著者
田中 正文 毛利 元彦 水村 和枝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

今回の一連の実験では、長期間閉鎖・隔離された環境(海洋科学技術センター設置の潜水シミュレーターを使用)にお互いに未知である20代の男性5人を被験者とし、そこでの人間関係を中心とした行動パターンやそれに伴う心身両面でのストレス度について研究した。測定項目は共同生活中の人間関係を含む行動分析、精神的ストレスの知覚への影響や計画立案などの精神集中度の変化、対人関係の距離などであった。さらに、閉鎖・隔離環境への隔離前後、隔離中の血液分析により、内分泌系ストレス因子やNK活性の測定を行うとともにアクティグラム使用による行動量の測定、睡眠時の脳波や心電図解析により自律神経機能の変化をも検討した。結果の概要:5人で開始した実験であったが、開始2日目に1人の被験者が脱落し、以降は4人で行った。今回もリーダーの役割を果たす者の存在は認められず、結果的に2-1-1の集団構造に落ち着いた。このような構造の中で、他の成員から排斥されていると感じていた2人の被験者において内分泌系ストレス因子の顕著な上昇が観察され、閉鎖・隔離終了まで他の2人の被験者とは有意な差が認められた。閉鎖・隔離環境は刺激が少ない環境である。そこでストレスを最小限に押さえ、出来るだけ快適な生活を送ろうとすれば、自分たちで刺激を減少させる方向に彼らの行動を制御した。それは、例えば、被験者間のコミュニケーションの減少や環境内での行動量の減少であった。このような現象は現代社会において顕著に観察されていることであり、現代の人々、特に若者たちが新しい状況に直面したとき、人間関係も含む状況への適応能力において劣っていることを再証明したことになる。
著者
嶋宮 民安 北間 敏弘 長田 誠 相部 洋一 小松原 修 野副 晋 篠原 正典 碓氷 章 寺田 信幸 毛利 元彦 Shimamiya Tamiyasu Kitama Toshihiro Osada Makoto Aibe Yoichi Komatsubara Osamu Nozoe Susumu Shinohara Masanori Usui Akira Terada Nobuyuki Mori Motohiko
出版者
宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究本部
雑誌
宇宙利用シンポジウム 第24回 平成19年度 = Space Utilization Research: Proceedings of the Twenty-fourth Space Utilization Symposium
巻号頁・発行日
pp.351-352, 2008-03

Living in space must entail life in a cramped confined space, as well as monotonous sounds, smells, food and scenery. There are still few studies on human health in long-term closed habitation. We have investigated changes in the psycho-physiological status of humans in a series of closed habitations with re-circulated air, water and waste products. In this report, we describe a closed habitation experiment conducted at the Institute for Environmental Sciences and the outcomes obtained through discussion in our working group.
著者
奥田 真也 松岡 成明 毛利 元彦
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
産業医大誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.247-261, 1988
被引用文献数
7

大陸棚海域の開発に必要な水深300mの海中作業技術の確立と安全潜水技術の確立を目的として行われた横須賀の海洋科学技術センターの潜水シミュレーション実験に過去5年間参加した. 我々は二次元脳電図法を用いて, 1)高圧神経症候群(HPNS)に特有な脳波変化があるか, 2)脳波の変化と潜水時のHe-O<SUB>2</SUB>環境下での加圧・減圧速度との関係, 3)脳波の変化と特徴ある神経症状との相関の有無を検討した. 対象として,300m飽和潜水には17名(加圧速度25m/hr), 180mに6名(12m/min), 130mに6名(12m/min), 60mに13名(12m/min)の健康な飽和潜水経験者を採用した. 加圧時の環境制御は, 酸素分圧0.79bar, ヘリウム分圧29.91bar. 特徴ある脳波所見とし, 前頭正中部にθ波, およびdiffuse α波を, ときに痙撃波を認めた. 臨床的には全例にHPNSを認め, 上記脳波出現時に, 笑い発作, 多幸感が特徴的であった. これは高圧下のヘリウム麻酔効果による影響と推察されるが, ダイバーにより個人差がみられた. 従ってダイバーの選択並びに生理学的反応を知るには脳波学的検査は重要なモニターとなりうる.