著者
藤田 比左子 吉谷 須磨子 樋之津 淳子
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究は,看護職及び看護部門による感染予防対策(スタンダードプレコーションの主要項目)の実践の現状を明らかにし,スタンダードプレコーションの普及に向けたガイドライン作成を検討することを目的とした。全国の医療施設のうちの一般病院を対象とした質問紙調査を実施し,以下の結果を得た。1)方法第1段階調査は,500施設(2006年3月1日〜3月27日),第2段階調査では,2400施設(2006年9月15日〜10月15日)を対象とし,自由回答欄を一部含む選択回答肢から構成される自記式質問紙を用いた郵送調査を実施した。調査項目は,第1段階調査の質問紙は,感染予防対策に関する実践内容,施設の属性とし,第2段階調査の質問紙は,第1段階調査にて使用したものに準じ,一部を改訂したものを使用した。最終解析対象は,第1段階調査では281施設,第2段階調査では,998施設であった。2)結果感染対策委員会を構成する看護師数は,病院規模に関わらず,関東から近畿地方にかけて少なく,九州・沖縄地方が有意に多かった。感染予防対策マニュアルへの記載項目では,白衣・カーディガンの着用に関する記載がなく(約90%),手袋の使用方法に関して記載があるとした施設は,70%に満たなかった。特に,全患者に手袋の使用を規定している項目は,排便と蓄尿バッグの取り扱い時(排泄)が約90%,創処置・採血時は約70%程度であった。重要視されている感染対策項目は,手洗いが最も多かった(791施設,79.3%)が,その教育は入職時の新人教育にとどまっていた(839施設,83.9%)。3)考察感染予防対策に必要な体制の整備・感染対策マニュアルの具体的な内容の充実と機能性の向上・感染予防に関する継続的な教育推進活動が重要な中核として示唆され,今後はこれらの内容を明確に示すガイドラインの構築が必要である。
著者
樋之津 淳子 高島 尚美 香城 綾 Hinotsu Atsuko Takashima Naomi Kojo aya
出版者
筑波大学医療技術短期大学部
雑誌
筑波大学医療技術短期大学部研究報告 (ISSN:02850702)
巻号頁・発行日
no.22, pp.27-32, 2001-03

Though cold pack is often made use of at home as well as at hospitals to reduce fever, it can be said that evidence showing that it is effective has not been reported. The purpose of this paper is to argue for the usefulness of cold pack in nursing and explore its effective application, presenting empirical data about how cold pack changes body temperature and affects sensation of coldness. Cooperated by healthy females, two types of cold pack treatments, that is, application of the ice pillow to the back part of the head and application of the ice bag to the bilateral axillary[?], were performed. In this experiment, the skin and deep temperatures of all subjects were measured and they were also asked to tell us how cold they felt. The result was that whereas both of the methods made the skin temperature go down alike, they showed a meaningful difference in effect of changing of the deep temperature, indicating that application of the ice bag to the bilateral axillary was more effective in falling the deep temerature. It was also shown that the use of the ice bag made subjects feel colder. The results thus seem to suggest that we feel more comfortable with the ice pillow applied to the back part of the head and that application of the ice bag to the bilateral axillary is more effective in falling body temperature.
著者
林 啓子 浦山 修 高島 尚美 山内 惠子 樋之津 淳子
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2004

本研究では「笑い」が2型糖尿病患者の血糖コントロールに及ぼす影響を明らかにするために、漫才や落語で笑った前後における血糖値の変化(短期効果)と日々の生活の中で笑う機会を増やすことで高血糖状態が改善されるかどうか(長期効果)の2本立ての研究計画を立て実施した。1年目はプロの漫才師の協力を得て、短期効果の検証をおこなった。60歳代の8名の糖尿病患者における笑い前後の血糖値の変化を自己血糖測定法(SMBG)により観察した。短期効果の実験は今回で3回目であり、再度食後2時間血糖値上昇が抑制されることを実証した(笑いの無い状況における血糖変動に比べ-31.4mg/dl)。2年目は24名の2型糖尿病患者を被験者として(60歳代、男性12名、女性12名、非インスリン治療)月1回「笑い」を含む糖尿病教室を9回開催した。この教室では日々笑うことを奨励し、さらに笑いに関与する顔面筋群(大頬骨筋、眼輪筋、口輪筋)の動きをよくする体操(笑み筋体操)を考案し指導した。被験者には体重、食事、運動(歩数)そして笑いの状況を日誌として記録してもらった。血糖変動の原因が明らかである者(薬物変更等)や出席回数が少なかった者を除いた17名について前年同時期の血糖変動と比較したところ、HbA1cの年間平均が前年より改善した者12名(-0.25%±0.22)、不変または悪化は5名(+0.09%±0.08)であった。期間中、本人が笑ったと目覚した日数は月平均10日〜20日だったが、13日以下になるとHbA1cが上昇する傾向が認められた。POMS短縮版による心理状態の変化では「緊張・不安」が改善した。糖尿病教室に参加した被験者の日誌からは日々の療養生活を改善しようとする前向きな書き込みが多く見られるようになった。血糖コントロールは日常生活のさまざまな要因により変化するため、笑いとの因果関係を客観的指標により明確にするには至らなかったが、「笑い」を指導内容に加えた糖尿病教育プログラムは血糖値の改善に効果があることが示唆された。
著者
新美 三由紀 赤座 英之 武島 仁 樋之津 淳子 高橋 秀人 加納 克巳 大谷 幹伸 石川 悟 野口 良輔 小田 英世 大橋 靖雄
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.88, no.8, pp.752-761, 1997-08-20
参考文献数
11
被引用文献数
2

(背景と目的) 癌告知の是非について様々な論議がなされているが, 現在でも, その原則は確立されてはいない. そこで今回は, 前立腺癌患者のQOLに対する癌告知の影響について検討した.<br>(対象と方法) 前立腺癌の外来通院患者を対象に, GHQとI-PSSを用いて, QOLの構成因子である身体・精神・社会的側面を測定し, GLMにより, [うつ状態] [不安と不眠] [社会的活動障害] のそれぞれに対する寄与要因を探索し, 告知の効果の影響を検討した.<br>(結果) 告知の有無で比較したとき, 全変数とも有意差は認められなかったが,「うつ状態」「I-PSS」「身体的症状」の3変数間の相関構造が, 告知あり群と告知なし群で大きく異なった. さらにGLMの結果,「うつ状態」に対して「身体的症状」「I-PSS」「臨床病期」が主効果として寄与し,「告知の効果」と「身体的症状」の交互作用が認められた.<br>(結論) 前立腺癌患者は, 身体状態が良いときは, 病名告知に関わらず精神的に安定しているが, 身体的な自覚症状が強くなると, 告知されていない群の方が抑うつ傾向を示す可能性が高い. 一方, 病名を告知された前立腺癌患者群では, この傾向は比較的弱いことが示唆された. これは病名を告知されている群は, 患者自身が自覚的な身体症状の変化を理解でき, そのために精神的安定が保たれているのではないかと推察される.