著者
椨 瑞希子
出版者
一般社団法人 日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.132-143, 2017 (Released:2018-03-16)
参考文献数
35

イギリスの保育は,過去20年で大きな変貌を遂げた。制度整備の遅れは克服され,ほぼすべての3,4歳児が無償保育を享受する。無償枠は,2歳児の40%に拡大され,無償時間は,2017年9月から2倍になる。本稿は1990年代以降の保育政策研究と政策文書に基づいて,保育無償化の歴史的背景とその展開を明らかにし,その特質について考察する。市場主義の功罪と,親の選択権の過度な尊重が,子どもの安寧を脅かしている現状を報告し,適切な生活時間の公的保障の必要性を訴える。
著者
椨 瑞希子 小玉 亮子 赤坂 榮 Hevey Denise Ang Lynn Schoyerer Gabriel Riedel Birgit
出版者
聖徳大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究の目的は、日本、ドイツ、イギリスの3か国における家庭的保育の実態を明らかにすることを通して、子どもの視点が欠落しがちな3歳未満児保育の望ましい在り方を探ることにある。文献調査を通じて、3国いずれにあっても、①私的な営みとして存在していたものが過去20年の間に既存の就学前施設と同等の法的位置づけを得たこと、②家庭的保育法制化の誘因は緊急かつ大幅な保育拡充政策であったこと、③法制化の道程と到達点は各国における保育の歴史的背景によって異なること、④家庭的保育の衰退もしくは停滞が認められること、を明らかにした。日独、日英研究者による合同調査を通して、家庭的保育者の働き方や意識の異同も確認した。