著者
西田 秀昭 橋本 哲夫 北村 修一 塚 正彦 田中 卓二
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.327-331, 2000-09-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
9

背景: 卵巣の悪性転化を伴う成熟嚢胞性奇形腫の腹水細胞所見に関する報告はない.今回, 術前の腹水細胞診で興味ある細胞所見を示した症例を経験したので報告する.症例: 48歳, 女性.約5ヵ月前より, 水様性帯下が持続し, 腹部膨満感を感じるも約1ヵ月間放置.入院時, 画像所見にて腹水, 卵巣腫瘍を認め, 子宮, 両側付属器を摘出した.腹水細胞所見は, 好中球, リンパ球および組織球からなる炎症性背景に, 異型のない紡錘形細胞の集塊や少数の大型~巨細胞性の異型細胞がみられた.異型細胞は細胞質が豊富で偏在性の核を有し, 核縁の肥厚には乏しく, 明瞭な核小体を1個~数個有し, 細胞質辺縁はライトグリーンに好染していた.病理組織所見では, 左卵巣は嚢胞性腫瘍で, その壁には毛包, 歯牙が混在し, 角化を伴う高分化扁平上皮癌の浸潤性増殖がみられ, 浸潤にしたがいその分化度が低下していた.また, 子宮体部への浸潤も認められた.右卵巣は左に比べ小型の嚢胞性腫瘍を認め, 一部角化を伴う癌細胞が浸潤増殖し, 右卵管への浸潤もみられた.結論: 悪性転化を起こした高分化扁平上皮癌が浸潤に伴い低分化となり, この低分化扁平上皮癌細胞が腹水中に出現したと考えられた.
著者
玉井 忠治 橋本 哲夫 松下 録治 岩田 志郎
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.502-507, 1970-04-05 (Released:2010-05-25)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

無担体ヨウ素131は,テルルの中性子照射でできたテルル131のβ壊変で得られるが,実際には,用いたテルル中に不純物として含まれるヨウ素の量により比放射能が左右される.したがって,高比放射能ヨウ素131を得るためには,テルル中に存在するヨウ素の量を求める必要がある.本報告では,Ge(Li)半導体検出器のエネルギー分解能のよいことを利用し,テルル中のヨウ素の非破壊中性子放射化分析法の開発を目的とし,ヨウ素の検量線を用いる方法と,テルルとヨウ素の放射能強度比から求める方法とを検討した.両方法を各種テルル化合物に適用し,試料中に含まれる1~100ppm程度のヨウ素を簡便に定量することができた.
著者
橋本 哲夫 坂上 修栄 小嶋 素志 坂井 正
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.219-225, 1991
被引用文献数
6

照射直後にみられる岩石薄片からの蛍光あるいはアフターグロー (リン光) の新観察法を通常のカラーフィルムを用いて開発した。γ線照射した岩石薄片を暗袋の中でカラーフィルムに直接押し当てて2-5分間露出したところ, 得られた写真は薄片中の鉱物組成に依存した驚くほど色彩豊かなものであった。また, アフターグロー画像 (AGCI) の強度は, 全吸収線量よりむしろ線量率に依存していた。熱変性による色調の変化のみならず, 個々の鉱物においてさえ, さまざまな発光強度の変化が観察された。繰り返しAGCI観察の結果からは, 壊変挙動が定性的に観察できた。ここで提案した簡便なAGCI技法は, さまざまな鉱物学的な研究のみならず, 他の固体物質の固有の物性に関した情報にも適用可能であろう。
著者
橋本 哲夫 本間 悟 兼田 朋廣
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.147-154, 2002-03-05 (Released:2009-03-13)
参考文献数
15

爆心地からほぼ500m地点で採取した長崎被爆瓦の溶融表面に白雲母を検出材として固定し, 原子炉中性子照射に基づくフィショントラック (FT) を観測した. その結果, 残留核分裂核種を含む微粒子 (残存ホットパーティクル, HP) に由来する典型的な星状FTを裏面に比較して数十倍の高密度で観察できた. 20個の星状FT解析から0.72~5.7×107Pu原子がHP中に残存していると見積もれた. 更に, FT長が短いことを基に, HPが瓦表面から少々深い箇所に存在していることを確認した. 一方, 爆心から700mに位置する広島城被爆瓦からは, 石英粒子を抽出し, 再現法を用い青色熱ルミネセンス (BTL) 測定により, 13.0Gyの被曝線量を評価できた. 次いで, 長崎被爆瓦表面のルミネセンスの熱処理特性変化から, 約0.5mmの溶融被膜を除去した部位でも, 1100℃以上の被熱を受けていることを明らかにした. したがって, 残存HPはこの被熱温度をはるかに超えた融点の物質から成っていると判断した.