著者
松川 周 橋本 保彦
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.307-312, 1995-03-20

Q1 ウィーニングとは? ウィーニング(weaning)とは,もともと“離乳あるいは離乳させること”であり,機械的人工換気を受けている患者の換気条件を変えていって最終的に自発換気に移行させる過程が,乳児の離乳の過程を連想させることから,患者が人工呼吸器から離脱していく過程を“ウィーニング”と呼びならわすようになった.しかし,ここで注意しなければならないのは,乳児の離乳が時期が来なければ開始できないように,何らかの機械的人工換気の補助を受けている患者を人工呼吸器から離脱(ウィーニング)させる場合も,それなりの条件が整わなければ不可能な点である. 患者が機械的人工換気を必要とするのにはそれぞれに理由・原因があり,根本原因が解決されていなければ人工呼吸器からの離脱の試みは患者にとって侵襲そのものになってしまう.われわれはしばしば“人工呼吸から離脱する”あるいは“ウィーニングを図る”といった表現をしがちだが,より正確には“患者の状態が改善して機械的人工換気を必要とする度合いが少なくなるのを見定めて,換気条件をより自発換気に近づけていく”のがウィーニングであるといってもよいであろう.さらに踏み込んでいえば,患者が人工換気を必要とする要因を1つ1つ無くしていく治療過程そのものがウィーニングであるともいえる.
著者
橋本 保 初島 住彦
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.41-44, 1991-12

鹿児島県の標高100mにも達しない鶴田ダムの下方(南側)で大平豊氏が採集されたランである。Neottia (サカネラン属)の新種と認め,ここに発表する。本種の蘂柱の形を観察すると,花期には鈍三角形の柱頭裂片二っ(2片をあわせると,中央に凹みのある逆梯形に見える)と楕円形の小嘴体が共に直立し,葯はやや後方に反り,葯の下には短いが明瞭な花糸が,とくに発達初期の花で認められる。これらの形質のうち,花糸の存在はChen(1979)によればArchineottia属(日本からもA. japonica Furuseが発表されている)の重要な一形質であるというが, Neottia属には柱頭裂片や小嘴体が発達しないという。しかし本種以外の例では,前川(1971)がN. asiatica Ohwi (ヒメムヨウラン)に小嘴体と花糸が共にあることを図示している。これらの事実から考察し,その他の形態が各種類間で類似していることを勘案すると, Chen説による属の概念は再検討する必要があると思われる。属の基準種であり,かつまた類縁が近いと思われるN. nidus-avis (L.)L. C. Rich. (エゾサカネラン,冷温帯性)と比べると,本種は丈が低く,花軸と子房に腺毛があり,唇弁の先の裂片がさらに短い。N. nidus-avisの柱頭裂片は極めて短く,葯は蘂柱の上に直接乗っている(Rasmussen 1982)。中国・四川から発表されたN. brevilabris Tang & Wangは発表された記載や図からみると最もよく似た種類のように思えるが, N. brevilabrisは丈が40cmほどにもなり,花はより小さく(Tang & Wang 1951),柱頭裂片はほぼ円形という(Chen 1979)。日本の代表種であるN. papilligera Shltr. (N. nidus-avis var. manshurica Komarovサカネラン,冷温帯性)も丈は一般に高い。茎と花柄子房には密な腺毛があり,唇弁の先の裂片は細長くて両側に開いているし,柱頭裂片の発達も少ないので明かな別種である。
著者
佐藤 俊 堀之内 節 皆瀬 敦 松川 周 橋本 保彦 星 邦彦
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.203-208, 1996-07-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
7

強制陽圧換気に吸気終末ポーズ(end inspiratory pause; EIP)を付加した時のNondependent zone (NDZ)とDependent zone (DZ)の肺胞内圧を測定した。雑種成犬8頭に麻酔下で気管内挿管後,右下側臥位でFIO21.0,一回換気量20ml・kg-1,換気回数15min-1,PEEP5cmH2Oの条件下に吸気時間(TI)とEIPの組合せをかえて人工換気を行った。左肺下葉(NDZ)と右肺上葉(DZ)のカプセル内圧を測定した。吸気終末肺胞内圧は,TI0.8秒+EIP0秒に比較し,TI2秒+EIP0秒においてDZで有意に上昇した。TI0.8秒+EIP1.2秒では,NDZで有意に低下,DZで有意に上昇した。この結果,NDZ,DZ間の圧較差が減少した。TI0.8秒+EIP1.2秒で,EIP開始時と終了時を比較すると,肺胞内圧はNDZで有意に低下し,DZで有意に上昇した。EIP中に肺胞内圧がNDZでは有意に減衰,DZでは漸増したことから,吸気初期に高圧であった区域から低圧であった区域に肺胞内圧が再分配され,圧分布がより均一になることが確認された。
著者
飯沼 篤 橋本 保 漆﨑 美智遠 阪口 壽一
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.7-15, 2015-01-25 (Released:2015-01-23)
参考文献数
10

酸の作用により室温で容易に分解するアセタール結合を導入した三官能性ポリアセタールポリオールを,ヒドロキシ基を有する種々のビニルエーテル[4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE),2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE),ジエチレングリコールモノビニルエーテル(DEGV),シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル(CHMVE)]をグリセリン存在下で重付加反応させることでそれぞれ合成した.そして,得られた各ポリオールを,2,4-トリレンジイソシアナート(TDI)と120°Cで15時間反応させ,フィルム状に成形された各架橋ポリウレタン(PHBVE-PU,PHEVE-PU,PDEGV-PU,PCHMVE-PUとそれぞれ表記する)をそれぞれ合成した.各ポリウレタンのガラス転移温度(Tg)は,主鎖構造に依存して,PHBVE-PUが-58°C,PHEVE-PUが-41°C,PDEGV-PUが-50°C,PCHMVE-PUが10°Cであった.熱分解温度(Td)は,PHBVE-PUが290°C,PHEVE-PUが274°C,PDEGV-PUが293°C,PCHMVE-PUが312°Cであり,熱的に安定であった.各ポリウレタンの動的粘弾性試験(DMA)においてゴム状平坦領域は,およそ0°C∼150°C付近で観測された.また,HEVEから得られた親水性のポリオールとPHEVE-PUは温度応答性を有していた.各ポリアセタールポリウレタンは,THF/H2O(9/1 v/v)混合溶媒中で塩酸を作用させると,室温にて24時間でアセタール結合が加水分解し,各ポリオールの構造に対応したジオールを生成した.
著者
橋本 保
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-40, 1990-12
被引用文献数
5

Lecanorchis (ムヨウラン属)は小形の腐生ランで,宮城県以南の日本,台湾,およびシッキムからニューギニアにかけて分布が確かめられている。これまで発表された学名は新組合わせと命名上の新名を除き24種5変種であるが,それらのうち11種3変種が日本からのものであった。これらは主として常緑林の林床に生え,個体数が比較的少なく,開花株に出合う例も少なく,花や株の色も目立ち難く,姿も単純で,開花株以外はあたかも樹木のひこ生えが立ち枯れているようにみえる。これらの条件がおそらく主な理由で,これまで本属の分類研究は極めて不充分であった。そこで日本産の材料を主として用い,本属における植物体全体の特徴を含め,花部を解剖して種類の特徴の詳細を明らかにしようと試みた。日本産のLecanorchisをここでは7種6変種認識し,これらの種類への検索表を作り,記載を行った。すでに示した3種類(Hashimoto 1989)を除く,すべての分類群の花部を図解した。またこれらを4節に大別した。唇弁の大脈の数については,これまで注目されたことがなかったが,ここではじめて分類形質としてとりあげた。LecanorchisおよびTrilobae両節の大脈が偶数であることは注目に値する。唇弁の緑の単細胞毛,葯の裂開口周辺の毛などはこれまで分類上の特徴とされたことがなかったが,ここでは種の異同を認識する形質として取り上げた。
著者
平山 良治 小西 達夫 橋本 保
出版者
国立科学博物館
雑誌
筑波実験植物園研究報告 (ISSN:02893568)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.41-51, 1987-12

The relationship between certain infraspecific taxa or morphological variations and soil environments in Viola verecunda of Japan are surveyed. 1. The plants, representing the diagnostic characters of V. verecunda var. vercunda f. verecunda, were found at Rokko-1, Aoi-1 and Kijima-1, inhabit similar environments in vegetational and pedological conditions. 2. V. verecunda var. subaequiloba, was found at Rokko-2, inhabits a similar vegetational condition as the former, but the soil moisture content is very high. 3. The plants, representing the diagnostic characters of V. verecunda var. verecunda f. radicans, were found at Rokko-3 and Aoi-2, inhabit unstable or disturbed soil. The nutrients and natural fertility of soil are poor. The soil of these habitats are too much wet by stagnant water. 4. V. verecunda var. fibrillosa, was found at Kijima-2, inhabits the peat soil where it is low pH values and aquatic conditions.