著者
西田 博 小柳 仁 本田 喬 関口 守衛 椎川 彰 江石 清行 高 英成 富沢 康子 中野 清治 清野 隆吉 遠藤 真弘 林 久恵
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.139-143, 1987

今回, 自験例の4例を中心に緊急手術を目的としたIABP駆動下CCU間搬送の問題点, および10機種のIABPの移送に際した性能, 特性の比較検討をおこなった。移送に際し, 問題となる点としては, IABPのサイズと搬送車のサイズの問題, 搬送距離と消費電力, 内蔵バッテリー容量, そしてその容量を越える長距離間の搬送時の電源確保などであった。新型になるにつれ, 装置の小型化がはかられているが, 旧型のものでは, サイズ的に一般救急車には搭載不能でワゴン車などのレンタカーを用いる必要があった。また省エネ化も進んでいるが, 長距離搬送の際の電源としては, 予備バッテリーの使用, 100VACへのインバーターを用いて車より確保する方法, ポータブル発電機の使用などがあげられるが, 高容量車からの確保がもっとも実際的と考えられた。
著者
前田 真治 林 久恵 横家 正樹
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.156-164, 2003 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

ASOによる潰瘍は予後不良で切断などに至る場合が多い。そこで、血管拡張作用を強力に持つ高濃度人工炭酸温水の効果について、温水浴時の足背部の末梢組織血流 (pBF) および経皮酸素分圧 (TCPO2) を足浴10分前より足浴終了後30分まで、1分間隔で連続測定した。対象は、潰瘍が進行期あるいは安定期にあり血行再建術が不能であった Fontaine II~IV度の49例 (平均66歳、男:女=20:29) である。この虚血肢に週3回以上人工炭酸温水足浴 (38℃、濃度1000ppm) を行った経過を写真評価した。1回の足浴時間は10分間とした。その結果、治癒傾向の乏しかった潰瘍の多くは短期間に縮小ないしは治癒した。pBFは前1.1±0.5ml/min/100gで、1分後より上昇し始め10分後には4.4±1.8まで上昇したが (p<.01)、終了直後に前値に戻った。一方、TCPO2は前40.7±18.3mmHgより10分後50.7±18.2と上昇し (p<.05)、終了20分後も50.3±20.8と前値を上同っていた (p<.01)。また、Fontaine 各群別でもpBF、TCPO2とも有意に上昇していた。以上より、潰瘍を合併した虚血肢には血行改善が必要であるが、血行再建術や運動療法が行えないような症例に対しても、38℃・1000ppmの高濃度人工炭酸温水は効果があり、良好な治療成績を期待することができることが示唆される。その機序は、血管拡張作用に伴う局所組織循環血液量増加と組織酸素分圧亢進など有意な末梢循環代謝改善作用によると思われる。この効果の Fontaine 分類別の比較からも、重症のIV群でも改善は少なくなるものの改善傾向が認められ、Fontaine 分類上の重症度に関らず有用と考えられる。人工炭酸温水足浴は、下腿動脈狭窄を有するASO症例に対する治療手段の一つとして期待されるものであり、今後の発展が望まれる。