著者
桜井 進一 猪股 伸晃 武井 健児 青柳 壮士 中澤 理恵 坂本 雅昭 富沢 渉
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会
巻号頁・発行日
vol.28, pp.99, 2009

【目的】<BR>群馬スポーツリハビリテーション研究会では,H14年の全国高等学校野球選手権群馬県大会(以下:夏季大会)から理学療法士(以下:PT)によるメディカルサポート(以下:サポート)を開始以降,サポート対象となる大会・内容を拡大し継続してきた。そこで,H14年からH20年までにサポートした計12大会における結果を整理し,必要とされているサポート内容とその経時的な変化の傾向について報告する。<BR>【対象・サポート内容】<BR>夏季大会はH14年度にベスト16以降16試合から開始,H15年度からベスト32以降31試合,H18年度以降は1回戦からの全66試合となった。またH18年から秋季関東地区高等学校野球大会県予選(以下:秋季大会),H19年から春季関東地区高等学校野球大会県予選(以下:春季大会)の準々決勝以降7試合のサポートも開始した。サポート内容は,試合前のコンディショニング及び試合中のアクシデントに対する対応を基本とし,夏季大会では4回戦以降で両チームの投手・野手に対する試合後のクーリングダウンを実施した。尚,上記規定試合以外の夏季大会1~3回戦,春季・秋季大会では監督からの依頼に応じた投手のクーリングダウンを実施した。<BR>【結果と考察】<BR> 過去12大会にサポートに参加したPTは延べ589名(実数158名)であり,内訳は夏季7大会で延べ308試合,523名,春季・秋季計5大会で延べ35試合,66名であった。夏季大会4回戦以降でのダウンは延べ202チーム,投手183名に実施した。ダウン実施の際に肩や肘に痛みの認められた投手は計49名,27%であった。全大会における応急処置やテーピング,依頼による投手クーリングダウン等の対応件数は延べ584件(287名)であり,対応内容はテーピング107件,アイシング65件,熱中症対応61件の順に多かった。傷害部位別では上肢が延べ128件,下肢が延べ153件,傷害内容別では打撲98件,筋痙攣78件,熱中症65件の順に多かったが,経時的変化はみられなかった。サポート内容の経時的変化として,H18年度までは規定試合以外での投手へのクーリングダウンの要請は0件であったが,H19年度12件、H20年度33件と急増しており,コンディショニングによる障害予防の重要性が各校へ浸透してきていると考えられた。 7年間でのサポート対応の増加を踏まえ,我々はマンパワーの確保,障害予防に必要とされる知識・技術の向上が必要と考えられた。
著者
阿部 洋太 武井 健児 高橋 和宏 山本 敦史 長谷川 信 田澤 昌之 白倉 賢二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】胸郭出口症候群(TOS)は,胸郭出口において腕神経叢または鎖骨下/腋窩動静脈が圧迫あるいは牽引されて生じる病態の総称である。TOSのリハビリテーションに際しては圧迫型・牽引型・混合型といった病態の把握とともに,斜角筋間三角・肋鎖間隙・小胸筋深部といった症状誘発部位の鑑別が必要とされる。鑑別方法としてAdson test,Eden test,Wright testといった脈管圧迫テスト(テスト)があり,これらは本邦におけるTOS診断に際して用いられている。現在のTOS病態の理解では,神経原性の牽引型が9割を占めるとされており,圧迫型においても血管原性は希であるとされているため,上記のテストは血管と同時に圧迫を被る腕神経叢の圧迫症状を推測するものとして使用される。しかし,テスト時の症状としては痺れなどの神経性の症状に伴い,脈拍減弱や色調変化といったいわゆる血管性の症状も出現しており,どの部位で何が圧迫を受けているのかという点とそのときの症状の関連性には不明な点が多い。我々はテスト実施時の血管の状況をリアルタイムで確認出来る超音波診断装置に着目し,その有用性を検討してきた。そこで本研究では,超音波診断装置より得られる各テスト時の血管面積の変化と,その際の症状との関連性を検討し,TOSにおける脈管圧迫テストの在り方を再考することを目的とした。【方法】被験者は日常生活においてTOS症状を有さない健常成人9名とした。測定には超音波診断装置(MyLab 25,日立メディコ社製)を用いた。測定部位は斜角筋間三角,肋鎖間隙,小胸筋深部の3箇所とし,1)上肢下垂時,2)Adson test時(頸部最大後屈+検査側回旋位,最大吸気位),3)Eden test時(両肩関節軽度伸展,両肩甲骨最大下制+内転+後傾位),4)Wright test時(肩関節90°及び130°外転位)のそれぞれにおいて,各箇所の血管面積を計測した。また,各測定時に出現したTOS症状の部位及び性質を聴取するとともに,脈拍及び指尖の色調を確認した。統計学的解析にはWilcoxonの符号付順位検定を用い,上肢下垂位と各テスト時の血管面積を部位ごとに比較した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究であり,群馬大学臨床研究倫理委員会の承認を得て実施した。また,対象者全員に本研究について文書と口頭にて十分な説明を行い,同意を得た後に測定を行った。【結果】上肢下垂位と比較し,Adson test時では全ての部位において有意に血管面積が減少していた。Eden test時では,肋鎖間隙において有意に血管面積が減少していた。Wright test時では,全ての部位において有意に血管面積が減少していた。各測定時のTOS症状出現状況は,Adson test時が1名,Eden test時が3名,Wright test時が6名であり,その部位は上腕内側及び外側が1名ずつ,手掌全体が1名,残り7名が第2指尖から第5指尖のいずれか複数部位であり,症状の性質は全員が痺れやだるさであった。なお,症状出現者全てにおいて,脈拍減弱が確認された。【考察】Adson testでは全ての部位において有意な血管狭窄が生じていたものの,症状出現者は1名であった。このテストは,深呼吸に起因する全身の循環動態と神経反射により生ずる一過性の血流低下が大きく関与するため,血管圧迫の意味合いは少なく,診断に際する特異度も高いことが明らかとされている。本研究においても同様のメカニズムが血管面積に関与し,同様の症状出現状況であったと考えられる。Wright testでは全ての部位において有意な血管狭窄が生じ,症状出現者も6名と最も多く,多彩な部位に痺れが誘発されていた。先行研究ではWright testによる肋鎖間隙での有意な血管狭窄がすでに報告されており,本研究結果とは異なる傾向となった。そのため圧迫部位は定かでないが,症状としては,第4及び第5指尖を筆頭に,上腕内側及び外側や手掌全体など様々な部位に出現しており,対象者によって異なる高位の腕神経叢神経幹部が血管と同時に圧迫を被ったと考えられる。Eden testに関して,本研究では肋鎖間隙においてのみ有意な血管狭窄が生じていた。肋鎖間隙では鎖骨下動静脈が腕神経叢よりも後下方を走行しているという解剖学的特徴があるため,血管よりも神経の圧迫が先行すると報告されているが,本研究では痺れやだるさといった症状に加え,指尖の色調が暗赤色に変化するといった静脈圧迫性の症状が出現しており,神経性及び血管性の所見が複合する結果であった。【理学療法学研究としての意義】本研究のようなデータの蓄積は各テストの特徴を明らかにし,TOSの病態解明の一助となるとともに,超音波診断装置のTOS評価としての有用性など,様々な点でリハビリテーションへの応用が可能である。
著者
中澤 理恵 坂本 雅昭 中川 和昌 猪股 伸晃 小川 美由紀 武井 健児 坂田 和文 中島 信樹
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.C0562-C0562, 2008

【目的】<BR> 我々は,応急処置および傷害予防を目的とし,平成16年度から年間4大会開催される群馬県高等学校体育連盟(高体連)サッカー競技大会において,理学療法士(PT)によるメディカルサポートを行ってきた。それらの内容はすでに,第40回・第41回本学会で報告済みである。本研究の目的は,過去3年間の群馬県高体連サッカー競技におけるメディカルサポートの内容を整理し,今後の課題を明らかにすることである。<BR>【対象及び方法】<BR> 対象は平成16年度(H16),平成17年度(H17),平成18年度(H18)に開催された群馬県高体連サッカー競技12大会に出場した544校703試合とした。年間に開催される大会は,群馬県高校総合体育大会,全国高校総合体育大会群馬県予選,全国高校サッカー選手権大会群馬県予選,新人大会兼県高校サッカーリーグの4大会である。PTのボランティア参加の募集は群馬県スポーツリハビリテーション研究会を通じて行い,各会場2名以上常駐するように配置した。また,メディカルサポートの内容は,試合前の傷害予防・リコンディショニング目的のテーピング等のケア,試合中(原則選手交代後)及び試合後の外傷に対する応急処置,ケアの指導とした。<BR>【結果及び考察】<BR> 参加したPTの延べ人数はH16:205名,H17:167名,H18:153名の計525名であった。メディカルサポートで対応した総学校数は延べ343校65%であり,H16:124校68%,H17:115校68%,H18:104校60%と各年とも6割以上の学校がサポートを利用していた。H18の対応校割合の減少は,PTが専属に所属する学校数が増加したことが要因と考える(H16:5校,H17:6校,H18:8校)。また,対応選手数は延べ1355名(H16:514名,H17:481名,H18:360名)であり,対応件数は2461件(H16:847件,H17:938件,H18:676件)であった。その傷害部位の内訳は上肢221件,体幹232件,下肢1944件であり,足関節が753件31%と最も多く,サッカー選手の傷害に関する過去の報告と同様の結果となった。また,サポート内容の内訳はテーピング1327件54%(H16・H17:各54%,H18:53%),アイシング550件23%(H16:23%,H17:22%,H18:21%),ストレッチング266件11%(H16:11%,H17:10%,H18:12%),止血処置31件1%(H16:2%,H17・H18:各1%),傷害確認及び今後のケア指導287件12%(H16:8%,H17・H18:各13%)であり,H17からは傷害確認及び今後のケア指導の割合が増加した。傷害に対するその場での対応のみならず,今後のコンディショニングやリコンディショニングに関する指導技術の向上を図る必要性が示された。