著者
鯵坂 哲朗 若菜 勇
出版者
総合地球環境学研究所 研究プロジェクト4-2
雑誌
2004年度 生態史プロジェクト報告書
巻号頁・発行日
pp.338-344, 2005-07-30

2004年12月にラオスで調査したシオグサ(カイ)とアオミドロ類(タオ)について報告する。シオグサの加工品カイペーンの加工工程やそれ以外の利用(調理)法について新たな知見が得られた。また、シオグサの生育場所と採取風景およびカイペーンの加工工程をビデオ撮影できた。シオグサとアオミドロ類の生育場所の水質環境調査を行ったところ、それぞれの生育場所の特性が明らかにされた。シオグサは主に流水系で、pHもややアルカリ性で、溶存酸素濃度が高く、きれいで不純物の少ない清浄な水質環境に生育していること、またアオミドロ類は同様の清浄な水質環境にも、また静水系で、pHもやや酸性よりで、溶存酸素濃度が低く、濁りがあって不純物の多い水質環境にも生育できることがわかった。ラオスのシオグサは1種類で、種名はカモジシオグサ(Cladophora glomerata (Linnaeus) Kuetzing)であることが判明した。アオミドロ類については、Spirogyra spp.(アオミドロ属の数種)であることも判明し、くわしい利用(調理)法もわかった。
著者
若菜 勇 佐野 修 新井 章吾 羽生田 岳昭 副島 顕子 植田 邦彦 横浜 康継
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.517, 2004

淡水緑藻の一種マリモは,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧I類に指定される絶滅危惧種で,日本では十数湖沼に分布しているといわれている。しかし,生育実態はその多くで明らかではなかったため,過去にマリモの生育が知られていた国内の湖沼のすべてで潜水調査を行い,生育状況と生育環境の現状を2000年に取りまとめた(第47回日本生態学会大会講演要旨集,p.241)。その中で,絶滅危惧リスクを評価する基準や方法について検討したが,新規に生育が確認された阿寒パンケ湖(北海道),西湖(山梨県),琵琶湖(滋賀県)ではマリモの生育に関する文献資料がなく,また調査も1度しか行うことができなかったため,個体群や生育環境の変化を過去のそれと比較しないまま評価せざるを得なかった。一方で2000年以降,阿寒ペンケ湖(北海道)ならびに小川原湖(青森県)でも新たにマリモの生育が確認されたことから,今回は,過去の生育状況に関する記録のないチミケップ湖を加えた6湖沼で複数回の調査を実施して,個体群や生育環境の継時的な変化を絶滅危惧リスクの評価に反映させるとともに,より客観的な評価ができるよう評価基準についても見直しを行った。その結果,マリモの生育面積や生育量が著しく減少している達古武沼(北海道)および左京沼・市柳沼・田面木沼(青森県)の危急度は極めて高いことが改めて示された。また、1970年代はじめから人工マリモの原料として浮遊性のマリモが採取されているシラルトロ湖(北海道)では,1990年代半ばに47-70tの現存量(湿重量)があったと推定された。同湖における年間採取量は2-2.5tで,これはこの推定現存量の3-5%に相当する。補償深度の推算結果から判断して,現在のシラルトロ湖における資源量の回復はほとんど期待できず,同湖においては採取圧が危急度を上昇させる主要因になっている実態が明らかになった。
著者
山本 省吾 若菜 勇 中瀬 浩太 島谷 学
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
海岸工学論文集 (ISSN:09167897)
巻号頁・発行日
no.50, pp.611-615, 2003

北海道阿寒湖の特別天然記念物マリモは, 強風によって6~9年に1度の頻度で, 数万個が湖浜に打ち上げられている.マリモ打ち上げ時の波浪条件の定量的評価や打ち寄せ・打ち上げ機構を明らかにすることは, マリモの保全上重要である.本研究では, 2002年10月の大量打ち上げ発生時の現地風データから風波を推算し, 波・流れ場の平面2次元数値計算を実施した.さらに, 慣性力を考慮したシールズ数を用いたマリモの移動限界評価式を提案し, 現地打ち上げ観測記録との比較により, 評価式の妥当性を確認した.また, 波による振動流速下で移動状態になった球状体マリモが湖浜流により湾奥へ運ばれると推測した打ち寄せ・打ち上げ機構が実現象を十分説明できることも確認した.