著者
井澤 信三 霜田 浩信 氏森 英亜
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.111-121, 2007-09-30 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
2

本研究では、自閉性障害生徒における社会的スキルに対する自己モニタリング指導の効果を検討した。対象生徒は、知的障害のある仲間との共同作業活動(木工作業〉を実行し、その活動に必要な社会的スキルが標的とされた。まず、自己モニタリング導入条件では、対象生徒自身が社会的スキルに対する自己モニタリングシートに、「はい(できた場合)」または「いいえ(できなかった場合〉」のどちらかに○をつけるという手続きであった。しかし、社会的スキルの適切な遂行には至らなかった。そこで、次に、社会的スキルに対する自己モニタリングの適切性を高めるためのビデオフィードバックを含んだ自己モニタリング指導条件を導入した。その結果、正確な自己モニタリング率および適切な社会的スキルの遂行が高まった。自己モニタリング指導の有効性、および社会的スキル遂行および正確な自己モニタジングとの関係について考察が行われた。
著者
井澤 信三 霜田 浩信 氏森 英亜
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.33-42, 2001-11-30

本研究は、自閉症生徒間の社会的非言語行動連鎖において、「相手の行動遂行の中断状況を設定する(以下、中断操作と記す)」という行動連鎖中断法によって、仲間の行動を促す要求言語行動(「○○君、どうぞ!」)を成立させること、他の社会的行動連鎖においても中断操作が要求言語行動を生起させるかを検討すること、を目的とした。初めに自閉症3生徒間における社会的非言語行動連鎖(ボーリング)を形成し、その後、連鎖の途中での中断操作を行った。般化プローブでは他の社会的行動連鎖(黒ひげ・ダーツ)において中断操作の有無を変数とした。結果は、行動連鎖中断法により社会的非言語行動連鎖に要求言語行動を組み込むことができたこと、中断操作が標的行動の生起を制御する変数であること、を示した。中断操作は条件性確立化操作として機能したことが示唆され、行動連鎖の文脈としての意義と要求言語行動の機能化という観点から考察が加えられた。
著者
小笠原 恵 氏森 英亜
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.45-56, 1990-09-30

本研究では、重度の精神発達遅滞児の要求言語形成のために、機会利用型指導法にマンド・モデル法を付け加えた指導法を導入した。本児のマンド発現を促すために、強い強化機能をもつと推測される遊具を導入し、その効果を検討した。また、指導者からの言語的手掛りや言語モデルを除去していく手続きの検討を加えることを目的とした。そのために本児がベースライン期に最も長い時間遊んでいたことから、強化機能が強いと推測されるブランコを本児が一人では乗ることの出来ない高さまで上げた。そのうえで、本児がブランコに触った時に、指導者は「なーに」という言語的手掛りを与え、反応が無いときには「やって」という言語モデルを示した。介入期1では言語モデルを、介入期2では言語的手掛りを固定遅延呈示し、介入期2で言語モデルを、フォローアップ期で言語的手掛りを除去した。その結果、介入期1では、マンド・モデル法を導入することにより、反応型を形成できた。介入期2では言語的手掛りに反応するという日常場面でよくみられる自然な形での反応へと移行した。さらに、言語的手掛りも除去し、ブランコという物理的刺激および指導者の存在という対人的刺激のみにしたフォローアップ期でも、一定水準の要求語の自発がみられた。