著者
永井 健治
出版者
大阪大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2016-04-01

【5年間の成果を総括した書籍「少数性生物学」の出版】領域研究にて得た研究成果をまとめた書籍「少数性生物学」(日本評論社、2017/3/25発行、永井健治/冨樫祐一 編集)を出版した。書籍編集にあたっては、単に領域の顕著な成果を取りまとめた内容とするのではなく、「少数性生物学」という学問を俯瞰的にまとめたストーリー展開とするよう、計画班員を中心としたメンバーで、編集会議にて検討を重ね、18のテーマに絞込んだ内容とした。現在、日本国内にとどまらず、世界に向けて研究成果を発信すべく、英語版の書籍出版の編集作業を行っている。【研究成果発信】領域活動や研究成果をまとめた領域ニュースレター最終号を発行した。ニュースレターには、最終年度の研究成果報告、活動報告に加え、領域活動に係ったすべてのメンバーの領域へのことばを掲載し、総ページ数87ページにわたる、最終号にふさわしい内容となった。【企画研究会】領域運営期間中に領域活動として行っていた研究会の中で、特に発展性が高いと見込まれる研究会について、将来展望を探るための活動を行った。「少数性生物学デバイス研究会」を11月に開催し、今後も活動を継続することとなった。「少数性生物学データ検討会」、「産学アライアンス討論会」については、他の研究会と統合し、「先端的バイオ計測研究会」として継続することとなり、3月に研究会を開催した。【少数性生物学からの発展研究検討】本研究領域の研究対象が「観察・実験可能である」ことを示した成果を基盤として、今後も実験事実に基づいた「少数性生物学」の成果を世界に向けて発信し、分野の発展や定着に向けての努力の継続を行うため、計画班員を中心としたメンバーで複数回にわたって会議を開催した。その結果、少数の要素や小さな変化がいかにして大きな変化を生み出すかを探求する新たな新学術領域「シンギュラリティ生物学」を継続課題として申請することとなった。
著者
永井 健治 松田 知己
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.305-310, 2015 (Released:2015-11-28)
参考文献数
30

After the gene cloning and development of GFP color variants about 20 years ago, fluorescent and luminescent proteins have become indispensable tools for biological research. Their genetically encodablity and light-emitting property has revolutionized our research ability by allowing the visualization of variety of living specimen ranging from biochemical events, proteins, cells, and organisms. Detailed understanding of the physicochemical mechanisms responsible for light generation has helped drive performance improvements and application development. Here we will cover basics of light-emitting proteins, as well as the use of them for bioimaging and biomanipulation.
著者
永井 健治 宮脇 敦史
出版者
日本サイトメトリー学会
雑誌
サイトメトリーリサーチ (ISSN:09166920)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.1-10, 2003-06-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
30

The discovery and development of green fluorescent protein (GFP) from the jellyfish Aequorea victoria and,more recently red fluorescent protein (dsRed) from the sea anemone Discosoma striata, have revolutionized our ability to study biological function such as protein localization, dynamics and interactions in living cells. The usefulness of GFPs derives from the finding that the fluorescent property of GFPs requires no other cofactor: The fluorophore forms spontaneously from the cyclization of the peptide backbone. Although GFPs promise high sensitivity and great versatility for biological applications, they sometimes send irresponsible signals because of the properties such as their sensitivity to pH and chloride fluctuations and photobleaching. Therefore, GFP users should be careful in interpreting the fluorescent signals from GFP variants to obtain reliable biological data. On the other hand, by using the characteristics, a wide range of application could be done. In this review, we will present 1) an overview of the physicochemical properties of GFPs, and 2) the valuable applications of GFP for biological research, including circularly permuted GFP technology and GFP-based fluorescence resonance energy transfer technique as well as their potential in a variety of biological sensors.
著者
永井 健治
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、光照射によって、蛍光活性化する生理機能センサータンパク質を開発することで、生きた細胞内や個体内の、ナノからマクロに及ぶ、様々な空間スケールにおける生理機能を高感度に観察する手法を構築することを目的とした。昨年度に作製したPA-GFPとDsRedをFRETのドナー・アクセプターとして利用した光活性化型Ca^<2+>指示薬PA-cameleonは光活性化前の状態でもDsRedによる青色励起光の吸収により蛍光が観察されたため、光活性化の利点の1つである高いコントラストを実現することができなかった。その一方で、405nmのレーザーを照射し、PA-GFPを活性化すると、緑色の蛍光が現れ、リガンド刺激に伴う細胞内Ca^<2+>濃度の変化を捉えることができた。本年度はDsRed以外の赤色蛍光タンパク質や緑色光を吸収するが蛍光性の無い色素タンパク質を用いる事で光活性化によるコントラストのさらなる増加が実現できないかを検討した。その結果、試験管内、細胞内のいずれにおいても405nmの刺激光照射によって不可逆的に無蛍光状態から蛍光性を獲得することが確認され、刺激光の照射範囲をガルバノミラーなどで制御することで、培養ディッシュ上の特定の細胞にPA-cameleonを出現させ、その細胞内のCa^<2+>動態を高いコントラストで可視化することに成功した。さらに、ゼブラフィッシュ幼魚における特定の筋細胞の自発的収縮とCa^<2+>濃度の変化を同時に観察することにも成功した。本方法はCa^<2+>指示薬以外のFRET指示薬にも原理的には応用可能であるため、光活性化指示薬開発のための汎用的指針として、その利用が期待される。