著者
前田 麻起子 崎浜 靖子 福士 幸治 橋床 泰之
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第50回日本植物生理学会年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.0884, 2009 (Released:2009-10-23)

含窒素色素であるベタレインは植物四大色素の一つであり、ベタシアニン(赤)とベタキサンチン(黄)がある。ベタレインの分布はアカザ科やヒユ科など一部の植物に限られており、赤系フラボノイドのアントシアニンとは排他的に存在する。アントシアニンを含むフラボノイドは、活性酸素及び活性窒素消去能を持ち、植物細胞においても抗酸化機能を有していることが報告されている。一方、ベタレインの生理機能に関する報告は殆どない。そこで本研究では、ベタレインの植物細胞における機能解明の一環として、その抗酸化能を検討した。 赤ビート(Beta vulgaris L.)根から主要色素2成分(BBx、BBc)を分画した。各々の吸収極大波長は480 nm、538 nmに見られ、光吸収特性がベタキサンチン及びベタシアニンにそれぞれ一致した。活性窒素の一種である一酸化窒素(NO)及びペルオキシナイトライト(ONOO-)をBBx、BBcに対して反応させると、NO添加による変化は見られなかったが、ONOO-添加においてはBBx、BBcの顕著な退色が観察された。この退色反応はONOO-の添加量に依存しており、ONOO-スカべンジャーであるグルタチオンによって抑制された。以上の結果から、ベタレインがONOO-消去能を持つと判断した。H2O2等の活性酸素種との反応も併せて、ベタレイン抗酸化能を考察する。
著者
橋床 泰之 原口 昭 小池 孝良 波多野 隆介 玉井 裕 宮本 敏澄 堀内 淳一 宮本 敏澄
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2008

寒冷地の森林帯では窒素供給源が不明である。この「窒素ミッシングリンク」と呼ばれる「謎」を解明するため,東シベリア・永久凍土帯のグイマツ林床と北欧森林限界帯のスプールス林あるいはカンパ林で現地調査をおこない,土壌が持つ窒素固定能を探った。現地土壌微生物群集は土壌環境を反映した条件下で強いアセチレン還元を示した。16S rDNAを標的としたDGGE菌相解析では,Clostridium属細菌およびDugnella属細菌(γ-Proteobacteria綱)の活動が示唆され,植生によって主要な機能性菌相が大きく異なった。森林限界付近の森林土壌ではアセチレン還元力が小さく,逆に森林のない亜北極ツンドラ土壌で高いことが分かった。森林限界に近い北方林では,生態系全体の物質循環スケールが土壌単生窒素固定細菌による特徴的アセチレン還元能を制御し,ピースや菌根菌を系全体でのより協働的な窒素固定と樹木への効率的窒素供給が行われていることが強く示唆された。