著者
横山 絵里子 中野 明子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.184-191, 2008-06-30 (Released:2009-07-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

頭頂葉病変に関連する,伝導失語,半側空間無視,着衣障害の脳画像研究について概説した。脳循環代謝の解析からは,伝導失語でBroca 野とWernicke 野が保たれ弓状束が限局性に障害されるという解剖学的離断所見は得られず,左シルビウス溝周辺の前頭葉,側頭葉,頭頂葉の広い病巣で伝導失語を認めた。右病変による左半側空間無視では,BIT の成績は右上頭頂小葉,右楔前部や右上後頭回の脳血流低下を反映すると考えられた。左病変による右半側空間無視では広範な左大脳半球皮質域や右頭頂葉の脳血流低下を認め,左半球のみならず右頭頂葉も右半側空間無視の発現に関与する可能性が示された。左病変による着衣障害では,右前頭葉内側(右帯状回前部)の脳血流低下との関連が推察された。着衣障害の改善には,左病変では両側前頭葉,右側頭頭頂葉,両側後頭葉が,右病変では左前頭葉外側,両側前頭葉内側,両側頭頂葉,左後頭葉など,両側大脳半球が関わる可能性があった。
著者
河田 雄輝 須藤 恵理子 横山 絵里子
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1961, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】高度肥満者は治療が困難で,重篤な合併症や心理・精神的問題を有することが多く,治療法の選択に注意を要する。本邦ではBody Mass Index(BMI)30以上の肥満は欧米諸国に比べ少なく,BMI59以上ではリンパ浮腫を呈しやすい。今回高度肥満を契機に両下肢リンパ浮腫を生じ,両大腿内側にソフトバレーボール大の巨大な腫脹を来した症例を経験した。重篤なリンパ浮腫に対する圧迫療法は困難を極めたが,圧迫方法を工夫し,多職種と連携しながら取り組んだことにより,減量とリンパ循環障害の改善を認めたので報告する。【症例紹介】症例は36歳の男性,高度肥満症,脂肪性続発性両下肢リンパ浮腫,2型糖尿病,睡眠時無呼吸症候群,変形性股関節症,変形性膝関節症と診断された。現病歴は中学時60kg,高卒時140kg,20歳代190kgであり,2009年に減量目的でS病院に入院し234kgから200kgまで減量した。その後,運動不足や過食によりリバウンドかつリンパ浮腫の増悪が生じ,活動量の低下を来たしたため2013年当センターに入院した。入院時,身長169.7cm,体重234.7kg,BMI81.5であり,リンパ管が圧迫され両下肢リンパ浮腫International Society of LymphologyGrade(ISL)病期分類III期を呈し,右下肢に象皮症を生じ,両殿部~大腿内側にソフトバレーボール大の腫脹(大腿を含む腫脹最大周径150cm以上),リンパ漏や乳頭腫も認めた。屋内歩行はT字杖で自立していたが,息切れや心拍数の上昇により耐久性15mだった。【経過】肥満症の治療として,Nutrition Support Team(NST)介入による食事療法(1100kcal),看護と連携し毎日の体重変化を記載したグラフ化体重日記による行動療法,理学療法(PT)および作業療法(OT)による運動療法を入院翌日より開始した。並行してリンパ循環障害に対するスキンケアやリンパドレナージ,両下腿に対する圧迫療法,圧迫下での運動療法を組み合わせた複合的理学療法を施行した。また病識低下,意欲低下を認め,心理面に配慮しながら,肥満やリンパ浮腫の教育指導も行った。その結果,入院1ヶ月後には210kgまで減量したが,その後の減少は停滞した。入院3ヶ月後,リンパ漏や乳頭腫は軽減したが,両大腿部にリンパ液が貯留し,腫脹の硬結が悪化した。両大腿腫脹部の圧迫療法により貯留しているリンパ液を中枢へ還流する必要があると判断された。当初はロール状スポンジと弾性包帯にて圧迫を施行したが,重力や姿勢の変化,歩行動作で圧迫が外れやすく難渋した。OTと連携し,大腿部の形状に合わせて伸縮性のあるネオプレーンを用いたベルクロ付き圧迫帯を作製し,大腿全体を覆い固定した。看護師,OTと情報交換しつつ,日中を中心に時間を調整して圧迫療法を試みた。この結果,徐々に大腿部のリンパ液が中枢へ循環され,入院5ヶ月後の退院時には体重172kg,BMI58.8へ改善し,リンパ浮腫はISL病期分類II期,大腿を含む腫脹最大周径は圧迫開始時144cmから99cmまで縮小した。腫脹の縮小によって,徐々に運動量は増加し,T字杖歩行は耐久性100m以上に向上した。【考察】リンパ浮腫に対する圧迫療法は,高いエビデンスレベルにあるものの,不適切な圧迫は逆に浮腫を悪化させる可能性がある。本症例の腫脹に対する圧迫療法は,入院後3ヶ月間不良な皮膚状態であり困難を極めたが,その後の2ヶ月間は体格に合わせた圧迫帯を用いて適応できた。本症例ではリンパ浮腫の重症度に応じた介入が,リンパ循環障害の改善と体重の減量,歩行耐久性の向上をもたらしたと推察される。肥満やリンパ浮腫に対する教育指導はリンパ浮腫の改善のみならず,ADLやQOLの改善にも有効であった。【理学療法学研究としての意義】合併症や精神的問題を有する高度肥満症には,リンパ浮腫の重症度に応じた対応,患者個人に合わせた工夫を多職種と綿密に連携することが有効であると考えられた。また,心理状態に配慮しながら肥満や合併症への患者教育を行うことも効果的である。
著者
横山 絵里子 中野 明子
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.634-640, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
24
被引用文献数
6

【目的】脳卒中の栄養状態と認知・運動機能,ADLとの関連を明らかにする.【方法】対象は慢性期脳卒中381例(平均68±11歳)で,下肢運動年齢(MA),Barthel index(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS),Functional Independence Measure(FIM),長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS),標準失語症検査(SLTA),行動性無視検査(BIT)の評価と同時期にbody mass index(BMI),血清アルブミン(Alb),体重変化率を指標に栄養状態を評価した.【結果】栄養状態は全体の69%が低栄養であった.高度な低栄養ほどMA,BI,FIM,HDS,SLTA,BITは低下していた.順位相関係数の検討ではMA,BI,HDS,SLTAはBMIやAlbと有意な正の相関を認めた.【結論】低栄養が認知・運動機能やADL低下に関与する可能性が示された.