著者
横浜 康継
出版者
Otsuchi Marine Research Center, Ocean Research Institute, the University of Tokyo
雑誌
Otsuchi Marine Science (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.57-58, 2002-03-29 (Released:2007-04-05)

平成12年度共同利用研究集会「北海道, 東北沿岸の海草藻場ワークショップ」(2001年3月7日~9日, 研究代表者:相澤啓子)講演要旨 Workshop of the studies on the seagrass beds in Hokkaido and Tohoku areas(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000)
著者
若菜 勇 佐野 修 新井 章吾 羽生田 岳昭 副島 顕子 植田 邦彦 横浜 康継
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.517, 2004

淡水緑藻の一種マリモは,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧I類に指定される絶滅危惧種で,日本では十数湖沼に分布しているといわれている。しかし,生育実態はその多くで明らかではなかったため,過去にマリモの生育が知られていた国内の湖沼のすべてで潜水調査を行い,生育状況と生育環境の現状を2000年に取りまとめた(第47回日本生態学会大会講演要旨集,p.241)。その中で,絶滅危惧リスクを評価する基準や方法について検討したが,新規に生育が確認された阿寒パンケ湖(北海道),西湖(山梨県),琵琶湖(滋賀県)ではマリモの生育に関する文献資料がなく,また調査も1度しか行うことができなかったため,個体群や生育環境の変化を過去のそれと比較しないまま評価せざるを得なかった。一方で2000年以降,阿寒ペンケ湖(北海道)ならびに小川原湖(青森県)でも新たにマリモの生育が確認されたことから,今回は,過去の生育状況に関する記録のないチミケップ湖を加えた6湖沼で複数回の調査を実施して,個体群や生育環境の継時的な変化を絶滅危惧リスクの評価に反映させるとともに,より客観的な評価ができるよう評価基準についても見直しを行った。その結果,マリモの生育面積や生育量が著しく減少している達古武沼(北海道)および左京沼・市柳沼・田面木沼(青森県)の危急度は極めて高いことが改めて示された。また、1970年代はじめから人工マリモの原料として浮遊性のマリモが採取されているシラルトロ湖(北海道)では,1990年代半ばに47-70tの現存量(湿重量)があったと推定された。同湖における年間採取量は2-2.5tで,これはこの推定現存量の3-5%に相当する。補償深度の推算結果から判断して,現在のシラルトロ湖における資源量の回復はほとんど期待できず,同湖においては採取圧が危急度を上昇させる主要因になっている実態が明らかになった。
著者
横浜 康継 蔵本 武照
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

イセエビ(Panulirus japonicus)とウミザリガニ(Homarus americanus)を用い、それぞれ、個体の酸素消費(呼吸=代謝)速度を差働式検容計と酸素電極法とを併用して観測し、代謝速度と温度との関係を調べた。その結果、ともに、体温の低下に抗して代謝速度が維持あるいは促進される温度域があり、ウミザリガニでは5-13℃であるのに対し、イセエビでは13-20℃であることが明らかとなった。イセエビは15℃以上の暖流域に棲み、ウミザリガニは15℃以下の寒流域に棲んでいる。それ故、この棲息地の環境温度が代謝促進のある温度域と関連しているものと考えられた。囲心腔ホルモンの1成分のセロトニンにより、心筋や腹部緊張筋の酸素消費速度が大きく増大した。それ故、セロトニンが囲心腔器官などから分泌されて、体内に存在していれば、少なくとも筋組織は、体温低下に抗して代謝速度を維持または促進しうることが示唆された。一方、他の囲心腔ホルモン成分のオクトパミンやプロクトリンは筋膜の興奮度を高めた。温度低下に伴い、筋の興奮-収縮連関の効率が落ち、収縮の強度は減少するが、オクトパミンやプロクトリンが存在すれば、膜の興奮度がより高まる結果、興奮-収縮連関の効率の低下が補正されることになる。従って、体温低下に伴う筋収縮度の低下は、囲心腔器官からオクトパミンやプロクトリンが分泌されることにより、防げると考えられた。蔵本らは、イセエビで、5度程度の体温低下に伴い囲心腔器官からセロトニンやオクトパミンが分泌されることを実証している(Biol.Bull.,86,319-327,1994)。かくして、エビ生体内においては、環境温度の低下に伴う体温の低下で、筋の代謝速度が下がらないだけでなく、筋の収縮力も落ちないことが解明できた。低温の酸欠下で、10数分間に渡り心拍が維持される現象が見つかった。この酸欠状態での代謝調節機構は不明で、今後の研究課題である。しかし、面白いことに、イセエビは、腹部の屈伸運動による特異な後方遊泳により、15分で3km位は移動できるので、低温の酸欠水塊に遭遇しても、この悪環境から逃避しうることが示唆された。