著者
徳永 幹雄 山中 寛 山本 勝昭 高柳 茂美 橋本 公雄 秦泉寺 尚 岡村 豊太郎 佐々本 稔
出版者
九州大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1992

13名の共同研究者によって、運動・スポーツの短期的・長期的効果について総合的研究を行い、次のような結果を得た。1.感情に及ぼす効果1)婦人のテニス活動での感情は、激しい運動中に最も高まり、その時の感情は乳酸とはマイナス相関、ACTHやベータ・エンドルフィンではプラス相関がみられた。しかし、運動後はその相関は低くなった。2)快的自己ペース走による気分の高揚は運動後少なくとも30分継続した。3)バドミントンの体育授業での感情は授業内容によって異なった。2.心理的能力に及ぼす効果1)国体選手は経験年数や大会参加経験によって心理的競技能力が高められていることが明らかにされた。2)体育系クラブ経験者は、日常生活の心理的対処能力が優れていた。3.生きがい・健康度に及ぼす効果1)世界ベテランズ陸上競技大会の参加選手は、「生きがい」意識レベルが高く、幸福な老年期を迎えていることが推察された。2)身体的活動量が多い高齢者は、精神的健康度も高かった。3)降圧を目的とした高齢者のテニス教室は「生きがい」にも影響した。4.自己効力感・自己概念に及ぼす効果1)体操の授業で学習者の構えが、自己効力感に影響を与えた。2)児童の水泳プログラムで水泳効力感が高まった。3)体育学部学生の自己概念は4年間で有意に変化した。5.精神の安定・集中に及ぼす効果1)大学生や予備校生のストレス症状は運動歴や態度と相関が高かった。2)寒暑耐性と運動経験年数に相関がみられた。3)身体運動が精神的作業能力に良い影響をもたらすことが示唆された。
著者
徳永 幹雄 川崎 晃一 上園 慶子 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.107-120, 1989-03-31

一般公募によって応募された軽症高血圧者11名を対象に, 講義と実技を組み合わせたテニス教室を3カ月間に26回(週2回, 1回90分)実施した。本教室の開始時と終了時に身体面, 医学面.心理面, 生活面から諸検査を実施し, その変化を分析した。得られたおもな結果は, 次のとおりである。1. 身体面では皮下脂肪厚(肩胛骨下部), 体脂肪率の減少と柔軟性の向上が認められた。その他筋力, 瞬発力, バランス, 全身持久性は顕著とはいえないが, 向上傾向がみられた。1日の平均歩行数から活動量をみると, 月別では1.20倍, 曜日別では本教室の実施日は他の曜日の1.41倍に増加し, 1日平均の活動量の増加が認められた。自転車エルゴメーターによる運動負荷時の血圧・脈拍はテニス教室の開始時と終了時で顕著な差は認められなかった。携帯型連続血圧測定装置で測定した運動中の血圧・脈拍の反応は, 高齢者では中年者に比べ血圧が上昇しやすく, また女性は男性より脈拍が早くなった。2. 医学面では血圧に対する作用は有意ではなかったが, 前報告と同様に, 腎機能・肝機能・糖・脂質代謝の指標となる血中変数は著明な改善を示した。また副腎皮質ホルモンであるコーチゾールも有意に増加した。3. 心理面では日常生活での不安, 血圧に対する不安, 競技に対する不安のいずれも減少し, 血圧の自己評価でも45.4%(5名)が下降したことを認め, 不安傾向が減少したものと思われる。健康度検査では身体的愁訴の減少が認められ, 全体的には精神的健康の評価が高くなった。スポーツ行動診断検査では肥満傾向の減少が認められたが, その他には顕著な差は認められなかった。4. 日常生活の変化の評価では便通, 睡眠, 食欲, 健康, 体力ヘの自信, からだの動きについて6〜7割がよくなったことを認めた。また, 精神的安定度, 生活の活気・楽しさでは8割がよくなったことを認め, 家族の励ましや協力のもとに教室への参加が継続されたことが認められた。5. テニス教室への評価では指導のしかた, グループ内の雰囲気や対話に好意的態度がみられ, 「楽しかった」と全員が回答した。ただ, 技術の進展と共に恥ずかしい思いや嫌な思いが若干みられ, 課題が残されるが, 全体的には好意的評価が得られた。