著者
中川 優梨花 飯野 由梨 斉藤 真一 小林 万里 玉手 英利
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

ゴマフアザラシ (Phoca largha)の配偶システムは,一夫一妻型であるとされている.しかし,配偶ペアがどの程度安定して維持されるのか(pair-bond),ペア外繁殖がどの程度起こるのか (mating fidelity)など,配偶行動と実際の繁殖成功度の関連については,観察・遺伝データ共に十分な知見が得られてはいない.そのため本研究では,長期個体観察が可能である飼育集団を対象とし,主に遺伝学的手法を用いて繁殖履歴の調査を行った.また,副次的な課題として飼育個体・集団の遺伝的多様度を測定し,野生集団との比較も行った. 研究に用いた個体は,鶴岡市立加茂水族館と城崎マリンワールドの飼育個体 (母獣・成熟メス計 5個体,父獣候補 6個体,仔 16個体 )である.比較を行う野生個体は,計 30個体 (礼文,羅臼,納沙布各 10個体 )である.体毛 (産毛を含む )・組織から DNAを抽出し,近縁種由来 microsatelliteマーカー5座位 (Han et al., 2010),種特異的 3座位 (小林,2011)を用いて遺伝子型を決定した.得られた遺伝子型から飼育個体の血縁判定を行い,個体の繁殖成功を推定,mating fidelityの評価を行った.その後,ヘテロ接合度・血縁度・近交係数の算出を行い,遺伝的多様性の評価を行った. その結果,特定の個体が繁殖を独占したこと,配偶ペア間で pair-bondが維持されていた可能性が示された.鰭脚類は,集団間で行動に差異が生じている種も少なくない.また,成熟オスは互いに威嚇しあい,少数が繁殖に有利な機会を得るとされる.そのため,成熟個体が同所飼育された場合には優位劣位の関係が生じ,特定の個体が繁殖に関して有利となった可能性が考えられる.しかし,メスは優位オスを必ずしも配偶相手に選ばない可能性も示唆されている (Flatz et al., 2012).今後,さらなる観察データ等の蓄積が必要と考えている.
著者
高澤 円 須澤 満 奥脇 淳夫 中川 優子 永嶋 康夫 笹森 斉 笹森 典雄
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.602-607, 2015 (Released:2015-12-22)
参考文献数
12

目的:血管迷走神経反応(vaso-vagal reaction:以下,VVR)は,採血副作用のなかでは発症頻度が高いため,採血現場では万全な予防対策や適正な事後処置が求められる.今回,我々は,当健診センターで経験したVVR症例の現状を調査した.方法:2012年12月~2014年9月の期間中,当施設で採血を行った男性41,076人(45.7±11.3歳),女性22,217人(44.0±12.3歳)のうち,VVRを発症した男性29人(34.8±10.2歳),女性18人(33.4±11.8歳)を対象とし,年齢,性差,BMI,睡眠時間,VVR重症度,回復までの対応について調査した.結果:29歳以下の若年層で発症したVVRは19例(発症頻度0.30%)であった.また,VVRは女性や低体重者に多く発症し,睡眠時間が短い受診者がリスクとして認められた.VVR重症度は,軽症例が多かったため,回復までの対応は安静臥床・下肢拳上で改善が可能であった.結論:VVR発症低減に向け採血環境の整備は重要であり,さらに,睡眠不足を含む高リスク群の受診者には特に注意を払い,臥床採血を勧め,積極的に不安を取り除くような声掛けが必要である.
著者
中川 優樹 石田 貴正 平野 晃昭 中村 納
出版者
工学院大学
雑誌
工学院大学研究報告 (ISSN:03685098)
巻号頁・発行日
no.111, pp.85-90, 2011-10

This paper considers a highly accurate extracting method for facial area and facial parts from a natural background based on moving and color information. To obtain facial parts, Q-element in the YIQ color model and Quesi-chrome (Qc) in the modefied HSV color model are mainly used. In our previous method, more than 90% of extracting accracy of facial areas was obtained. However, there still remain problems to be solved such as extraction accuracy and the evaluation of the facial area extracted. In this system a robust extraction system is proposed. From the computer simulation using 14,179 images, 97.10% for facial area and using 3,562 images, 92.70% for the mouth and 89.80% for the eyes are correctly extracted, respectively.
著者
村川 猛彦 遠藤 淳一 松尾 和展 中川 優
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.126-131, 2012-05-20 (Released:2012-07-31)
参考文献数
8

データの格納および管理の手段として,RDBに代わり,高速に大量のデータを処理でき,分散化の容易なNoSQLデータベースが用いられてきている.しかしデータ構造や操作言語の違いから,システム移行は容易ではない.そこで本研究では,SQL文を入力にとり,等価なNoSQLの問い合わせ文を出力する変換プログラムを作成した.対応するNoSQLはMongoDBとHBaseとし,実装においてSQL文の解析および言語間のコード断片の対応付けを行った.評価実験の結果,32例のSQL文のうち,13例でMongoDB,9例でHBaseの問い合わせ文を生成できた.
著者
中川 優里 泉井 透 伊勢川 暁 荒井 健太郎 其田 雅徳 成田 雅彦 小木 哲朗
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.825-833, 2012-04-01

高度情報通信社会の進展に伴い,購買情報や行動履歴などの個人に関わる情報は,日々膨大に生み出され,社会の様々な場所に分散して記録されている.これらの情報は,マーケティング等に用いられるなど,企業にとって大きな興味の対象となる一方で,情報を生み出している個人がこれらの情報を把握し,一元的に管理することは困難であり,また,企業に対して自分の思いどおりに自分の情報を利用させて対価を得るといった運用手段もない.本論文では,これらの課題を解決するために,より重要性を増してきた個人に関わる情報を日々生成する個人が,自身の情報を自分自身で利用し,そして,その情報を利用したい第三者に適切な対価と引き換えに利用させることを実現するためのフレームワークを提案する.そして,個人に関わる情報の中でも,運用になじみやすい購買情報に着目し,これらの課題に対する解決案を提示し,その実現性を検証する.
著者
渡上 将治 村川 猛彦 宇都宮 啓吾 中川 優
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.189-194, 2010-05-15
参考文献数
6
被引用文献数
1

筆者らがこれまでに構築してきた聖教書誌情報全文検索システムは,サーバに接続して使用する必要があるため,山奥などでは利用できないという問題点があった.そこで,インターネット環境に依存しない,1台のノートPC上のみで動作するスタンドアロンのシステムの構築を行った.サーバ部のOSをLinuxからWindowsに変更したが,対象データと全文検索エンジンは同じものを使用し,従来のシステムに存在した機能に加えて,新たなデータの追加や,各聖教に対するコメントを残すことができる機能を実装した.本システムと従来のシステムとで検索結果が同じであり,検索時間に関しても2秒以内で結果が表示されることを確認した.
著者
中川 優奈 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.133-143, 2017
被引用文献数
4

近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1 kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.
著者
中川 優奈 三上 かつら 三上 修
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.133-143, 2017 (Released:2017-11-16)
参考文献数
31
被引用文献数
4

近年,都市の鳥類多様性に関する注目が高まってきている.河川は鳥類の群集構造に大きな影響を与えうる環境であるにもかかわらず,都市の鳥類多様性にどのような影響を与えるのか,定量的に評価された例は少ない.そこで本研究では,函館市内を流れる亀田川において,上流から下流にかけて,およそ1 kmごとに河川付近に調査地点を設定し,それぞれの地点で見られる鳥の種数と個体数を,繁殖期と越冬期の2つの時期で調査した.ここから,上流下流のどこで種数が多いのか,それらが季節によって異なるのかを検証した.調査の結果,河川沿いと住宅地では,繁殖期,越冬期ともに,河川沿いの方が有意に種数が多かった.このことは亀田川のような河川の存在が都市の鳥類の種の多様性を高めていることを示している.河川沿いにおける種数は,繁殖期には上流ほど種数が多いのに対し,越冬期では逆に下流の方で種数が多かった.これは繁殖期にはカッコウをはじめとした山に近い上流側の環境で繁殖する鳥が多く見られたのに対し,冬季はカモ類が流れの緩やかな下流の環境を利用したためと考えられた.このような種数の多さが季節によって逆転するということは,面積の影響が強くでる孤立した緑地と河川では都市の生物多様性に与える影響が異なっている可能性を示している.
著者
中川 優里 皆木 沙織 其田 雅徳 加藤 由花
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.11, pp.1-7, 2009-09-03
参考文献数
10

ユーザの滞在する場によって,提供されるサービスの内容が異なる P2P モバイル音楽共有サービス JAMS の研究を進めている.これまで,音楽ファイルのキャッシュを利用した配信方式を検討してきたが,ノードの参加離脱が頻繁に発生する環境への適用が困難であるという問題があった.本稿では,自ノードを起点として柔軟にキャッシュ配送木を構築する手法を提案し,この問題の解決を目指す.We have been undertaking a research on JAMS (JAMais vu System), a music delivery system, that provides different kind of service according to location where users stay. So far, a cache management scheme have been focused on JAMS so as to provide music files efficiently to individual nodes, however, there are problems that nodes have difficulties of adapting to each location due to their mobilities. In order to overcome this problem, this paper proposes a cache management scheme that copes with their mobilities by centering each node in a network depending upon where it is.
著者
廣本 敏郎 尾畑 裕 挽 文子 横田 絵理 木村 彰吾 中川 優 澤邉 紀生 伊藤 克容 諸藤 裕美 片岡 洋人 藤野 雅史 鳥居 宏史 河田 信 西村 優子 河田 信 西村 優子
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では組織コンテクスを重視する管理会計研究を行い、日本的管理会計は自律的組織を前提とする学習と創造の経営システムに組み込まれていること、市場志向のイノベーションに対する従業員のコミットメントを強化するシステムであること、カレントな業績の向上を目指すだけでなく適切な組織文化・風土作りと密接に関連していることなどを明らかにした。更に、管理会計は企業のミクロ・マクロ・ループを適切に形成する経営システムの中核的システムであるという新たな命題を提示した。