著者
棚田 教生 新井 章吾 牧野 賢治
出版者
徳島県立農林水産総合技術センター水産研究所
雑誌
徳島県立農林水産総合技術センター水産研究所研究報告 (ISSN:13472763)
巻号頁・発行日
no.2, pp.41-44, 2003-07

徳島県北部沿岸の折野地先に設置された離岸堤において、自然成立したヒジキ群落が確認された。2002年7月にSCUBA潜水によって、離岸堤のヒジキ群落内で3カ所の枠取りをおこない、同時にヒジキ生育帯の幅を測定した。採集したヒジキについて、湿重量と大型藻体10株の藻長を計測した。ヒジキは強い波浪が遮へいされる離岸堤内側に群落が成立しており、その生育水深は0.3-0.6m(D.L.基準+0.6-0.3m)であった。ヒジキの現存量は20.7kg/m2(湿重量)であり、生育帯の幅は50cmであった。離岸堤の総延長が1116.1mであることから、折野地先のヒジキの現存量は11.6トンと概算され、ヒジキの増産法として、離岸堤の利用も効果的であることが、今回の調査で明らかになった。折野地先においては、離岸堤を設置するという環境改変によって冬季の強い波浪が遮へいされ、離岸堤の内側で適度な流動環境が形成されたことが、ヒジキ群落の形成をもたらしたと考えられた。
著者
野田 幹雄 北山 和仁 新井 章吾
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.5-13, 2002-07-15
被引用文献数
15 5

アイゴ科魚類は、インド・太平洋の熱帯・亜熱帯水域に分布の中心をもち、全世界で27種が知られている。いずれの種も植食性で、緑藻・紅藻・褐藻類に属する糸状の微小藻類や葉状・樹枝状・膜状の芝生状の海藻類を主要な食物源とするグループである。アイゴ科魚類の中でもっとも広範囲の緯度(本邦中部域からオーストラリア南部)にわたって分布するアイゴもその例外ではないと考えられている。また、アイゴ科魚類はシンガポール・フィリピン・パラオ・ハワイなどの熱帯地方や地中海東部のイスラエルにおいて重要な水産資源であり、上述した食性上の特性から低蛋白質餌料による低コストでの養殖の可能性が検討され、各地で増養殖に対する研究がさかんに行われている。本邦でもアイゴ科魚類は沖縄県では水産上重要な有用種である。一方、本邦温帯域では藻食性魚類の採餌活動が天然藻場の衰退に深く係わるとともに、藻場造成や海藻養殖の成否にも大きな影響力をもつことが近年指摘されており、その原因種の一つとしてアイゴが注目されている。実際、本種がコンブ目とヒバマタ目の大型褐藻類を採食することは、野外での行動観察や水槽内での採餌実験において確認されている。しかし、自然条件下での本種の食性については極めて断片的な知見が散見されるにすぎず、定量的に調査された報告は見あたらない。
著者
若菜 勇 佐野 修 新井 章吾 羽生田 岳昭 副島 顕子 植田 邦彦 横浜 康継
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.51, pp.517, 2004

淡水緑藻の一種マリモは,環境省のレッドデータブックで絶滅危惧I類に指定される絶滅危惧種で,日本では十数湖沼に分布しているといわれている。しかし,生育実態はその多くで明らかではなかったため,過去にマリモの生育が知られていた国内の湖沼のすべてで潜水調査を行い,生育状況と生育環境の現状を2000年に取りまとめた(第47回日本生態学会大会講演要旨集,p.241)。その中で,絶滅危惧リスクを評価する基準や方法について検討したが,新規に生育が確認された阿寒パンケ湖(北海道),西湖(山梨県),琵琶湖(滋賀県)ではマリモの生育に関する文献資料がなく,また調査も1度しか行うことができなかったため,個体群や生育環境の変化を過去のそれと比較しないまま評価せざるを得なかった。一方で2000年以降,阿寒ペンケ湖(北海道)ならびに小川原湖(青森県)でも新たにマリモの生育が確認されたことから,今回は,過去の生育状況に関する記録のないチミケップ湖を加えた6湖沼で複数回の調査を実施して,個体群や生育環境の継時的な変化を絶滅危惧リスクの評価に反映させるとともに,より客観的な評価ができるよう評価基準についても見直しを行った。その結果,マリモの生育面積や生育量が著しく減少している達古武沼(北海道)および左京沼・市柳沼・田面木沼(青森県)の危急度は極めて高いことが改めて示された。また、1970年代はじめから人工マリモの原料として浮遊性のマリモが採取されているシラルトロ湖(北海道)では,1990年代半ばに47-70tの現存量(湿重量)があったと推定された。同湖における年間採取量は2-2.5tで,これはこの推定現存量の3-5%に相当する。補償深度の推算結果から判断して,現在のシラルトロ湖における資源量の回復はほとんど期待できず,同湖においては採取圧が危急度を上昇させる主要因になっている実態が明らかになった。
著者
中山 恭彦 新井 章吾
出版者
日本藻類学会
雑誌
藻類 (ISSN:00381578)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.105-112, 1999-07-10
参考文献数
24
被引用文献数
16