著者
前田 裕弘 松田 光弘 森田 恵 正木 秀幸 白川 親 堀内 房成 小山 敦子 濱崎 浩之 藤本 卓也 入交 清博 堀内 篤
出版者
The Japan Society for Clinical Immunology
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.118-125, 1993-04-30 (Released:2009-01-22)
参考文献数
17

成人T細胞白血病(ATL)患者の血清を健常人の末梢血単核細胞(PBMC)に添加し,そのPBMCのCD 3抗原の発現を観察した. CD 3抗原の発現が低下している急性型ATL患者の血清を添加したときのみ健常人PBMCのCD 3抗原の発現が低下した.しかし, CD 3抗原の発現が正常の慢性型ATL血清では,この現象はみられなかった.同様の結果が細胞培養上清添加時にもみられた.細胞培養上清をSephacryl S-200を用いて分画し,健常人PBMCのCD 3抗原を低下させる活性を分子量40-60 kDの分画に認めた.各種抗サイトカイン抗体を用いた中和実験および各種サイトカイン添加実験より,この可溶性因子が既知のサイトカインとは異なる因子と考えられた.この因子が臨床的に急性型ATLに認められ,くすぶり型および慢性型ATLに認められないことより, crisisに関与している可能性も考えられた.
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 正木 秀幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

デング出血熱の病態形成におけるフラビウイルス交叉性免疫応答の役割を解明することを最終的な目的とし、デングウイルスと日本脳炎ウイルス交叉性T細胞の解析をヒトおよびマウスのリンパ球を用いて詳細におこなった。日本脳炎ウイルスとデングウイルス間には免疫ヒトリンパ球を用いてのバルクカルチャーにおいては交叉反応性が認められた。しかし、CD4陽性T細胞クローンレベルでは日本脳炎とデングウイルス間に交叉反応性が認められなかった。一方、日本脳炎ウイルス反応性T細胞クローンの一部は西ナイルウイルスとの間に交叉反応を認めた。これは、日本脳炎ウイルスと西ナイルウイルス間でのアミノ酸の相同性の高さによると考えられる。従って、ヒトT細胞においてフラビウイルス交叉反応性は存在するが、日本脳炎とデングウイルス交叉性のものは低頻度であると考えられる。これらCD4陽性ヒトT細胞クローンのT細胞レセプターはユニークなモチーフは認められなかった。一方、マウスにおいてもデングウイルスと日本脳炎ウイルス間のT細胞交叉反応性を検討する目的で、まず、日本脳炎ウイルス反応性キラーT細胞の誘導と認識するエピトープの解析を行った。マウスを日本脳炎ウイルスで免疫することにより、日本脳炎ウイルスに対するキラーT細胞が誘導される。これらのキラーT細胞が認識するエピトープはエンベロープ蛋白質のアミノ酸60-68番上にあり、H-2K^d拘束性であった。現在、このエピトープを確認するT細胞のフラビウイルス交叉性、およびマウスキラーT細胞が認識する他のエピトープの同定が進行中である。