LPZ) に関連した症例の報告が多く,当院でも直近の1年間で3例を経験した。代表的な1例を提示する。症例は84歳,女性。他院処方のLPZを内服中。3か月間持続する水様性下痢の精査のために全大腸内視鏡検査を施行した。大腸粘膜は下行結腸近位部にわずかな毛細血管増生を認める以外に異常所見は認められなかったが,大腸各部位から生検を施行しCCと診断した。LPZを中止したところ2週間後には下痢は改善した。他の2例も慢性下痢症で受診され,内視鏡を施行して組織学的にCCと診断,内服中のLPZを中止することで比較的速やかに症状の改善が得られた。慢性下痢症の鑑別診断においては,本疾患も念頭にいれて,薬剤服用歴など詳細な病歴の聴取や,生検検査を含めた内視鏡精査を行なうことが重要と考えられた。
著者
萩谷 英大 小古山 学 赤堀 洋一郎 河原 義文 内藤 宏道 萩岡 信吾 森本 直樹
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.431-436, 2013-07-15 (Released:2013-10-16)
参考文献数
16
被引用文献数
1

患者は慢性関節リウマチのため少量のプレドニゾロンとサラゾスルファピリジンを長期内服中の79歳の女性である。右大腿骨骨折に対する骨接合術のため入院中であったが,術後13日目に突然の腹痛が出現した。腹部全体に腹膜刺激症状を認め,腹部CTにて腹腔内に遊離ガスと液体貯留を認めたため消化管穿孔に伴う汎発性腹膜炎が疑われた。しかし同時に内部にガス産生を伴う腫大した子宮を認めたため経膣的ドレナージを施行すると大量の排膿があり,子宮留膿腫の穿孔に伴う汎発性腹膜炎の診断にて開腹手術となった。子宮底に穿孔部位を認め,子宮全摘術および両側付属器切除術を施行し,術後エンドトキシン吸着療法を含めた集学的治療により軽快した。子宮留膿腫は高齢女性にみられる予後良好の慢性疾患である。しかし稀に腹腔内に穿孔し汎発性腹膜炎の原因となり,致死的な疾患となり得ることが報告されている。腹腔内の遊離ガスと液体貯留を呈することが多いため,消化管穿孔の診断のもと開腹手術となり術中に診断されることが多く,術前診断率が低いことが指摘されている。本症例はステロイドと免疫抑制薬を長期併用する慢性関節リウマチ患者に発症した穿孔例であるが,急性腹症として発症する前に明らかな下腹部痛,異常帯下などは認めなかった。腹部CTにて子宮留膿腫の穿孔を疑ったことが,迅速な婦人科紹介,経膣的ドレナージ,適切な術式選択につながり救命できたものと考えられた。一般的に腹腔内の遊離ガスと液体貯留を伴う急性腹症の原因は消化管穿孔と考えられるが,高齢女性においては稀に子宮留膿腫の穿孔があることを救急医は認識しておくべきである。
著者
萩谷 英大 塩田 澄子 三好 伸一 黒江 泰利 野島 宏悦 大谷 晋吉 杉山 淳一 内藤 宏道 川西 進 萩岡 信吾 森本 直樹
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.35-39, 2013-04-01 (Released:2013-05-01)
参考文献数
22

A 68-year-old man with alcohol addiction, who lived in the suburbs of Tsuyama, an inland city located in northeast Okayama prefecture, was transported to the emergency unit of the Tsuyama Central Hospital in a state of cardiopulmonary arrest (CPA). Despite rigorous systemic investigation and treatment, the patient died 2 hours after arrival. After his death, Vibrio vulnificus was isolated from his blood culture. Vibrio vulnificus causes fatal infection in humans, usually only in areas located close to the sea where appropriate temperature and suitable salt concentration for its growth are available. Therefore, its occurrence is epidemiologically restricted ; in Japan, the western coastal areas, especially in summers, are reported to be the high-risk regions. This is a rare case because it occurred in a city approximately 50 kilometers from both the Sea of Japan and the Pacific coast of Okayama, and at the end of October in 2011. Economic development and distribution systems have made it possible to transport various food products from coastal areas or abroad to any place in a short time, such that these infections can potentially develop in areas other than expected. We should be aware of the increasing risk of Vibrio vulnificus infection during any season and at any place, especially in patients with abnormal liver function.