著者
橋本 幸士 富谷 昭夫 野尻 美保子 大槻 東巳 田中 章詞 樺島 祥介 福嶋 健二 今田 正俊 永井 佑紀
出版者
京都大学
雑誌
学術変革領域研究(A)
巻号頁・発行日
2022-06-16

従来、実験と理論の両輪により進展してきた物理学において、理論的な原理や数理の探索と技術の発展による実験の発展が、宇宙と物質の新しい姿を明らかにしてきた。この両方に寄与してきた計算科学では近年、機械学習という技術革新が社会的変革をもたらしている。そこで我々は「学習物理学」領域を創成し、機械学習やそれを含むデータ科学の手法、緩和数理やネットワーク科学等を物理学の理論的手法群と統合し、基礎物理学の根本課題である新法則の発見、新物質の開拓を行う。素粒子・物性・重力・計算物理学のそれぞれと機械学習の融合を、数理・統計・位相幾何の観点から統合的に遂行し、新領域「学習物理学」を勃興させる。
著者
永井 佑紀
出版者
分子シミュレーション学会
雑誌
アンサンブル (ISSN:18846750)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.31-39, 2021-01-31 (Released:2022-05-14)
参考文献数
27

自己学習ハイブリッドモンテカルロ法(Self-learning Hybrid Monte Carlo Method (SLHMC))法とは, 「第一原理分子動力学法と同じ精度が保証された」機械学習分子シミュレーションである. この手法について解説を行う. 第一原理分子動力学法(密度汎関数理論によって計算されたポテンシャルを用いる手法)は計算コストが高いために, 最近では機械学習分子動力学法が使われ始めてきている. この手法は広く用いられてきているが, 実行される結果の精度が用いた人工ニューラルネットワークの質に左右されるために, どのくらいのデータを学習すればよいのか, どこまで学習すれば十分な精度が得られるのか, 等を判断することが難しい. また, 第一原理分子動力学計算では計算が難しいより大きな系に機械学習分子動力学法を用いる場合, そもそもその領域で正しい結果となっているのか, 注意深く調べなければならない. 本原稿では, 機械学習分子動力学法の概略と問題点について述べたあと, これらの問題を解決するために,SLHMC 法の紹介を行う.