著者
横山 泰行
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.27-36, 1983-07-01
被引用文献数
1

本研究は、養護学校12校に在籍する9歳から16歳までの精神薄弱児男子443名と女子250名の肥満度を、Rohrer指数方式、文部省の肥満傾向児方式、長嶺の皮脂厚方式といった3種類の代表的な肥満判定法によって定量的に解析し、その結果を健常児の肥満度の数値と比較考察したものである。1)Rohrer指数によって準肥満・肥満と判定された精神薄弱児は男子では10%、女子では20%に達している。2)年齢を一括して、精神薄弱児と健常児との男子の肥満傾向児の出現頻度を比較すると、両群問のX^2の値は有意差のない結果である。女子の肥満傾向児数は対照群や全国の数値を圧倒的に凌駕している。精神薄弱児女子の肥満傾向児は9歳から12歳にかけて漸増し、12歳から15歳にかけて漸減している。3)皮脂厚からの判定法によれば、男子の精神薄弱児は約4名に1名、女子では約3名に1名が肥満と判定されている。
著者
横山 泰行
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1994

重度化・重複化している精神遅滞児になわとび運動を定着させるためには,きめの細かい指導案が不可欠である.この要望に対して,現在のところ唯一満足のゆく指導案を公表しているのは,高畑の著書「フ-プとびなわでなわとびは誰でも跳ばせられる」である.本研究では,「フ-プとびなわ運動」の指導ステップを紹介し,次に,高畑の実践報告書「フ-プとびなわ驚異の教育力」を文献資料として活用している.つまり,重度の精神発達遅滞で,自閉的傾向の認められる事例児のフ-プとびなわ運動に見られるマスター過程を克明に追跡し,その過程で本人の心身(肥満問題や身体活動量・運動能力問題など),家庭の両親,指導者,クラスの仲間に及ぼした影響を要約をするものである.この事例児は「フ-プとびなわ運動」で肥満解消に成功することはできなかったが,肥満程度の昂進しやすい思春期に,肥満の最重度化にブレーキを掛けることに成功したケースである.数百回に及ぶなわとび運動の消費エネルギーも,重度肥満の程度を大幅に軽減できる身体活動量とはならなかった.本研究の後半は,小学部の頃から重度肥満であった事例児が中学部において,急速に肥満を解消していった過程を詳細に追跡している.血液の生化学的検査により,このままの状態が続けば,事例児の病気は避けられないといった診断結果が肥満解消を促す最大の動因となった.肥満解消の原因は,父親が学校と緊密な連絡を取りながら,家庭での徹底した食事管理,掃除や散歩の活用,学校側での定期的な身体測定,食事量・運動量のチェックと是正,家族に対する正しい肥満知識の普及,両親を説得して肥満治療にあたった点にあるといえよう.また,嘔吐による体の変調も急激に体重を減らした要因であった.
著者
横山 泰 生方 俊
出版者
横浜国立大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

フォトクロミズムに伴って生成する二つの安定な状態が、可視部に吸収を持たないような熱不可逆ステルスフォトクロミックシステムを、短段階の合成経路で合成した。さらに、100%のジアステレオ選択性で光環化するジアリールエテン、非常に高い量子収率で光環化するビスチアゾリルインデノン誘導体の合成を行った。また、スピロオキサジンの光着色体から無色体への熱戻り反応を架橋ポリシロキサンにペンダントして行うと、溶液中同様の速い速度で戻ることを示した。
著者
横山 泰 生方 俊
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

代表的な熱不可逆フォトクロミック化合物であるジアリールエテンは、ヘキサトリエン部位が光環化する際に二つの不斉炭素を生じる。ヘキサトリエン部位の周辺に不斉炭素を導入すると、環化で生じる不斉炭素の絶対立体配置が片方に偏って、ジアステレオ選択的なフォトクロミズムを生じる。我々は、ヘキサトリエンの末端に不斉炭素を導入した化合物1を合成し、不斉炭素の周辺に働くアリリックストレインを立体配座のパイロットとして用いて、88%から94%deと、高いジアステレオ選択的フォトクロミック閉環反応を実現してきた。しかし、用いる複素芳香環の接続位置を3位から2位に変えた化合物2では、比旋光度変化は13000と大きいものの、ジアステレオ選択性は47%deと大きく低下した。そこで、電子反発を有効に働かせることができるために高い選択性を示すであろう分子3を設計し、合成を行った。その結果、3の光環化におけるジアステレオ選択性は90%deまで向上した。それに伴って、光反応に伴う比旋光度変化は9530の変化を示した。この結果は、J.Org.Chem.に掲載された。さらに、アリリックストレインを働かせるパイロット置換基を両側のベンゾチエニルエテンにつけた化合物を合成したところ、ビスベンゾチエニルヘキサフルオロシクロペンテンの化合物4ではジアステレオ選択性は98%de、比旋光度変化は142goを示した。残念なことに、同じ置換基をつけたビスナフトチエニルエテン5、ベンゾチエニル基とナフトチエニル基をもつもの6、については、光反応性が極端に低下し、紫外光照射によってわずかな着色体を与えるのみであった。