著者
徳永 幹雄 金崎 良三 多々納 秀雄 橋本 公雄 梅田 靖次郎
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.105-114, 1991-02-08

昭和61年度西日本年齢別水泳大会に出場し, 決勝に進出した選手を対象にして, 決勝レース直前の不安とそれに影響する要因を調査した。同時に, ベスト記録にどれくらい近いかを示す実力発揮度を算出した。そして, 試合前の状態不安と実力発揮度の関係, および状態不安および実力発揮度に影響する要因を分析した。その結果を次のように要約することができる。1) 決勝レースの実力発揮度はベスト記録に対して98.44%で, 男女差はみられなかった。実力発揮度の高いのは, 年齢別では小学生, 大会日別では第2目目, 競泳距離別では短距離, 泳法別では個人メドレー, 決勝順位別では上位入賞者であった。その他, 実力発揮度に影響する要因として, スポーツ観, 本大会の状況認知, 体調, 決勝レースの状況認知, 大きな大会の経験, 家庭環境などがあった。2) 決勝レース前の状態不安は36.5点(20〜80点)で, 男女差は認められなかった。状態不安が高いのは, 年齢別では中学生, 大会日別では第1日日, 競泳距離別では中距離, 泳法別では平泳ぎ, 決勝順位別では下位入賞者であった。その他, 状態不安に影響する要因として技能の評価, 性格, 大きな大会への経験, 本大会の状況認知, 決勝レースの状況認知, スポーツ観, 家庭環境などがあった。3) 状態不安と実力発揮度には顕著な関係がみられた。すなわち, 実力発揮度が低いのは, 不安得点が高い者と低い者であり, 実力発揮度の高いのは, 不安得点が中位のすこし不安がある者であった。また, 男女差, 年代差によって実力発揮のための不安の適性レベルは異なるのではないかと推測された。4) 状態不安と競技パフォーマンスの関係を実証した。そして, 状態不安や競技パフォーマンスに影響する要因を分析し, 競技不安モデルを再検討し, その有効性を推察した。
著者
藤野 武彦 村田 晃 宇都宮 弘子 森田 ケイ 武谷 溶
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.59-64, 1983-03-30
被引用文献数
1

Effects of ascorbic acid on common cold and influenza were studied in 352 young students from 1978 to 1980. Ascorbic acid was administered by the following manner ; 6g per day (1g every hour) on 1st day, 4g per day (1 g at each meal and before sleep) on 2nd to 4th day, 2g per day (1g in the morning and the evening) on 5th to 7th day, Ascorbic acid values in plasma were measured in the part of subjects during and after cold, and in the healthy students. A question, whether the ascorbic acid was effective or not, was asked to the subjects after the treatment. The answers of "effective", "fairly effective" and "not effective" were 59.6%, 31.6% and 8.8%, respectively in 1978 to 1979, 47.1%, 42.6%, and 10.3% in 1979 to 1980. Plasma level of ascorbic acid was lower in the subjects during the cold than in the healthy students who did not have a cold for 4 years. The seven of subjects showed the lower level of ascorbic acid during cold than after recovery. These results are suggestive of effectiveness of ascorbic acid on common cold.
著者
橋本 真理子 幾竹 浩子 堀田 昇
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.19, pp.67-71, 1997

本研究は,高等学校正課体育授業の中で,自己の健康や体力についての意識を持たせながら,有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて行わせることにより,体脂肪量を減少させ,かつ筋力,筋持久力,全身持久力などの体力向上の面からその効果を検討することであった。実験は,MとAの2高等学校3年生女子生徒51名の授業受講者を対象に行い,前後に,オリエンテーション,形態計測,体力測定を行い,Body Mass Index(BMI : 体重(kg)/身長(m)2)をもとに,BMIが23.0以上の過体重の生徒(n=12)を被験者とした。実験は,2校で同一の有酸素運動,筋力トレーニングプログラムを処方し,20時間(週3時間・約2ヵ月間)実施した。形態についてはすべての値において減少が認められた。体重が減少した被験者は,全体の92%であり,体脂肪量については,全員が減少した。また,BMIについては,12名中5名の被験者が正常域に移行し,なおかつ9名の被験者にLean Body Mass (LBM : 体重(kg)−体重(kg)×体脂肪率(%))の増加がみられた。体力面では,脚筋力,筋持久力,全身持久力ともに向上した。以上の結果から,有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせたプログラムは,体脂肪量を減少させ,体力向上を計ることに有効であった。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.79-87, 1987-03-28
被引用文献数
1

全国大会を控えた高校テニス選手を対象にして, 皮膚温バイオフィードバックによるリラクセーション・トレーニングとイメージ・トレーニングを組み合わせたメンタル・トレーニングを10日間実施した。その主な結果を要約すると, 次のとおりである。1. リラクセーション・トレーニングについて 1) 1日に2〜3回のセッションでは第1セッションで最も皮膚温の上昇が顕著であった。2) 10回のうち, 5回目から平均して1℃以上の皮膚温の上昇がみられた。3) 平均皮膚温は第3セッションで上昇していた。4) 個人別にみると各セッションで皮膚温が3℃以上を示す者が6名中5名みられた。残りの1名は2℃以上を示すことはなかった。また, 平均皮膚温が10回のトレーニングの中で半分以上32℃以上を示すものは, 6名中4名であった。5) リラクセーション・トレーニング中に皮膚温と筋電を測定した結果, 皮膚温が上昇し筋電が下降した。2. イメージ・トレーニングについて 1) 全国大会を前にして, 6日間のイメージ・トレーニングを実施することができた。 2) イメージ・トレーニング中に皮膚温の低下傾向がみられた。 3) イメージ・トレーニング中には皮膚温と筋電を測定した結果, 皮膚温が低下した時.筋電は向上した。3. 大会前の状態不安は試合が近づくにしたがって, 認知的不安や身体的不安が高まり, 自信が低下した。4. 試合はダブルスで2勝したが, シングルスで3敗して, 逆転負けであった。しかし.No.1ダブルスはその後の大会で優秀な成績をおさめるまでに成長した。
著者
久保山 直己 大柿 哲朗
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.1-12, 2005
被引用文献数
1

Voluntary movement is performed by coordinated action of several muscles.Even during simple movement such as finger tapping, it is not performed by single muscular contraction. Therefore the brain region where controls coordinated muscles to carry out voluntary movement must be activated activity. Activated region and degree are different by movement forms and movement frequency. Relationship between movement and brain activity is gradually becoming clear. However, every phenomenon of movement control is not known yet. There is blood flow distribution in brain during movement. Currently, a point of view that blood flow of the whole brain does not increase drastically by simple movement dominant. This knowledge suggests the possibility that blood flow distribution in brain changes into within movement. That is to say, the increase and decrease of blood volume may occur by each movement in cerebral region. To make clear the relationship between movement and brain activity, it will be necessary for investigations about blood flow distribution in brain with movement. In addition, we discussed Nerve placement of cerebral motor cortex and output of a muscle contraction signal.
著者
金崎 良三 徳永 幹雄 藤島 和孝 岡部 弘道 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.71-85, 1989-03-31
被引用文献数
1

テニス教室に参加した婦人36名を対象にして, 2年間にわたる追跡調査を実施することによって, テニスの継続化をめぐる問題にアプローチしてきた。研究結果は, 以下のように要約される。1. 対象者の基本的特性については, 全員が30代から40代の既婚者であり, 若干の者はパートタイマーとして職業に就いているが, 大部分は専業主婦である。また小学生の子供をもつ者が多いが, ほとんどの者が出産・育児から解放された時期にある。2. 学生時代からテニス教室に参加するまでの過去において, 大部分の老が何らかのスポーツの経験をしている。また, スポーツとかかわりをもつ夫や子供がいる者が極めて多い。3. テニスの継続状況については, (1)長期継続型(教室終了後引き続き継続), (2)中途継続型(教室終了後すぐには実施せず途中から開始して現在も継続), (3)中断継続型(途中で中断の時期があるが現在も継続), (4)中途非継続型(教室終了後引き続き実施していたが途中でドロップアウト)および(5)長期非継続型(教室終了後からずっと実施せず)の5つのパターンがみられた。全体的には(1)〜(3)の継続群が多く, 7割以上を占めている。特に長期継続群は, 練習コートが自宅から極めて近い所にあり,試合に出場した経験のある者が多い傾向がみられる。4. テニスヘの社会化パターンについては, 学校卒業後からテニス教室参加以前のスポーツ経験の違いから, (1)テニスを初めて開始した者, (2)スポーツ経験はあるがテニスは初めての者, (3)テニスの経験があり教室では再開または継続的に実施する者, という3つのパターンがあり, このうち(3)のパターンに属する者が多く半数を占めている。これらのパターンと教室終了後のテニスの継続パターンとの間には, 特徴的な関連性は認められなかった。5. テニス継続化の要因としては, (1)専業主婦がほとんどであり, 仕事をもっていてもパートタイマーであることから時間的余裕がある, (2)利用できるコートが極めて身近な所にある, (3)自主グループやクラブ, スクールなど練習仲間がいる, (4)テニス関連支出が大きな経済的負担となっていない, (5)テニスの技能の向上が認められる, (6)家族が重要な他者として機能している, (7)テニスの行動意図や重要な他者に対する規範信念が高い。(8)スポーツ意識に問題がない, などが指摘できる。6. テニス継続の目的に関しては, (1)友人との交流, (2)ストレス解消, (3)健康・体調の維持, (4)肥満防止・体重調整, (5)技能の向上・試合出場の5つがあげられるが, 特に「上手になりたい」, 「試合に出場したい, 勝ちたい」など(5)に関連する内容をあげた者が目立つ。7. テニス非継続の要因としては, (1)仕事の都合, (2)性的役割の問題(出産・育児), (3)社会的役割の問題(地域の役員就任), (4)転居による地理的・社会的環境条件の変化, (5)病気・怪我など健康上の理由, (6)指導者・リーダーがいなくなることによるグループの消滅, (7)グループ内の人間関係の問題, (8)テニスの技能が向上しないことによる意欲の低下, などがあげられる。本研究は, その目的がある程度達成されたとはいえ婦人のテニスについての1つの事例研究に過ぎず, したがって以上の結論を一般化することは困難である。今後は.今回の結果を踏まえてさらに対象を拡大するなどして, 数量的, 実証的研究へ発展させたいと思う。(本研究の要旨は, 1988年の第37回九州体育学会にて発表した。)
著者
村山 正治 山田 裕章 峰松 修 冷川 昭子 亀石 圭志
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.45-57, 1984-03-30
被引用文献数
2

Murayama et al. selected 60 items as Self-Actualization Evaluating Scale. It has ten sub categories ; acceptance of present-self, achievement orientedness, way of positive life, self assertion, genuiness, integration of bipolarity, separatness, obsessiveness, self-directedness, acceptance of weakness. Each category consists of 5〜8 items. Next shows comparison between 10 subscales of POI and 10 categories of "Self Actualization Evaluating Scale". The profile of categories for individual row scores were caluculated by personal computer. The Self-Actualization-Scale(SEAS) inventry and a formatting program were presented.
著者
徳永 幹雄
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.20, pp.21-30, 1998
被引用文献数
3

スポーツ選手が試合で実力を発揮するためには試合前1カ月位からの心理的コンディショニングが重要である。そこで,本研究ではスポーツ選手の心理的コンディショニングの指導に役立つ検査法として試合前の心理状態を診断する方法を開発することを目的とした。スポーツクラブ所属者246名を対象に調査を実施し,診断法を開発すると共に,作成された診断法をいくつかのクラブに適用し,その有効性を検討した。おもな結果は,次のとおりである。1.試合前の心理状態を診断する方法として20項目からなる質問用紙を作成して調査を実施し,統計的手法を用いて分析した結果,質問項目の妥当性,テストとしての信頼性が証明され,質問項目は5因子,9尺度に分類することができた。2.作成された「調査票」を用いて,試合前の心理状態を比較した結果,国体強化選手という明確な目標を持っている集団は高得点を示した。また,継続的に調査を実施することによりチーム全体,レギュラー選手,個人の心理状態の変化を分析することができ,試合前の心理的コンディショニングの指導に役立つことが示唆された。3.これらの結果を踏まえ,診断検査用紙としての形式を整え,「試合前の心理状態診断検査(Diagnostic Inventry of Psychological State Before Competition,略してDIPS-B.1)」 を作成した。
著者
徳永 幹雄 上田 真寿美
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.69-73, 2002

40才〜60才未満の女性541名を対象に,運動経験と更年期症状の関係及びテニス実施者,その他の運動 実施者,運動経験なし群の3群による更年期症状の関係を分析した。その結果は,以下のとおりである。 1.30歳代以降に運動経験がある者はない者よりも更年期症状が低かった。 2.運動経験がある者,とくに球技実施者(テニスやバレーボール実施者など)は,「いらだち」「頭痛」及び「心悸亢進」といった症状が低かった。 3.運動の継続が長い者ほど更年期症状が低い傾向であった。4.更年期症状の低かった者は,30歳代および40歳代〜閉経に「適度なきつさ」の運動を60分以 上,週に1〜4回程度している者が多かった。5.テニス実施者は他の種目を実施していた者や運動を実施していなかった者より更年期症状が低い 傾向にあった。とくに,「よくした者」より「まあまあした」と答えた中程度の実施者ほど更年期症状が低いことが明らかされた。 以上のことから,30歳代以降の運動経験は更年期症状の軽減に有効であり,その運動は無理のない程度で約1時間,週に2〜3回が適当であることから,テ ニスを無理なく行うことは更年期症状の軽減につながることが推察された。
著者
橋本 公雄 徳永 幹雄
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.21, pp.53-62, 1999
被引用文献数
1

本研究は,社会人と学生を対象にメンタルヘルスパターン診断検査(Mental health Pattern: MHP)を 作成し,尺度の信頼性と妥当性を検討するため行われた。結果を要約すると,下記に示すとおりである。 1.SCL-4尺度に生活の満足感(QOL項目)などを追加した調査票から,13因子(全分散寄与率:61.3%)を抽出した。 2.心理的ストレス(こだわり,注意散漫),社会的ストレス(対人緊張,対人回避),身体的ストレス(疲労,睡眠・起床障害)からなるSCL尺度と,生 活の満足感からなるQOL尺度の7つの下位尺度(各5項目づつ)でMHP尺度を作成した。 3.MHP尺度の高い信頼性と妥当性が検証された。しかし,生活の満足感の妥当性の検証は本研究では行われなかった。 4.SCL尺度得点とQOL尺度得点のそれぞれのM+0.5SDを基準値とし,「はつらつ型」「ゆうゆう(だ らだら)型」「ふうふう型」「へとへと型」と命名される4つのメンタルヘルスパターンに分類した。 5.メンタルヘルスパターンの出現率は,性差,年代差はなく,「ゆうゆう(だらだら)型」が60%を占め,その他のパターンはそれぞれ10%強を占めた。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄 瀧 豊樹
出版者
九州大学健康科学センター
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
no.21, pp.41-51, 1999

各種スポーツ大会に参加した高校生,大学生,社会 人選手及び国民体育大会に参加した選手を対象にして,試合中の心理状態の診断法とその有効性について考察した。 そのおもな結果は次のとおりである。1.10項目から構成される試合中の心理状態診断法の質問項目の妥当性,診断検査としての信頼性及び因子について証明することができた。 2.作成された本検査と精神力の自己評価,実力発揮度,競技成績の関係について項目別及び合計得点の比較を行った結果,すべて有意な関係が認められ本検査の有効性を証明することができた。 3.本検査法と心理的競技能力(DIPCA.2)を比較すると国体選手では有意な関係がみられた。しかし,大学サッカー選手では有意な関係は認められず,本検査と試合前の心理状態(DIPS-B.1)の関係では有意な関係が認められ,心理的競技能力は試合前の心理状態と有意な関係が認められた。 4.関連する3つの診断検査と実力発揮度及び競技成績との関係を考察することができた。 5.以上の結果より,「試合中の心理状態診断検査(Diagnostic Inventory of Psychological State During Competition,略してDIPS-D.2)」を作成した。
著者
Tokunaga Mikio
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.107-117, 1999
被引用文献数
1

The author had developed the Diagnostic Inventory for Psychological Competitive Ability (DIPCA. 2, for junior high school students - adults) to determine the mental strength of athletes, the Diagnostic Inventory of Psychological State Before Competition (DIPS-B. 1) and the Diagnostic Inventory of Psychological State During Competition (DIPS-D. 2). Questionnaires and diagnostic methods are as follows:心理的競技能力診断検査,試合前の心理状態診断検 査及び試合中の心理状態診断検査の調査表と診断法スポーツ選手の心理的特徴を診断するために「特性」 をみる「心理的競技能力診断検査」を開発した。また,「状態」をみる「試合前の心理状態診断検査」及び「試 合中の心理状態診断検査」も作成した。これらの3つの検査法の調査表と診断法を紹介した。今後,これら の3つの診断検査を状況に応じて有効に利用することにより,スポーツ選手の心理面の強化に役立つものと考えられる。それぞれの特徴は以下のとおりである。 1.心理的競技能力診断検査(DIPCA.2,Diagnositic Inventory of Psychological Competitive Abitity for Athletes) 特色:スポーツ選手の一般的な心理的傾向としての心理的競技能力(通称,精神力)を12の内容(忍耐力,闘争心,自己実現意欲,勝利 意欲,リラックス能力,集中力,自己コントロール能力,自身,決断力,予測力,判断力,協調性)に分けて診断する。スポーツ選手としての心理面の長所・短所を診断できる。メンタル強化の第1歩となる。検査方法:スポーツの試合場面について52個の質問を順々に読み,回答欄に答えを記入する。 検査対象:中学・高校・大学・社会人のスポーツ選手 検査時間:約15分間 2.試合前の心理状態診断検査(DIPS-B.1,Diagnositic Inventory of Psychological State Before Competition) 特色:試合前の心理的な状態を診断することができる。とくに試合に向けて十分な心理的準備(忍耐度,闘争心,勝利意欲,自己実現 欲,リラックス度,集中度,自信,作戦思考度,協調度)が,できているかをチェックし,心理的コンディショニングを指導できる。 検査方法:試合前1か月位から1〜2日前までの期間に,試合についての気持ちを20個の質問でチェックする。 検査対象:中学・高校・大学・社会人のスポーツ選手 検査時間:5〜10分 3.試合中の心理状態診断検査(DIPS-D.2,Diagnositic Inventory of Psychological State During Competition) 特色:望ましい心理状態で試合ができたかどうかを,試合終了後にチェックする。また,目標の達成度,実力発揮度の自己評価を調査 する。常に望ましい心理状態で試合ができ,実力発揮度が高くなり,その確率が安定するように指導できる。 検査方法:試合終了後に試合中の心理状態について10個の質問に答える。検査対象:中学・高校・大学・社会人のスポーツ選手 検査時間:約5分間
著者
村上 貴聡 岩崎 健一 徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.183-190, 2000-02-10

高校テニス部員6名を対象にして, 自律訓練とイメージトレーニングを用いたメンタルトレーニングを週2回, 約3カ月間実施しその効用性を検討した。結果は次のとおりである。1. 心理的競技能力はトレーニング後にすべて向上し, 忍耐力, 勝利意欲, 自己コントロール, リラックス, 集中力, 自信の尺度で1%水準の有意な変化がみられた。決断力および予測力においては10%水準の有意傾向がみられた。また, 総合得点においても顕著な向上が見られた。2. 特性不安はトレーニング後に減少した。トレーニング後にすべての因子で得点が減少し, 勝敗の認知的不安の因子で有意な変化がみられた。また, 有意差はみられなかったが, 動作緊張傾向, 競技意欲の低下, 自信喪失の各因子で不安の減少傾向がみられた。3. 競技状態不安は, トレーニング実施前の大会では試合が近づくにつれて認知的不安, 身体的緊張が高く, 自信が低い状態で出場しているが, トレーニング実施後の大会では大会当日には認知的不安, 身体的緊張が多少高まるが, 自信とともに比較的安定した状態で試合に出場していることがわかった。4. 試合中の実力発輝度では, トレーニング前の試合では自分の実力を発揮できたものが2名であったのに対し, トレーニング後の試合では実力を発揮できたものが5名に増加した。5. 内省報告から, メンタルトレーニングは試合前の睡眠や緊張感の減少, 試合中のリラクセーション, 冷静さ, 落ち着き, 集中力, そして, 試合に自信をもって出場できる心理的に良好な状態を作り出すのに有効に働いたことが推測された。
著者
藤島 和孝 金崎 良三 徳永 幹雄 岡部 弘道
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.99-105, 1989-03-31
被引用文献数
1

中年婦人を対象とした3か月間のテニス教室終了2年後での体力に関する追跡調査から, 次のような結果を得た。1. テニス教室終了時に減少した体脂肪率は, 同教室終了2年後には, 教室開始時および終了時に比べて有意に増加した。2. 教室終了2年後での背筋力は, 終了時より有意に低下した。3. 教室終了時に増加した立位体前屈および伏臥上体そらしの柔軟性は, 同終了2年後には, 終了時よりそれぞれ減少した。4. 教室終了時に15.6%増加した最大酸素摂取量は, 同終了2年後には7.8%減少したが, 同教室開始時の値を維持した。5. 教室終了時に低下した収縮期および拡張期血圧は, それぞれ終了2年後には, 終了時より上昇し, 教室開始時とほぼ同値を示した。以上の結果, 3か月間のテニスによる身体的効果は, 形態・体力面において, 2年後に減退することを示唆した。
著者
長野 真弓 熊谷 秋三
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.9-20, 2004-03-25

Metabolic syndrome has been defined as a clustering of such metabolic abnormalities as glucose intolerance, dyslipidemia, hypertension and abdominal obesity. Two different criteria for metabolic syndrome have been proposed by the World Health Organization (WHO; 1999) and National Cholesterol Education Program (NCEP; 2001). In addition, some prospective cohort studies have shown that people who have metabolic syndrome have a higher incidence of coronary heart disease, coronary vascular disease, and all-cause mortality than people without metabolic syndrome. As a result, both behavior-related factors and psychological factors are thus considered to be related to metabolic syndrome. In this review, we present several types of epidemiological evidence focusing especially on the relationships among physical activity, cardiorespiratory fitness and psychological distress in regard to metabolic syndrome. A few epidemiological studies have reported a significant relationship between physical activity and psychological distress regarding the prevalence and/or incidence of metabolic syndrome. Metabolic syndrome may therefore be an independent predictor for lifestylerelated diseases that are influenced by behavioral, psychological, and pathophysiological factors. However, the number of studies on the above problems is still insufficient. In particular, it is important for future studies to consider such methodological problems as the lack of directly measured physical fitness and visceral fat accumulation. In addition, interventional studies should be conducted to assess what effects an improvement in behavioral or psychological factors may have on the development of metabolic syndrome.
著者
小宮 秀一
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.1-7, 2004-03-25
被引用文献数
1

Over the last two decades, a dramatic increase in overweight and obesity has been reported in both developed and under-developed countries. Associated with this excess of body mass and body fat is the increased risk of developing heart disease and diabetes. Childhood obesity is rapidly emerging as a global epidemic that will have profound public health consequences as obese children become obese adults. However, there is no internationally acceptable index to assess childhood obesity. Furthermore, attention has focused primarily on the methods by which body composition data are obtained, and less on the way in which the data is expressed. The advantage of using body mass index (BMI) is that stature and body mass are variables readily available and easy to measure. However, the major shortcoming of the BMI is that the actual composition of body mass is not taken into account: excess body mass may be made up of either adipose tissue or muscle hypertrophy, both of which will be judged as 'excess mass'. To resolve these issues, BMI can be separated into its fat-free and fat components. These two indices, known as the fat-free mass index (FFMI; FFMkg/m^2) and fat mass index (FMI; FMkg/m^2) are both discrete and adjusted for stature. The potential advantage is that only one component of body mass, i. e., fat-free mass (FFM) or fat mass (FM), is related to the stature squared. Considering that BMI is the sum of FFMI+FMI, an increase (or a decrease) in BMI can be traced to a rise (or a drop) in one or the other component, or both. FFMI and FMI used in conjunction with a percentile grid derived from a suitable reference population can be expected to provide more meaningful information about nutritional status than BMI alone can offer. The purpose of this article was to introduce these indices, by which leanness and obesity in children can be more accurately assessed.
著者
徳永 幹雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.91-102, 2001-03-01

スポーツ選手の心理的競技能力を診断する方法を開発する目的から, 1986年以来, 種々のスポーツ選手を対象に調査を行い, 信頼性, 妥当性を検証し, 評価尺度の開発とシステム化を試みてきた。その主な結果は, つぎのとおりである。1. スポーツ選手の心理的「特性」としての心理的競技能力を診断する方法として52(嘘尺度4項目を含む)の質問項目から構成され, 12尺度及び5因子に分類される調査法である「心理的競技能力診断検査(DIPCA.3)」を開発した。2. スポーツ選手の心理的「状態」としての心理的競技能力を診断する方法として次の2つの方法を開発した。1) スポーツ選手の試合前の心理状態を診断する方法として20(嘘尺度2項目を含む)の質問項目で構成され, 9尺度及び5因子に分類される調査法である「試合前の心理状態診断検査(DIPS-B.1)」を開発した。2) スポーツ選手の試合中の心理状態を診断する方法として10の質問項目から構成される調査法である「試合中の心理状態診断法(DIPS-D.2)」を開発した。3. スポーツ選手の心理面の指導のために3つの診断検査のシステム化を試みた。
著者
徳永 幹雄 橋本 公雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.73-84, 1988-02-20
被引用文献数
1

昭和61年度国民体育大会福岡県選手男子168名, 女子68名を対象にして, スポーツ選手の心理的競技能力の診断法の開発を試みた。おもな結果は, つぎのとおりである。1) 心理的競技能力を表現すると思われる68項目からなる調査票を作成し, 調査を実施した。信頼性係数, 項目分析の結果から3項目を削除し, 65項目について因子分析を行った。その結果, 5因子と6つの下位因子を抽出した。2) 心理的競技能力の因子は, 競技意欲を高める能力(忍耐力, 闘争心, チャレンジ精神, 勝利志向性の下位因子), 精神を安定・集中させる能力(集中力, リラクセーションの下位因子), 自信をもつ能力, 作戦を予測・判断する能力, 協調件の能力と命名された。3) 抽出された各因子は国体選手の講特性と顕著な関係がみられ, 心理的競技能力テストとしての妥当性が推測された。4) 抽出された各因子を代表する簡単な質問又から, 試合中の心理可犬態を評価する方法を作成した。5) 今後, 適切な項目や因子の追加・修正を行い, 中学生から一般社会人に使用できる誇断法を作成しなければならない。
著者
金崎 良三 徳永 幹雄 多々納 秀雄
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.205-215, 1987-03-28

ゲートボールの実施者および実施者のいる家族を調査することによって, ゲートボールをめぐる問題についてアプローチしてきたた。以下は, 研究結果の要約である。1. ルールの違いにより困ったという経験をもつ者は, 3割強とかなりみられ, 性別では男子, 経験年数別では年数の良い者, 地位・役割別では監督経験者, 審判有資格者に多い。したがって, 仮説(1)「ゲートボールの統括団体の乱立やルールの違いによる混乱がある」はある程度検証された。2. ルールや団体・組繊のあり方については, 全国統一ルールや全国組織としてまとまった方がよいとする意見が多い。この傾向は, 男子, 経験年数の良い者, 監督経験者, 審判有資格者に強い。3. 大会のあり方については, 全国大会を望む者が多いとはいえ全体的には多様な意見がみられた。したがって, 仮説(2)「ゲートボールの実施方法が勝敗を重視するようになり競技志向化してきた」は, 一部にはその傾向が認められるものの今回のデータからは検証されたとはいい難い。なお, 全国大会を望む者は, 男子は農村部, 経験年数の良い者, 監督経験者, 審判有資格者, 女子は監督経験者, 審判有資格者に多くみられた。4. 練習に対する不満, 対人関係や選手の選出で嫌になったことの経験, 審判やクラブ, リーダーに対する不満に関しては, ほとんどないという者が多い。しかし, それほど深刻というほど現実化しているとはいえないが, 嫌になった経験や不満を感じたことのある者が2割から最高4割近くみられ, クロス分析では男女経験年数の良い者と女子の審判有資格者に多かった。また, ゲートボールをやめたいと思ったことのある者は, 非常に少なかった。なお, 嫌になった経験や不満の内容, やめたいと思ったことの理由が具体的に明らかになったが, なかでも対人関係に関することが大きなウェイトを占めていることがわかった。5. ゲートボール継続のための条件としては, 健康であることと仲間との調和・親睦をはかることの2つが圧倒的に多かった。6. ゲートボール実施者のいる家族の調査から, 第1に大部分の家庭は実施者がゲートボールをしやすいように気を配り, 協力していること, 第2にゲートボールを実施するにあたり仕事がときどきおろそかになると評価される者が34%に達すること, 第3にゲートボール中心の生活を送っていると評価される者が2割を越えていること, 第4に家族の誰かがゲートボールを始めることによって迷惑に思ったり困ったりした経験があるという者が2割強いること, などが明らかになった。特に, ゲートボール実施による仕事への影響, 実施者の生活, 家庭への迷惑などについての調査結果から, 仮説(3)「家庭での役割遂行をめぐって問題がある」は, 検証された。7. 家族が指摘するゲートボール実施上の問題としては, 実施者の仕事や家庭での役割の問題に関係したものが多くみられた。最後に, 本調査研究において明らかになった傾向が, ゲートボール特有のものかどうかは他のスポーツの場合と比較しなければわからないが, 少なくともゲートボールをめぐる問題として従来指摘されてきたことのいくつかが実証的に示されたと思う。また, 自由記述式の調査によって多くの具体的で詳細な問題点が浮上してきた。これらの点についても, さらに仮説を構成し, 検証を加えていく必要があろう。この点は, 今後の課題としたい。