著者
西田 博 小柳 仁 本田 喬 関口 守衛 椎川 彰 江石 清行 高 英成 富沢 康子 中野 清治 清野 隆吉 遠藤 真弘 林 久恵
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.139-143, 1987

今回, 自験例の4例を中心に緊急手術を目的としたIABP駆動下CCU間搬送の問題点, および10機種のIABPの移送に際した性能, 特性の比較検討をおこなった。移送に際し, 問題となる点としては, IABPのサイズと搬送車のサイズの問題, 搬送距離と消費電力, 内蔵バッテリー容量, そしてその容量を越える長距離間の搬送時の電源確保などであった。新型になるにつれ, 装置の小型化がはかられているが, 旧型のものでは, サイズ的に一般救急車には搭載不能でワゴン車などのレンタカーを用いる必要があった。また省エネ化も進んでいるが, 長距離搬送の際の電源としては, 予備バッテリーの使用, 100VACへのインバーターを用いて車より確保する方法, ポータブル発電機の使用などがあげられるが, 高容量車からの確保がもっとも実際的と考えられた。
著者
日野 阿斗務 細田 進 勝部 健 椎川 彰
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.47-50, 2019
被引用文献数
1

<p>症例は45歳女性.僧帽弁後尖逸脱による中等度僧帽弁逆流症の診断で,定期的な外来経過観察をされていた.二週間前発症した蜂窩織炎を契機に呼吸苦を認め,来院した.来院時の心電図にてV4,V5,V6にST上昇と血中クレアチニンキナーゼの上昇を認め,胸部レントゲンでは肺うっ血像を,経胸壁心臓超音波検査にて大動脈弁および僧帽弁に高度逆流と両弁尖に複数の可動性を有する疣贅を認め,さらに前壁の壁運動低下を認めた.頭部MRIおよび全身造影CTで右前頭葉脳梗塞像,脾臓梗塞,右腎臓梗塞を認めた.感染性心内膜炎による大動脈弁と僧帽弁の高度逆流による急性心不全および心筋梗塞を含めた全身塞栓症と診断し,緊急手術の方針とした.全身麻酔導入後,カテコラミン不応の著明な血圧低下を認め,持続性心室頻拍へ移行し,ショック状態に陥った.電気的除細動無効のため,胸骨圧迫を開始し,急遽経皮的心肺補助装置を装着した.血行動態安定後,手術を開始した.術中所見では,大動脈弁,僧帽弁および左房壁に疣贅の付着と僧帽弁後尖の広範囲の腱索断裂を認めた.疣贅郭清後,僧帽弁および大動脈弁置換術,および三尖弁形成術を施行し,手術を終了した.術後高度肺水腫と循環不全が長期化したが,徐々に回復傾向を示し,第52病日に独歩にて退院となった.9カ月後の現在も感染再燃を認めずに経過している.冠動脈塞栓を伴う感染性心内膜炎は重篤で死亡率も高いとされるが,その報告は稀で,文献的考察を加えて報告する.</p>