著者
近藤 裕昭 有沢 雄三 鵜野 伊津志 尾形 和彦 木村 富士男 斉藤 朝夫 鈴木 基雄 高橋 俊二 中西 幹郎 中埜 幸宏 水野 建樹 安楽岡 顕 吉門 洋 劉 発華 若松 伸司
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.41, no.11, pp.751-760, 1994-11-30
参考文献数
18
被引用文献数
9

気象研究所,東北大学,国立環境研究所,資源環境技術総合研究所でそれぞれ運用されている局地循環モデルの相互比較実験を,昼間の二次元の海風を対象として行った.地表面の熱的な境界条件を地表面温度で与え,午前6時をスタートとする正弦関数とした.各モデルの固有の接地境界層のモデル化から顕熱輸送量を決定するCASE1と,顕熱輸送量をC_hUΔθで統一的に与えるCASE2の二種類の計算を行ったところ,海風の発達についてCASE1では一致した結果にはならなかったのに対し,CASE2では海風循環の大きさと強さ,地上風速,海風発達後の海風前線の位置について一致した結果が得られた.これより,昼間の海風の発達には地表面からの顕熱輸送量が重要で,これが適切に与えられれば計算された海風の主要な特徴については各モデルで一致することがわかった.
著者
兼保 直樹 吉門 洋 水野 建樹 田中 敏之 坂本 和彦 王 青躍 早福 正孝
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気汚染学会誌 (ISSN:03867064)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.80-91, 1994

関東地方で初冬季に出現する広域・高濃度NO<SUB>2</SUB>現象の要因として, 数値実験的にはその寄与が指摘されていたNO<SUB>x</SUB>-炭化水素系光化学反応を, 野外観測によって捉えることを試みた。 NO<SUB>2</SUB>の高濃度 (>90ppb) が観測された1991年11月26, 27日および12月6, 7日に東京都都心部の高層ビル屋上および地上, 東京湾岸の東京都環境科学研究所, 関東平野内陸部の4地点および筑波山頂上において光化学反応に関与する物質の測定を行い, 各物質濃度の経時変化を検討した。<BR>東京都都心部でのperoxyacetylnitrate (PAN) 濃度は最高3.9~11.7ppbと高濃度を示し, 経時変化は [PO (=NO<SUB>2</SUB>+O<SUB>3</SUB>)-NO<SUB>2</SUB><SUP>Prime</SUP> (直接排出起源のNO<SUB>2</SUB>)] の経時変化と類似した挙動を示した。 高層ビル屋上で測定されたNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は12月7日以外の3日間は日中に顕著な増加を示し, 特に12月6日に最高59μgm<SUP>-3</SUP>と非常な高濃度に達した。 アセトアルデヒド/CO比は12月6, 7日の日中に顕著な増加を示した。 これらの指標物質の挙動から, 高濃度NO<SUB>2</SUB>の出現時に光化学反応が生じていたことが明らかとなった。 また, 船舶による東京湾内での観測結果より, 東京湾上空ではPOはO<SUB>3</SUB>の形で存在する割合が大きいことが示唆された。 さらに, 関東平野内陸部での観測結果より, 冬季光化学大気汚染はNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の生成を通して高濃度SPM現象の一因となる場合があることが明らかとなった。
著者
水野 建樹 近藤 裕昭 吉門 洋
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.171-180, 1993-03-31
被引用文献数
9

関東地方では,移動性高気圧の後面から総観規模の寒冷前線が通過し去る間,内陸部下層に逆転層が形成され東京湾上に局地不連続線が生じる場合がある.初冬にはこの不連続線の形成に伴って大気汚染が悪化する.観測によれば,局地不連続線はそれまで関東平野部をおおっていた大気に比べて相対的に暖かい西よりの風が,中部山岳を北回りにあるいは南回りに関東内陸部上空に達したとき出現しており,これは関東内陸部では中部山岳部が壁となって下層によどみ域が発生する一方,関東南岸には障害物がないため西よりの風が卓越しているためと考えられる.局地不連続線は両者の気団間で出現する.このとき,館野上空 1000m程度の風向は約210〜310度にあり,館野高層データから求めたフルード数は風向によって変化するが,およそ0.3〜1.3程度であった.また局地不連続線は,それに先だって南〜西よりの風が少なくとも半日程度持続しているとき多く出現していることがわかった.