著者
横山 絵里子 中野 明子
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.184-191, 2008-06-30 (Released:2009-07-01)
参考文献数
37
被引用文献数
2

頭頂葉病変に関連する,伝導失語,半側空間無視,着衣障害の脳画像研究について概説した。脳循環代謝の解析からは,伝導失語でBroca 野とWernicke 野が保たれ弓状束が限局性に障害されるという解剖学的離断所見は得られず,左シルビウス溝周辺の前頭葉,側頭葉,頭頂葉の広い病巣で伝導失語を認めた。右病変による左半側空間無視では,BIT の成績は右上頭頂小葉,右楔前部や右上後頭回の脳血流低下を反映すると考えられた。左病変による右半側空間無視では広範な左大脳半球皮質域や右頭頂葉の脳血流低下を認め,左半球のみならず右頭頂葉も右半側空間無視の発現に関与する可能性が示された。左病変による着衣障害では,右前頭葉内側(右帯状回前部)の脳血流低下との関連が推察された。着衣障害の改善には,左病変では両側前頭葉,右側頭頭頂葉,両側後頭葉が,右病変では左前頭葉外側,両側前頭葉内側,両側頭頂葉,左後頭葉など,両側大脳半球が関わる可能性があった。
著者
小海 宏之 岡村香織 中野明子 鈴木博子 岸川雄介 園田薫 石井博 成本迅 Hiroyuki KOUMI OKAMURAKaori NAKANOAkiko SUZUKIHiroko KISHIKAWAYusuke SONODAKaoru ISHIIHiroshi NARUMOTOJin 花園大学社会福祉学部 藍野花園病院 藍野病院臨床心理科 阪本病院 藍野病院老年心身医療センター 藍野病院老年心身医療センター 藍野病院老年心身医療センター 京都府立医科大学大学院医学研究科精神医学教室 Faculty of Social WelfareHanazono University Ainohanazono Hospital Department of Clinical PsychologyAino Hospital Sakamoto Hospital Center of Geriatric Medicine and Psychiatry Aino Hospital Center of Geriatric Medicine and Psychiatry Aino Hospital Center of Geriatric Medicine and Psychiatry Aino Hospital Department of Psychiatry Kyoto Prefectural University of Medicine
巻号頁・発行日
vol.19, pp.37-44,

本研究は、高齢統合失調症者の表情認知における特徴を検討することにより、高齢統合失調症者の情動機能に関する今後の神経心理学的研究の基礎資料にすることを目的とした。対象は高齢統合失調症者7名(平均年齢71.7±6.4歳)と健常高齢者10名(67.4±6.6歳)である。方法は対象者にMini-Mental State Examinationおよび小海ら(2007)が SuperLab Pro V.2.04でプログラミング作成した Emotion Recognition Testを個別実施した。その結果、高齢統合失調症者は健常高齢者と比較して、全般的認知機能の低下が認められ、また、怒りや悲しみなど不快情動の表情認知を誤る率が高く、反応時間も遅いことが明らかとなった。これらの特徴から、高齢統合失調症者は、とくに右側前帯状皮質、扁桃体や島皮質周辺領域における機能の低下を示唆すると考えられ、また、これらのことが対人関係上の問題となる可能性を示唆するとも考えられる。
著者
中野 明子 中島 健二 小林 恒三郎 塚原 ユキ 佐藤 睦子
出版者
日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会)
雑誌
失語症研究 (ISSN:02859513)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.351-357, 1982 (Released:2006-08-11)
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

Disorders of speech and other mentalfunctions in eight patients with left thalamic hematoma were examined, both in their acute and chronic stage. The examinations in the acuts stage revealed a decrease of vigilance in 7 cases, fatiguability in 6 cases, a paucity of spontaneous speech in 6 cases and small vocal volume in 5 cases. In addition, 6 out of cases exhibited some speech disorders, inluding paraphasia, word-finding difficulties, circumlocution. The other two cases showed memory dis turbance and / or disorientation. Fluency, repetition and comprehension were well preserved in all cases. And, in the chronic stage, disor ders of speech and other mental functions almos disappeared in 7 cases out of the 8.    Those defects were not considered as being aphasia, but as a lack of activation of higher mental functions in the dominant hemisphere.
著者
加藤 佑佳 中野 明子 山本 愛 岡村 香織 小海 宏之 吉田 麻美 園田 薫 安藤 悦子 岸川 雄介 寺嶋 繁典
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.721-730, 2011-08-01

2型糖尿病者を対象にProblem Areas in Diabetes(PAID)scaleを実施し,フロア効果がある6項目を除いて因子分析を行ったところ単因子構造が確認された.このPAID尺度とProfile of Mood States(POMS),Tokyo University Egogram New version(TEG)との関連を検証した結果,PAID尺度はPOMSの「Tension-Anxiety」「Depression-Dejection」「Fatigue」との有意な関連がある一方,TEGとは関連がみられなかった.よって,PAIDとPOMSを併せて用いることは,糖尿病の負担感と関連する心理的状態をより詳細に把握することができ,各人に応じた心理的援助を提供する際に有効であると考えられる.
著者
横山 絵里子 中野 明子
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.634-640, 2010-11-26 (Released:2010-12-03)
参考文献数
24
被引用文献数
6

【目的】脳卒中の栄養状態と認知・運動機能,ADLとの関連を明らかにする.【方法】対象は慢性期脳卒中381例(平均68±11歳)で,下肢運動年齢(MA),Barthel index(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS),Functional Independence Measure(FIM),長谷川式簡易知的機能評価スケール(HDS),標準失語症検査(SLTA),行動性無視検査(BIT)の評価と同時期にbody mass index(BMI),血清アルブミン(Alb),体重変化率を指標に栄養状態を評価した.【結果】栄養状態は全体の69%が低栄養であった.高度な低栄養ほどMA,BI,FIM,HDS,SLTA,BITは低下していた.順位相関係数の検討ではMA,BI,HDS,SLTAはBMIやAlbと有意な正の相関を認めた.【結論】低栄養が認知・運動機能やADL低下に関与する可能性が示された.