著者
倉根 一郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.15-20, 2002-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
56
被引用文献数
1
著者
倉根 一郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.307-312, 2005
被引用文献数
4

日本脳炎は日本脳炎ウイルスの感染によって起こる急性脳炎である.脳炎を発症した場合,約20%の患者は死亡,約50%は精神神経に後遺症を残す重篤な疾患である.日本において1960年代1000人以上であった患者数は激減し,1990年以降は10人以下の患者発生である.このような患者数の減少にマウス脳由来不活化日本脳炎ワクチンが果たした役割は非常に大きなものがある.平成17年,日本脳炎ワクチン接種との因果関係が否定できない健康被害(急性散在性脳脊髄炎,(Acute Disseminated Encephalomyelitis,ADEM))の発生により,厚生労働省より「日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えについて」の勧告がなされた.本勧告は行政的判断によるものであり,科学的にマウス脳由来日本脳炎ワクチンと急性散在性脳脊髄炎の因果関係が科学的に証明されたことによるものではない.現在,組織培養細胞由来日本脳炎ワクチンの開発が進んでいるが,早期の実用化による積極的勧奨の再開が待たれている.
著者
倉根 一郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.63-68, 2005-06-30
参考文献数
25
被引用文献数
1

ウエストナイルウイルスは自然宿主であるトリと蚊の間で感染環が形成され維持されている.米国においては約200種のトリがウエストナイルウイルスに感染し,さらに,40種以上の蚊からウイルスが分離されている.このように,多種の蚊からウイルスが検出されることは,他のフラビウイルスに比し,ウエストナイルウイルスがより多くの種類の蚊によって媒介され,さらに多種類の動物に感染しうる性質を有したウイルスであること示唆する.ヒトにおいてはウエストナイルウイルス感染者の約20%が症状を示すと考えられている.急性熱性疾患であるウエストナイル熱が多数を占めるが,髄膜炎,脳炎(髄膜脳炎),さらに近年脊髄,末梢神経症状として弛緩性麻痺,多発性神経炎の報告もなされている.このようにウエストナイルウイルスは,ヒトにおいては多様な症状を引き起こす性質を有するウイルスであるといえる.近年,アメリカ大陸やロシアにおいて侵淫地域が拡大している.日本への侵入も危惧されており,今後一層注目すべきウイルスといえる.
著者
倉根 一郎
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.63-68, 2005 (Released:2005-11-22)
参考文献数
25

ウエストナイルウイルスは自然宿主であるトリと蚊の間で感染環が形成され維持されている.米国においては約200種のトリがウエストナイルウイルスに感染し,さらに,40種以上の蚊からウイルスが分離されている.このように,多種の蚊からウイルスが検出されることは,他のフラビウイルスに比し,ウエストナイルウイルスがより多くの種類の蚊によって媒介され,さらに多種類の動物に感染しうる性質を有したウイルスであること示唆する.ヒトにおいてはウエストナイルウイルス感染者の約20%が症状を示すと考えられている.急性熱性疾患であるウエストナイル熱が多数を占めるが,髄膜炎,脳炎(髄膜脳炎),さらに近年脊髄,末梢神経症状として弛緩性麻痺,多発性神経炎の報告もなされている.このようにウエストナイルウイルスは,ヒトにおいては多様な症状を引き起こす性質を有するウイルスであるといえる.近年,アメリカ大陸やロシアにおいて侵淫地域が拡大している.日本への侵入も危惧されており,今後一層注目すべきウイルスといえる.
著者
佐藤 豪 伊藤 琢也 庄司 洋子 三浦 康男 見上 彪 伊藤 美佳子 倉根 一郎 SAMARA Samir I. CARVALHO Adolorata A. B. NOCITI Darci P. ITO Fumio H. 酒井 健夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7, pp.747-753, s-ix-s-x, 2004-07-25
被引用文献数
2 37

ブラジルで採取された狂犬病ウイルス株14検体を用いて,病原性および抗原性状に関連するG蛋白遺伝子およびG-L間領域(シュートジーン)について遺伝子および系統学的解析を行った.分離株は,ヌクレオ(N)蛋白の解析によって犬型狂犬病ウイルス(DRRV)または吸血コウモリ型狂犬病ウイルス(VRRV)の2系統に分類された.これらのG蛋白コード領域とジュードジーンの塩基相同性およびアミノ酸(AA)相同性は総じてエクトドメインのものよりも低かった.両領域において,VRRVの塩基およびAA相同性はDRRVに比べて低かった.また,DRRVとVRRVの推定AA配列においては,3箇所の抗原認識部位およびエピトープ(サイトIla,サイトWB+およびサイトIII)に相違があり,両系統が抗原性状により区別できることが示唆された.シュードジーンおよびG蛋白コード領域の系統樹とエクトドメインの系統樹を比較すると,翼手類および肉食類由来株グループの分岐は異なっていた.一方,DRRVまたはVRRVのグループ内において分岐は明らかに類似していた.また,VRRV分離株はブラジルのDRRVよりも近隣中南米諸国の翼手類分離株により近縁であった.これらの結果は,N遺伝子と同様,G遺伝子およびG-L間領域の解析においても,ブラジルの狂犬病分離株がDRRVまたはVRRVに分類できることを示した.
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 松谷 隆治 鈴木 隆二
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

デングウイルス感染症は世界で最も重要な蚊媒介性ウイルス感染症である。デングウイルス感染におけるデング出血熱の発症機序の解明のため、マーモセットを用いてデングウイルス感染モデルの確立を行った。マーモセットは感染後高いウイルス血症を示し、また抗体反応、臨床的所見、血液学および生化学的検査所見もヒデング熱患者と同様の変化が見られた。また、マーモセットにおけるT細胞免疫応答の詳細な解析のため、サイトカインや細胞マーカー解析のツールを確立した。
著者
倉根 一郎 高崎 智彦 正木 秀幸
出版者
国立感染症研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

デング出血熱の病態形成におけるフラビウイルス交叉性免疫応答の役割を解明することを最終的な目的とし、デングウイルスと日本脳炎ウイルス交叉性T細胞の解析をヒトおよびマウスのリンパ球を用いて詳細におこなった。日本脳炎ウイルスとデングウイルス間には免疫ヒトリンパ球を用いてのバルクカルチャーにおいては交叉反応性が認められた。しかし、CD4陽性T細胞クローンレベルでは日本脳炎とデングウイルス間に交叉反応性が認められなかった。一方、日本脳炎ウイルス反応性T細胞クローンの一部は西ナイルウイルスとの間に交叉反応を認めた。これは、日本脳炎ウイルスと西ナイルウイルス間でのアミノ酸の相同性の高さによると考えられる。従って、ヒトT細胞においてフラビウイルス交叉反応性は存在するが、日本脳炎とデングウイルス交叉性のものは低頻度であると考えられる。これらCD4陽性ヒトT細胞クローンのT細胞レセプターはユニークなモチーフは認められなかった。一方、マウスにおいてもデングウイルスと日本脳炎ウイルス間のT細胞交叉反応性を検討する目的で、まず、日本脳炎ウイルス反応性キラーT細胞の誘導と認識するエピトープの解析を行った。マウスを日本脳炎ウイルスで免疫することにより、日本脳炎ウイルスに対するキラーT細胞が誘導される。これらのキラーT細胞が認識するエピトープはエンベロープ蛋白質のアミノ酸60-68番上にあり、H-2K^d拘束性であった。現在、このエピトープを確認するT細胞のフラビウイルス交叉性、およびマウスキラーT細胞が認識する他のエピトープの同定が進行中である。