著者
森棟 公夫 金谷 太郎 末石 直也
出版者
椙山女学園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

ボラティリティとは収益率の分散(あるいま標準偏差)の事を言うが,金融データの時系列分析では収益率の系列を調べても,通常,何ら特性が見つからない事が一般に知られている.特に,効率的な市場だと,収益率はランダム・ウォークに従うとされる.この研究では金融時系列におけるボラティリティの分析法の研究を行う.特にティック・データが利用できる状況において,効率的かつ実際的なボラティリティの推宿法を求めてきた.ティック・データを用いたボラティリティ分析でよノイズの処理が理論的には大きな関心を持たれているが,時系列処理で,ノイズをフィルターする手法を考案してきた.ボラティリティは自在に変化し,ノイズは独立同一分布を持つという通常の仮定の下ではボラティリティは観測個数にのみ依存する値となる.この1生質を使って,間引き標本などの手法を用いてノイズを除去しようとする試みは行われてきたが,本研究では二次モーメントを基礎とするノイズ除去法を追求した.理論的な研究を進めてきたが,数系列を用いたシミュレーションも行った.しかし,このようなシミュレーションは常に理論的な結果をサポートする事になるので,実際の金融データを使った実証的な検証も行った.この手順は非常に重要で,理論的な分析がもたらすある種のモデル・スペシフィケーション・バイアスを除去することができた幅の広い誤差分布においても従来の分析法が維持できるか否かを検討したが,明確な結果は得ることができなかった.代表的な系列に限定してもデータ購入の費用が高額であった.データについてはこれからも利用していく.
著者
山本 拓 佃 良彦 和合 肇 斯波 恒正 森棟 公夫 国友 直人
出版者
筑波大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

研究成果を便宜上、理論的分析、実証分析、に大きく分類しよう。計量理論についての研究としては程島氏の一連の論文をまず挙げることができよう。同氏は構造変化が存在する場合における計量経済モデルの推測理論を研究し構造変化が存在する場合、制限情報にもとづく新しい最尤推定法を提案している。計量経済モデルの推定・検定・予測問題については森棟・佃両氏が漸近理論の立場から考察を加えている。森棟・佃・和合の各氏は構造変化が存在する場合の計量経済モデルの推測理論を現在研究を継続中である。さて構造変化の定式化としてはさまざまん考え方がありうる。例えば経済主体の期待形成について考えると、いわば連続的に構造変化が起こっていると捉えることが可能である。こうした立場から計量経済分析における予想形成と経済構造との問題については国友氏の一連の論文が考察を加えている。実証分析の中では特に斯波氏は日本の貨幣需要関数について詳細な検討を加えている。林氏は主として日本における消費関数・投資関数を中心として、その安定性を考慮している。また日本経済の外国との関係の分析に目を転ずれば、竹内・山本論文は日本における外国為替市場の効率性について詳しく検討を行っている。この論文では多変量時系列モデルを用いているために比較的、構造変化の存在に対して頑健(Robust)な検定方法と結論している。以上、極めて簡単であるが、本プロジェクトの研究成果は理論面及び実証面の多岐にわたっているがいずれも本プロジェクトにおける連絡・討論やコンファレンスから発展し、深化したものが少なくない。加えて、内外の専門家とのコンファレンスと通じた交流は意義深いと云うことができよう。こうした意味で、本プロジェクトが当初意図していた計画は相当部分において達成されたと云ってもあながち過言ではないであろう