著者
横須賀 俊司
出版者
県立広島大学
雑誌
人間と科学 : 県立広島大学保健福祉学部誌 (ISSN:13463217)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19-31, 2016-03

日本の自立生活運動は,1970 年代に展開されていた障害者運動が80 年代にアメリカの自立生活運動を受容することで発展していったとされる。しかし,1970 年代から1980 年代に向けて,どのような移行があったのかは明らかではない。アメリカ自立生活運動の成果の一つはアテンダントサービスを定着させたことである。したがって,どのような過程を経て,アテンダントサービスが定着していったのかを記述,考察することで,どのようにアメリカ自立生活運動が受容されていったのかを明らかにすることができる。その際,「第9 回車いす市民全国集会・兵庫」を事例にした。この事例を選んだ理由は,アテンダントサービスを実際に導入していったということによる。結論としては,自立生活運動の理念や思想の普及が必ずしも要件になっていないことが明らかになる。原著
著者
横須賀 俊司 松岡 克尚 津田 英二
出版者
県立広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

害者ソーシャルワークを実践していくには、まず、今のソーシャルワーカーが自分自身を自己変革していく必要がある。その次に、ソーシャルワーク理論における現在の到達点である交互作用モデルを拠り所にしながら、人と環境という二元論的とらえ方を改め、人と環境を一元論的にとらえていくことが求められる。そのために、障害者の身体を交互作用が生じる場としてとらえていかなければならない。さらに、これまでとは異なるオルタナティブな障害者ソーシャルワーク専門職を実現するために、科学化・アカデミックな理論を必ずしも求めるのではなく、障害者の経験知に基づく活動を支えていき、ソーシャルワーカー自身が相対化できる視点や知識を形成していかなければならないのである。
著者
横須賀 俊司
出版者
鳥取大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本年度も昨年度に引き続き、男性頸随損傷者に対して聞き取り調査を行いライフヒストリーを作成していった。その中で明らかになったことは、当初の仮説とは異なるものであった。当初の仮説としては、性機能障害のある男性頸随損傷者は性行動に対して消極的であり、セックス(その中でも特に性交)に対してどちらかというと否定的な意味づけをしているのではないかというものであった。しかし、聞き取りを行った5人の男性頸随損傷者の全員がかなり積極的な性行動をとっていた。健常者の性行動よりもかなり活発に性行動をとっていると思われる人もいた。性交に対して必ずしも否定的な意味づけを意味づけをしているわけでもなかった。それよりは、むしろ、できないことは仕方がないと受け止めて、その状況の中でどのようにやっていくかを志向しているようであったといえる。このように仮説を裏切るものであったが、これを一般化して論じるわけにはいかない。まず、調査対象の人数が少ないという点があげられる。それに加えて、対象者の偏りをあざけるを得ない。性のようなプライベートなことをインタビューすることを誰でもが引き受けてくれるわけではない。そのため、知り合いを伝っていく方法にならざるを得ない。今回のインタビューでもその方法がとられた。その結果、障害者団体の活動や障害者運動に参加しているという人たちばかりであった。ある程度活発に社会参加している人たちであったからこそ、性行動に対して積極的であったり、否定的意味づけをしていないということも考えられるところである。したがって、今後の研究課題としては、社会参加をあまりしていないような男性頸随損傷者にも聞き取りを行い、その人たちがどのような状況にあるのかを明らかにしていく必要がある。それを比較検討していくことで研究を豊かなものにしていくことができるであろう。