著者
徳永 幹雄 金崎 良三 多々納 秀雄 橋本 公雄 梅田 靖次郎
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.105-114, 1991-02-08

昭和61年度西日本年齢別水泳大会に出場し, 決勝に進出した選手を対象にして, 決勝レース直前の不安とそれに影響する要因を調査した。同時に, ベスト記録にどれくらい近いかを示す実力発揮度を算出した。そして, 試合前の状態不安と実力発揮度の関係, および状態不安および実力発揮度に影響する要因を分析した。その結果を次のように要約することができる。1) 決勝レースの実力発揮度はベスト記録に対して98.44%で, 男女差はみられなかった。実力発揮度の高いのは, 年齢別では小学生, 大会日別では第2目目, 競泳距離別では短距離, 泳法別では個人メドレー, 決勝順位別では上位入賞者であった。その他, 実力発揮度に影響する要因として, スポーツ観, 本大会の状況認知, 体調, 決勝レースの状況認知, 大きな大会の経験, 家庭環境などがあった。2) 決勝レース前の状態不安は36.5点(20〜80点)で, 男女差は認められなかった。状態不安が高いのは, 年齢別では中学生, 大会日別では第1日日, 競泳距離別では中距離, 泳法別では平泳ぎ, 決勝順位別では下位入賞者であった。その他, 状態不安に影響する要因として技能の評価, 性格, 大きな大会への経験, 本大会の状況認知, 決勝レースの状況認知, スポーツ観, 家庭環境などがあった。3) 状態不安と実力発揮度には顕著な関係がみられた。すなわち, 実力発揮度が低いのは, 不安得点が高い者と低い者であり, 実力発揮度の高いのは, 不安得点が中位のすこし不安がある者であった。また, 男女差, 年代差によって実力発揮のための不安の適性レベルは異なるのではないかと推測された。4) 状態不安と競技パフォーマンスの関係を実証した。そして, 状態不安や競技パフォーマンスに影響する要因を分析し, 競技不安モデルを再検討し, その有効性を推察した。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-87, 1987-03-28
被引用文献数
1

全国大会を控えた高校テニス選手を対象にして, 皮膚温バイオフィードバックによるリラクセーション・トレーニングとイメージ・トレーニングを組み合わせたメンタル・トレーニングを10日間実施した。その主な結果を要約すると, 次のとおりである。1. リラクセーション・トレーニングについて 1) 1日に2〜3回のセッションでは第1セッションで最も皮膚温の上昇が顕著であった。2) 10回のうち, 5回目から平均して1℃以上の皮膚温の上昇がみられた。3) 平均皮膚温は第3セッションで上昇していた。4) 個人別にみると各セッションで皮膚温が3℃以上を示す者が6名中5名みられた。残りの1名は2℃以上を示すことはなかった。また, 平均皮膚温が10回のトレーニングの中で半分以上32℃以上を示すものは, 6名中4名であった。5) リラクセーション・トレーニング中に皮膚温と筋電を測定した結果, 皮膚温が上昇し筋電が下降した。2. イメージ・トレーニングについて 1) 全国大会を前にして, 6日間のイメージ・トレーニングを実施することができた。 2) イメージ・トレーニング中に皮膚温の低下傾向がみられた。 3) イメージ・トレーニング中には皮膚温と筋電を測定した結果, 皮膚温が低下した時.筋電は向上した。3. 大会前の状態不安は試合が近づくにしたがって, 認知的不安や身体的不安が高まり, 自信が低下した。4. 試合はダブルスで2勝したが, シングルスで3敗して, 逆転負けであった。しかし.No.1ダブルスはその後の大会で優秀な成績をおさめるまでに成長した。
著者
安永 明智 谷口 幸一 徳永 幹雄
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.173-183, 2002-03-10 (Released:2017-09-27)
被引用文献数
9 6

本研究では,地域の高齢者209名を対象に,QOLの重要な構成要素である主観的幸福感に運動習慣が及ぼす影響について,心理社会的変数を加えて,その関係性を明らかにしていくことが目的であった.以下のような結果が得られた.1)運動習慣は,特に後期高齢者において,社会的自立因子,健康度自己評価,家族サポート,主観的幸福感で有意に肯定的な影響を及ぼすこと.2)運動習慣はADLを維持すること,そしてADLを維持していくことは,健康度自己評価やソーシャルサポートを高め,そのことが主観的幸福感に影響すること.3)これらの結果から,運動習慣が主観的幸福感に及ぼす影響は,ADLやソーシャルサポート,健康度自己評価を通した間接的な影響であることが推察された.なお,本研究は,地方小都市である一地域を対象に実施したものである.したがって,地域的なバイアスが諸変数に及ぼす影響も考えられる.今後,都市部などを含んだ様々な地域を対象に同様な調査を繰り返し,共通性を明らかにしていく必要があるであろう.また,横断的な分析であるために,因果関係までは言及することができなかった.今後は,縦断的な調査方法を用いて,因果関係を明らかにしていくことを課題としたい.
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 千綿 俊機
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.109-114, 1971-10-01 (Released:2017-09-27)

この研究は大学生の体格(身長,体重,ローレル指数),体力(体力診断テスト),性格(Y-G性格検査)の相互関係を明らかにするために行ない,つぎの結果を得た.1. 体格と体力の関係:体型の中間型が体力にすくれ,細長型が劣っていた.身長,体重と体力の間に有意味の関係があることが明らかになつた. 2. 性格と体格の関係: E類型に細長型が多く, Y-G得点では細長型と肥満に近い型には差はなく,中間型に比較し細長型は神経質大で,肥満に近い型は劣等感大であつた.また,外向的な学生は平均型の学生より体重が重かつた.3. 性格と体力の関係:D類型が最も体力がすくれE類型が最も体力の低い学生が多かつた.また,体力の低い学生は体力の高い学生に比較し劣等感大,神経質大,主観的,非協調的,のんきでない,服従的,社会的内向であつた.積極型の学生は消極型の学生より筋力にすくれていた.
著者
金崎 良三 徳永 幹雄 藤島 和孝 岡部 弘道 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.71-85, 1989-03-31
被引用文献数
1

テニス教室に参加した婦人36名を対象にして, 2年間にわたる追跡調査を実施することによって, テニスの継続化をめぐる問題にアプローチしてきた。研究結果は, 以下のように要約される。1. 対象者の基本的特性については, 全員が30代から40代の既婚者であり, 若干の者はパートタイマーとして職業に就いているが, 大部分は専業主婦である。また小学生の子供をもつ者が多いが, ほとんどの者が出産・育児から解放された時期にある。2. 学生時代からテニス教室に参加するまでの過去において, 大部分の老が何らかのスポーツの経験をしている。また, スポーツとかかわりをもつ夫や子供がいる者が極めて多い。3. テニスの継続状況については, (1)長期継続型(教室終了後引き続き継続), (2)中途継続型(教室終了後すぐには実施せず途中から開始して現在も継続), (3)中断継続型(途中で中断の時期があるが現在も継続), (4)中途非継続型(教室終了後引き続き実施していたが途中でドロップアウト)および(5)長期非継続型(教室終了後からずっと実施せず)の5つのパターンがみられた。全体的には(1)〜(3)の継続群が多く, 7割以上を占めている。特に長期継続群は, 練習コートが自宅から極めて近い所にあり,試合に出場した経験のある者が多い傾向がみられる。4. テニスヘの社会化パターンについては, 学校卒業後からテニス教室参加以前のスポーツ経験の違いから, (1)テニスを初めて開始した者, (2)スポーツ経験はあるがテニスは初めての者, (3)テニスの経験があり教室では再開または継続的に実施する者, という3つのパターンがあり, このうち(3)のパターンに属する者が多く半数を占めている。これらのパターンと教室終了後のテニスの継続パターンとの間には, 特徴的な関連性は認められなかった。5. テニス継続化の要因としては, (1)専業主婦がほとんどであり, 仕事をもっていてもパートタイマーであることから時間的余裕がある, (2)利用できるコートが極めて身近な所にある, (3)自主グループやクラブ, スクールなど練習仲間がいる, (4)テニス関連支出が大きな経済的負担となっていない, (5)テニスの技能の向上が認められる, (6)家族が重要な他者として機能している, (7)テニスの行動意図や重要な他者に対する規範信念が高い。(8)スポーツ意識に問題がない, などが指摘できる。6. テニス継続の目的に関しては, (1)友人との交流, (2)ストレス解消, (3)健康・体調の維持, (4)肥満防止・体重調整, (5)技能の向上・試合出場の5つがあげられるが, 特に「上手になりたい」, 「試合に出場したい, 勝ちたい」など(5)に関連する内容をあげた者が目立つ。7. テニス非継続の要因としては, (1)仕事の都合, (2)性的役割の問題(出産・育児), (3)社会的役割の問題(地域の役員就任), (4)転居による地理的・社会的環境条件の変化, (5)病気・怪我など健康上の理由, (6)指導者・リーダーがいなくなることによるグループの消滅, (7)グループ内の人間関係の問題, (8)テニスの技能が向上しないことによる意欲の低下, などがあげられる。本研究は, その目的がある程度達成されたとはいえ婦人のテニスについての1つの事例研究に過ぎず, したがって以上の結論を一般化することは困難である。今後は.今回の結果を踏まえてさらに対象を拡大するなどして, 数量的, 実証的研究へ発展させたいと思う。(本研究の要旨は, 1988年の第37回九州体育学会にて発表した。)
著者
橋本 公雄 丸野 俊一 徳永 幹雄 西村 秀樹 山本 教人 中島 俊介 杉山 佳生 藤永 博
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、運動・スポーツで経験されるドラマチックな体験が、青少年の生きる力にどのような影響を及ぼしているのかについて、質的および量的側面から検討することを目的とした。ここでは、ドラマチック体験を「練習や試合を通して体験した心に残るよい出来事や悪い出来事を含むエピソード」と定義し、試合場面における、たとえば逆転勝利などの劇的な瞬間だけでなく、普段の練習の過程でもみられる様々なエピソードも含めて捉えることとした。また、生きる力は、ライフスキルの概念と類似しているため、量的側面の分析では、スポーツドラマチック体験の学校生活におけるライフスキルに及ぼす影響を分析した。質的研究は、大学生(一般学生と体育部学生)を対象に、自由記述およびインタビューによって、どのような場面でドラマチックな体験が生じているのか、またその体験が心理、社会、身体、および生活上にどのような影響をもたらしたかを分析した。その結果、ドラマチック体験として、成功体験、失敗体験、試合体験、出会い体験、克服体験、課題遂行体験、役割遂行体験などが抽出され、心理的(自信や意欲)、身体的(技能向上)、社会的(協力や他者への思い)、人生・生活観(将来の見通しや人生観)にポジティブな影響を及ぼし、ドラマチック体験が生きる力に寄与していることが明らかにされた。また、ドラマチック体験尺度(Inventory of Dramatic Experience for Sport : IDES)の開発を試み、「努力の積み重ねへの気づき」「技術向上への気づき」「対人トラブルによる自己反省」の3因子、13項目からなる尺度を作成した。ドラマチック体験(独立変数)と学校生活スキル(従属変数)との関連では、時間的展望、QOL,自己効力感を媒介変数とする共分散構造分析を行い、モデルの検証をした。さらに、本研究では運動・スポーツ活動ばかりではなく、自然体験なども生きる力には関連するものと思われ、グリーンツーリズムや野外キャンプにおけるコミュニケーションに関しての考察を行った。
著者
徳永 幹雄
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-30, 1998
被引用文献数
3

スポーツ選手が試合で実力を発揮するためには試合前1カ月位からの心理的コンディショニングが重要である。そこで,本研究ではスポーツ選手の心理的コンディショニングの指導に役立つ検査法として試合前の心理状態を診断する方法を開発することを目的とした。スポーツクラブ所属者246名を対象に調査を実施し,診断法を開発すると共に,作成された診断法をいくつかのクラブに適用し,その有効性を検討した。おもな結果は,次のとおりである。1.試合前の心理状態を診断する方法として20項目からなる質問用紙を作成して調査を実施し,統計的手法を用いて分析した結果,質問項目の妥当性,テストとしての信頼性が証明され,質問項目は5因子,9尺度に分類することができた。2.作成された「調査票」を用いて,試合前の心理状態を比較した結果,国体強化選手という明確な目標を持っている集団は高得点を示した。また,継続的に調査を実施することによりチーム全体,レギュラー選手,個人の心理状態の変化を分析することができ,試合前の心理的コンディショニングの指導に役立つことが示唆された。3.これらの結果を踏まえ,診断検査用紙としての形式を整え,「試合前の心理状態診断検査(Diagnostic Inventry of Psychological State Before Competition,略してDIPS-B.1)」 を作成した。
著者
徳永 幹雄 上田 真寿美
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.69-73, 2002

40才〜60才未満の女性541名を対象に,運動経験と更年期症状の関係及びテニス実施者,その他の運動 実施者,運動経験なし群の3群による更年期症状の関係を分析した。その結果は,以下のとおりである。 1.30歳代以降に運動経験がある者はない者よりも更年期症状が低かった。 2.運動経験がある者,とくに球技実施者(テニスやバレーボール実施者など)は,「いらだち」「頭痛」及び「心悸亢進」といった症状が低かった。 3.運動の継続が長い者ほど更年期症状が低い傾向であった。4.更年期症状の低かった者は,30歳代および40歳代〜閉経に「適度なきつさ」の運動を60分以 上,週に1〜4回程度している者が多かった。5.テニス実施者は他の種目を実施していた者や運動を実施していなかった者より更年期症状が低い 傾向にあった。とくに,「よくした者」より「まあまあした」と答えた中程度の実施者ほど更年期症状が低いことが明らかされた。 以上のことから,30歳代以降の運動経験は更年期症状の軽減に有効であり,その運動は無理のない程度で約1時間,週に2〜3回が適当であることから,テ ニスを無理なく行うことは更年期症状の軽減につながることが推察された。
著者
橋本 公雄 徳永 幹雄
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.21, pp.53-62, 1999
被引用文献数
1

本研究は,社会人と学生を対象にメンタルヘルスパターン診断検査(Mental health Pattern: MHP)を 作成し,尺度の信頼性と妥当性を検討するため行われた。結果を要約すると,下記に示すとおりである。 1.SCL-4尺度に生活の満足感(QOL項目)などを追加した調査票から,13因子(全分散寄与率:61.3%)を抽出した。 2.心理的ストレス(こだわり,注意散漫),社会的ストレス(対人緊張,対人回避),身体的ストレス(疲労,睡眠・起床障害)からなるSCL尺度と,生 活の満足感からなるQOL尺度の7つの下位尺度(各5項目づつ)でMHP尺度を作成した。 3.MHP尺度の高い信頼性と妥当性が検証された。しかし,生活の満足感の妥当性の検証は本研究では行われなかった。 4.SCL尺度得点とQOL尺度得点のそれぞれのM+0.5SDを基準値とし,「はつらつ型」「ゆうゆう(だ らだら)型」「ふうふう型」「へとへと型」と命名される4つのメンタルヘルスパターンに分類した。 5.メンタルヘルスパターンの出現率は,性差,年代差はなく,「ゆうゆう(だらだら)型」が60%を占め,その他のパターンはそれぞれ10%強を占めた。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 瀧 豊樹
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-51, 1999

各種スポーツ大会に参加した高校生,大学生,社会 人選手及び国民体育大会に参加した選手を対象にして,試合中の心理状態の診断法とその有効性について考察した。 そのおもな結果は次のとおりである。1.10項目から構成される試合中の心理状態診断法の質問項目の妥当性,診断検査としての信頼性及び因子について証明することができた。 2.作成された本検査と精神力の自己評価,実力発揮度,競技成績の関係について項目別及び合計得点の比較を行った結果,すべて有意な関係が認められ本検査の有効性を証明することができた。 3.本検査法と心理的競技能力(DIPCA.2)を比較すると国体選手では有意な関係がみられた。しかし,大学サッカー選手では有意な関係は認められず,本検査と試合前の心理状態(DIPS-B.1)の関係では有意な関係が認められ,心理的競技能力は試合前の心理状態と有意な関係が認められた。 4.関連する3つの診断検査と実力発揮度及び競技成績との関係を考察することができた。 5.以上の結果より,「試合中の心理状態診断検査(Diagnostic Inventory of Psychological State During Competition,略してDIPS-D.2)」を作成した。
著者
村上 貴聡 岩崎 健一 徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.183-190, 2000-02-10

高校テニス部員6名を対象にして, 自律訓練とイメージトレーニングを用いたメンタルトレーニングを週2回, 約3カ月間実施しその効用性を検討した。結果は次のとおりである。1. 心理的競技能力はトレーニング後にすべて向上し, 忍耐力, 勝利意欲, 自己コントロール, リラックス, 集中力, 自信の尺度で1%水準の有意な変化がみられた。決断力および予測力においては10%水準の有意傾向がみられた。また, 総合得点においても顕著な向上が見られた。2. 特性不安はトレーニング後に減少した。トレーニング後にすべての因子で得点が減少し, 勝敗の認知的不安の因子で有意な変化がみられた。また, 有意差はみられなかったが, 動作緊張傾向, 競技意欲の低下, 自信喪失の各因子で不安の減少傾向がみられた。3. 競技状態不安は, トレーニング実施前の大会では試合が近づくにつれて認知的不安, 身体的緊張が高く, 自信が低い状態で出場しているが, トレーニング実施後の大会では大会当日には認知的不安, 身体的緊張が多少高まるが, 自信とともに比較的安定した状態で試合に出場していることがわかった。4. 試合中の実力発輝度では, トレーニング前の試合では自分の実力を発揮できたものが2名であったのに対し, トレーニング後の試合では実力を発揮できたものが5名に増加した。5. 内省報告から, メンタルトレーニングは試合前の睡眠や緊張感の減少, 試合中のリラクセーション, 冷静さ, 落ち着き, 集中力, そして, 試合に自信をもって出場できる心理的に良好な状態を作り出すのに有効に働いたことが推測された。
著者
藤島 和孝 金崎 良三 徳永 幹雄 岡部 弘道
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-105, 1989-03-31
被引用文献数
1

中年婦人を対象とした3か月間のテニス教室終了2年後での体力に関する追跡調査から, 次のような結果を得た。1. テニス教室終了時に減少した体脂肪率は, 同教室終了2年後には, 教室開始時および終了時に比べて有意に増加した。2. 教室終了2年後での背筋力は, 終了時より有意に低下した。3. 教室終了時に増加した立位体前屈および伏臥上体そらしの柔軟性は, 同終了2年後には, 終了時よりそれぞれ減少した。4. 教室終了時に15.6%増加した最大酸素摂取量は, 同終了2年後には7.8%減少したが, 同教室開始時の値を維持した。5. 教室終了時に低下した収縮期および拡張期血圧は, それぞれ終了2年後には, 終了時より上昇し, 教室開始時とほぼ同値を示した。以上の結果, 3か月間のテニスによる身体的効果は, 形態・体力面において, 2年後に減退することを示唆した。
著者
徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.91-102, 2001-03-01

スポーツ選手の心理的競技能力を診断する方法を開発する目的から, 1986年以来, 種々のスポーツ選手を対象に調査を行い, 信頼性, 妥当性を検証し, 評価尺度の開発とシステム化を試みてきた。その主な結果は, つぎのとおりである。1. スポーツ選手の心理的「特性」としての心理的競技能力を診断する方法として52(嘘尺度4項目を含む)の質問項目から構成され, 12尺度及び5因子に分類される調査法である「心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)」を開発した。2. スポーツ選手の心理的「状態」としての心理的競技能力を診断する方法として次の2つの方法を開発した。1) スポーツ選手の試合前の心理状態を診断する方法として20(嘘尺度2項目を含む)の質問項目で構成され, 9尺度及び5因子に分類される調査法である「試合前の心理状態診断検査(DIPS-B.1)」を開発した。2) スポーツ選手の試合中の心理状態を診断する方法として10の質問項目から構成される調査法である「試合中の心理状態診断法(DIPS-D.2)」を開発した。3. スポーツ選手の心理面の指導のために3つの診断検査のシステム化を試みた。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.73-84, 1988-02-20
被引用文献数
1

昭和61年度国民体育大会福岡県選手男子168名, 女子68名を対象にして, スポーツ選手の心理的競技能力の診断法の開発を試みた。おもな結果は, つぎのとおりである。1) 心理的競技能力を表現すると思われる68項目からなる調査票を作成し, 調査を実施した。信頼性係数, 項目分析の結果から3項目を削除し, 65項目について因子分析を行った。その結果, 5因子と6つの下位因子を抽出した。2) 心理的競技能力の因子は, 競技意欲を高める能力(忍耐力, 闘争心, チャレンジ精神, 勝利志向性の下位因子), 精神を安定・集中させる能力(集中力, リラクセーションの下位因子), 自信をもつ能力, 作戦を予測・判断する能力, 協調件の能力と命名された。3) 抽出された各因子は国体選手の講特性と顕著な関係がみられ, 心理的競技能力テストとしての妥当性が推測された。4) 抽出された各因子を代表する簡単な質問又から, 試合中の心理可犬態を評価する方法を作成した。5) 今後, 適切な項目や因子の追加・修正を行い, 中学生から一般社会人に使用できる誇断法を作成しなければならない。
著者
金崎 良三 徳永 幹雄 多々納 秀雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.205-215, 1987-03-28

ゲートボールの実施者および実施者のいる家族を調査することによって, ゲートボールをめぐる問題についてアプローチしてきたた。以下は, 研究結果の要約である。1. ルールの違いにより困ったという経験をもつ者は, 3割強とかなりみられ, 性別では男子, 経験年数別では年数の良い者, 地位・役割別では監督経験者, 審判有資格者に多い。したがって, 仮説(1)「ゲートボールの統括団体の乱立やルールの違いによる混乱がある」はある程度検証された。2. ルールや団体・組繊のあり方については, 全国統一ルールや全国組織としてまとまった方がよいとする意見が多い。この傾向は, 男子, 経験年数の良い者, 監督経験者, 審判有資格者に強い。3. 大会のあり方については, 全国大会を望む者が多いとはいえ全体的には多様な意見がみられた。したがって, 仮説(2)「ゲートボールの実施方法が勝敗を重視するようになり競技志向化してきた」は, 一部にはその傾向が認められるものの今回のデータからは検証されたとはいい難い。なお, 全国大会を望む者は, 男子は農村部, 経験年数の良い者, 監督経験者, 審判有資格者, 女子は監督経験者, 審判有資格者に多くみられた。4. 練習に対する不満, 対人関係や選手の選出で嫌になったことの経験, 審判やクラブ, リーダーに対する不満に関しては, ほとんどないという者が多い。しかし, それほど深刻というほど現実化しているとはいえないが, 嫌になった経験や不満を感じたことのある者が2割から最高4割近くみられ, クロス分析では男女経験年数の良い者と女子の審判有資格者に多かった。また, ゲートボールをやめたいと思ったことのある者は, 非常に少なかった。なお, 嫌になった経験や不満の内容, やめたいと思ったことの理由が具体的に明らかになったが, なかでも対人関係に関することが大きなウェイトを占めていることがわかった。5. ゲートボール継続のための条件としては, 健康であることと仲間との調和・親睦をはかることの2つが圧倒的に多かった。6. ゲートボール実施者のいる家族の調査から, 第1に大部分の家庭は実施者がゲートボールをしやすいように気を配り, 協力していること, 第2にゲートボールを実施するにあたり仕事がときどきおろそかになると評価される者が34%に達すること, 第3にゲートボール中心の生活を送っていると評価される者が2割を越えていること, 第4に家族の誰かがゲートボールを始めることによって迷惑に思ったり困ったりした経験があるという者が2割強いること, などが明らかになった。特に, ゲートボール実施による仕事への影響, 実施者の生活, 家庭への迷惑などについての調査結果から, 仮説(3)「家庭での役割遂行をめぐって問題がある」は, 検証された。7. 家族が指摘するゲートボール実施上の問題としては, 実施者の仕事や家庭での役割の問題に関係したものが多くみられた。最後に, 本調査研究において明らかになった傾向が, ゲートボール特有のものかどうかは他のスポーツの場合と比較しなければわからないが, 少なくともゲートボールをめぐる問題として従来指摘されてきたことのいくつかが実証的に示されたと思う。また, 自由記述式の調査によって多くの具体的で詳細な問題点が浮上してきた。これらの点についても, さらに仮説を構成し, 検証を加えていく必要があろう。この点は, 今後の課題としたい。
著者
安永 明智 谷口 幸一 徳永 幹雄
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.173-183, 2002
被引用文献数
6 6

本研究では,地域の高齢者209名を対象に,QOLの重要な構成要素である主観的幸福感に運動習慣が及ぼす影響について,心理社会的変数を加えて,その関係性を明らかにしていくことが目的であった.以下のような結果が得られた.1)運動習慣は,特に後期高齢者において,社会的自立因子,健康度自己評価,家族サポート,主観的幸福感で有意に肯定的な影響を及ぼすこと.2)運動習慣はADLを維持すること,そしてADLを維持していくことは,健康度自己評価やソーシャルサポートを高め,そのことが主観的幸福感に影響すること.3)これらの結果から,運動習慣が主観的幸福感に及ぼす影響は,ADLやソーシャルサポート,健康度自己評価を通した間接的な影響であることが推察された.なお,本研究は,地方小都市である一地域を対象に実施したものである.したがって,地域的なバイアスが諸変数に及ぼす影響も考えられる.今後,都市部などを含んだ様々な地域を対象に同様な調査を繰り返し,共通性を明らかにしていく必要があるであろう.また,横断的な分析であるために,因果関係までは言及することができなかった.今後は,縦断的な調査方法を用いて,因果関係を明らかにしていくことを課題としたい.
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 高柳 茂美
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.65-73, 1994

第44回全日本大学準硬式野球大会の予選を兼ねたの九州選手権大会に参加した25チーム, 511名を対象にして, 特性としての心理的競技能力と状態としての心理的競技能力を調査した。その結果を要約すると次のとおりである。1.特性としての心理的競技能力は, 学年, 年令, 経験年数, 県や全国レベルの大会への参加回数, 競技成績, ポジションなどによって異なった。2.試合中の心理状態を大戦チームと比較すると, 勝ちチームほど高得点を示す場合が多かった。しかし, 負けチームが高得点を示す場合もみられた。また, 1回戦から決勝戦までの全選手の平均得点は, 1・2回戦では低く, 決勝戦になるほど高得点を示した。さらに, チームごとの平均値をみると, 1・2回戦での負けチームの得点は低く, 上位チームの得点は次第に高得点になることが示された。3.特性と状態の相関は, 1〜3回戦までは有意であった。しかし, 5〜8位決定戦と決勝戦での相関は低くなった。3回戦での試合中の心理状態に関与する特性としての心理的競技能力をみたが, 有意性のある尺度はみられなかった。
著者
徳永 幹雄
出版者
福岡医療福祉大学
雑誌
第一福祉大学紀要 (ISSN:13490613)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.65-78, 2005

福岡県立スポーツ科学情報センターのスポーツ医事・健康体力相談事業を受検したスポーツ選手で、「心理的競技能力診断検査」の測定結果が2回以上ある者、男子1,081名、女子458名を対象にして、心理的競技能力の変化からスポーツ継続の心理的効果を考察し、次のような結果を得た。1.心理的競技能力の性差をみると、男子は女子に比較して忍耐力、闘争心、自己コントロール、リラックス、自信、決断力、予測力、判断力で優れ、女子は自己実現意欲で優れていた。特に自信、決断力、予測力、判断力で顕著な性差がみられた。2.性別に初回と最終回の変化をみると、男女とも優れた結果に変化し、特に、男女とも予測力、判断力、自信、決断力で顕著な変化がみられた。3.測定間隔の違いによる変化の違いは、以下のとおりである。(1)対象者全体では半年以内の測定間隔では顕著な変化はみられず、半年以上の測定間隔では顕著な変化を示し、男女とも予測力、判断力、自信、自己実現意欲で顕著な変化がみられた。(2)高校生だけを対象とすると、対象者全体と同様に、半年以内の測定間隔では顕著な変化はみられず、半年以上の測定間隔から顕著な変化がみられた。特に、予測力、判断力、自信、自己実現意欲で顕著な変化がみられた。(3)高校生の競技種目ごとでは、陸上競技では男女とも自己実現意欲、野球とサッカー・ラグビーでは自信、決断力、予測力、判断力、水泳競技では判断力、自信、バレーボール・バスケットボールでは男子は闘争心、忍耐力、女子は予測力、判断力の変化がみられ、経験するスポーツ種目によって何らかの違いがあるのではないかと推測された。(4)競技レベル別では、他の分析と同様に半年以内の測定間隔では顕著な変化はみられなかった。国際・全国レベルでは対象数が少なかったが、共通傾向として自己実現意欲の変化がみられた。九州・県レベルでは自信、予測力、判断力、自己実現意欲、協調性で、地区・市町村レベルでは自信、決断力、予測力、判断力で顕著な変化がみられた。4.これらの分析から、スポーツの継続の影響は自信、決断力、予測力、判断力に顕著な影響を与えることが推測された。