著者
楢崎 洋子
出版者
武蔵野音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

筆者の区分による三善晃(1933〜)の作曲活動の第1期(1950年代から1960年代半ばまで)を対象にした平成18年度の研究に引き続き、平成19年度は1960年代後半以降を対象に器楽作品と声楽作品の相互関係を考察した。その結果、第2期(1966年〜1971年)には合唱作品において、複数の声の響きと器楽による言葉のアーティキュレーションと音響化が認められ(たとえば《四季に》《王孫不帰》)、その手法は第3期(1972年〜1984年)における合唱とオーケストラのための3部作(《レクイエム》《詩篇》《響紋》)の合唱とオーケストラにも認められる。第4期(1985年〜1994年)における、合唱を2群に分けるほかピアノを2台にする等の編成の大規模化は、第2期、第3期における声と器楽の響きによるデクラメーション手法の延長にとらえられる。第5期(1995年〜)には三善にとって初のオペラとなる《遠い帆》(1999)を書くが、《遠い帆》では歌唱パートが朗唱に徹する傾向にあるのに対し、合唱とオーケストラのための《三つのイメージ》(2002)においては、言葉の音響化に創出的なデクラメーションが認められる。三善の構想する「オペラではないオペラ」は、オペラと銘打った作品においてよりも、声と器楽を複合させた作品において具現されている。また、声を伴わないオーケストラのための4部作(《夏の散乱》《谺つり星》《霧の果実》《焉歌・波摘み》)においては、三善がそれまで追求していた死と生の関係、あるいは個々の人間存在とそれらの関わりが、独奏楽器とオーケストラの関係やオーケストレーションに追求されている。
著者
楢崎 洋子
出版者
武蔵野音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本の作曲界が活発になる1930年代から第二次大戦後にかけての日本の作曲家によるオーケストラ作品を対象に、交響曲と題する作品と、交響曲と題さない作品との間に、どのような意識の違いと作風の違いがあるかを、作曲家の言説のほか第三者による評価、および実際の作風を通して考察した。その結果、交響曲と題する作品においても、モデルとされた独墺の交響曲の諸手法と形式を用いながらも、それらを凌駕するような日本的要素に由来すると思われる諸特徴が支配していることを指摘した。
著者
楢崎 洋子 阿部 正樹 橋本 遼平
出版者
武蔵野音楽大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

オーケストラ作品や器楽作品にオリジナルな作風が認められるとともに、声楽作品やオペラ作品も書いている日本の作曲家の作品を対象に考察すると、たとえばオペラ作品において言葉に声、オーケストラが重なって、複数のメディアの複合的というよりも一元的な関係が認められるため、その関係を表す適切なジャンル名称の必要性を示唆する。