著者
武知 優子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.1-8, 2005 (Released:2017-08-08)
参考文献数
11
被引用文献数
2

日本に住む子どもが, 「女の子に似合う楽器」「男子向きの楽器」といった楽器とジェンダーを結びつけた認識, すなわちジェンダー・ステレオタイプを抱いているのかを, 楽器に対する好みと共に検討するため, 小学4~6年生338名 (男子175名, 女子163名) を対象に質問紙による調査をおこなった。取り上げた12の楽器のうち, ドラム, ギター, トランペットについては男子向きの楽器, ハープ, ピアノ, フルートについては女子向きの楽器という認識を抱いている児童が多かった。好みについては人気の高い楽器が男子と女子では異なり, 男子はギター, ドラム, 女子はハープ, フルートを好むものが多かった。楽器に対する好みの性差はジェンダー・ステレタオイプと関連があり, 男子は男子向きというステレオタイプのある楽器を好み, 女子は女子向きというステレオタイプのある楽器を好む傾向がみられた。最後に, この結果にもとづく音楽教育現場への提案を行った。
著者
武知 優子 森永 康子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.13-24, 2010

<p> 本研究では, 職業的音楽家を志してきた若い成人を対象に, その過程にはどのような課題があったのかを, 質的に検討することを目的とした。主に学校卒業以降の困難や葛藤の詳細に焦点をあて, インタビュー調査から得られたデータの分析をおこなった。その結果, 6つの課題が抽出された。学校卒業時には, 仕事内容や仕事の獲得方法など, 職業としての音楽についての知識や情報が不足しており, このことは職業生活への移行を漠然とさせていた。仕事を始めてからも, 志の揺らぎや, 否定的な評価を受けるといった困難が認められた。ある程度音楽の仕事が増加してきても, 音楽以外の仕事とかけもちすることによるアイデンティティの葛藤や, 音楽的充実感と収入をはかりにかけるといった葛藤が認められた。また, 職業的音楽家として自立した生活を送りつつある協力者であっても, 音楽の仕事を継続した将来を展望することは難しく, 音楽を志す若者の人生設計が, 大変不確実なものであることがうかがえた。</p>