著者
横田 絵理
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1-2, pp.51-68, 2000-03-31 (Released:2019-03-31)

本論文の目的は,日本企業における成果主義への報酬システムへの変化と業績測定・評価尺度の変更が,そのマネジメント・コントロールに対し,どのような意味を持つかについて考察することにある.成果主義への動きは,一見,日本企業のマネジメント・コントロールがあたかも米国テキストに示されている仕組みへの変化を意味しているように見える.しかし,米国マネジメント・コントロールのプロセスの本質は,株主利益最大化を実現させるためのしくみであるのに対して,日本企業のマネジメント・コントロールは,変更後も,株主利益最大化を徹底させるためのものとは必ずしもいえない.むしろ,社員全体の意識変革のための施策としてなされている.また,マネジメント・コントロール・プロセスのうち,業績測定・評価尺度の変更を報酬制度の変更と同時に行なうことで,業績測定・評価尺度の変更も,マネジャーの意思決定情報の変更というよりもむしろ,企業としてマネジャーに求めている行動が変化していること,そして,企業全体がマネジャーに期待している成果も変化していることを明確に表わすことになる.事例に取り上げた3企業ではいずれも報酬システムを変更したとほぼ同時に,業績測定尺度の変更を行なっていた.事例企業では,直面している不況やビジネスモデルの変更という事情から,成果主義にもとついた報酬システムをとりいれた.同時に,さまざまな理由から業績測定評価尺度が導入された.マネジメント・コントロールの2分割構造をなしていた2つのシステムをリンクさせたことによって,日本企業はマネジャーや社員に対する企業としての期待行動が大きく変わっていることを示し,意識変革を促したのであった.
著者
横田 絵理 乙政 佐
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.125-138, 2016

管理会計研究の進展によって,新たに管理会計技法が発掘・開発される一方,マネジメント・コントロールのとらえ方も拡張されている。本研究では,近年のわが国の管理会計研究を対象とした文献分析を通じて,マネジメント・コントロールの主要なフレームワークと,管理会計研究技法との対応関係の現状を明らかにした上で,今後の課題を提示する。
著者
大西 靖 横田 絵理
出版者
公益財団法人 牧誠財団
雑誌
メルコ管理会計研究 (ISSN:18827225)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.35-48, 2022 (Released:2023-03-07)
参考文献数
33

企業のCSR業績を測定するためには,多様なCSR課題の重要性を評価して,CSR業績指標を設定する必要がある。本研究では,CSR業績測定に関する実務を明らかにするために,不確実な制度的環境における制度的同型化という現象に注目し,住宅建築企業の事例を分析した。CSR業績の重要性評価および個別のCSR指標の設定に関する事例分析を行った結果,制度的同型化の程度,およびCSR業績指標と具体的なCSR活動の結合度を明らかにした。
著者
横田 絵理
出版者
日本管理会計学会
雑誌
管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌 (ISSN:09187863)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1-2, pp.55-66, 2005-03-31 (Released:2019-03-31)

日本企業が米国から紹介されたマネジメント理論を導入する際に困難が伴うことを踏まえ,日本企業のマネジメントコントロールがもつコンテクストとはいかなるものであり,どのように変化しようとしているかを質問紙調査,インタビュー調査,事例研究などから仮説探索的に検討した.結果として,従来,長期的な心理的契約を構築することに寄与してきた人事管理システムの変化により,マネジメントコントロールの2分割構造は変わりつつある.業績評価システムは,両者をつなぐ役割を果たし,新しいコンテクストの移行に影響を与えることもできよう.
著者
廣本 敏郎 尾畑 裕 挽 文子 横田 絵理 木村 彰吾 中川 優 澤邉 紀生 伊藤 克容 諸藤 裕美 片岡 洋人 藤野 雅史 鳥居 宏史 河田 信 西村 優子 河田 信 西村 優子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では組織コンテクスを重視する管理会計研究を行い、日本的管理会計は自律的組織を前提とする学習と創造の経営システムに組み込まれていること、市場志向のイノベーションに対する従業員のコミットメントを強化するシステムであること、カレントな業績の向上を目指すだけでなく適切な組織文化・風土作りと密接に関連していることなどを明らかにした。更に、管理会計は企業のミクロ・マクロ・ループを適切に形成する経営システムの中核的システムであるという新たな命題を提示した。