著者
片岡 一則 Cabral Horacio 津本 浩平
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2018-06-29

免疫チェックポイント阻害剤によるがん免疫療法を膠芽腫に対して奏功させるためには、膠芽腫が形成する血液脳腫瘍関門を突破するとともに膠芽腫内の免疫チェックポイント阻害剤の濃度を格段に高められる革新的技術の開発が不可欠である。そこで、本研究では、免疫チェックポイント阻害剤をコードする伝令RNA(mRNA)の構築とmRNAを膠芽腫に届ける高分子ミセルの開発に取り組むことにより、膠芽腫内で大量の免疫チェックポイント阻害剤を持続的に増幅産生させ、膠芽腫を徹底的に駆逐できるがん免疫療法を開発する。
著者
片岡 一則 横田 隆徳 位髙 啓史 津本 浩平 長田 健介 石井 武彦 西山 伸宏 宮田 完二郎 安楽 泰孝 松本 有 内田 智士
出版者
公益財団法人川崎市産業振興財団(ナノ医療イノベーションセンター)
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2013

脳は高度に発達した生体バリアに守られているため薬剤の送達が極めて困難な部位である。本研究では、この生体バリアを克服して核酸医薬を脳内に送達して機能させるウイルス・サイズの薬剤送達システムを、高分子材料の自己組織化(高分子ミセル化)に基づいて構築した。すなわち、(1)血管内腔側内皮に局在するグルコース輸送タンパク質を標的とするグルコース結合型高分子ミセルを創製し、血管内腔からの脳内薬物移行を制限する内皮細胞バリア(血液脳関門)を突破して核酸医薬を脳内送達する事によって、アルツハイマー病(AD)の発症に関わる酵素の産生を抑制する事に成功した。(2)生体内で速やかに酵素分解を受けるmRNAのミセル内包安定化を達成し、脳室内局所投与による単鎖抗体のその場産生を実現する事によって、AD発症に関わるタンパク質であるアミロイドβ量を有意に低下出来る事を実証した。
著者
前仲 勝実 福原 秀雄 橋口 隆生 CAAVEIRO Jose M. M. 長門石 曉 黒田 大祐 津本 浩平
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.082-089, 2021 (Released:2021-03-25)
参考文献数
29

Recent virological researches using biophysical methods, termed as virus biophysics or virophysics, largely contribute to the development of anti-viral drugs and vaccines. In this review, examples of structural and physicochemical analyses for representative viruses to develop drug modalities such as small compounds, antibodies, and vaccines are explained, and future direction of biophysical research for virus research is also discussed.
著者
津本 浩平
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.412-423, 2013-11-25 (Released:2014-03-01)
参考文献数
47

抗体はその高い抗原特異性、親和性から、治療薬、診断薬に用いられており、各分野で抗体開発が盛んに行われている。抗体配列遺伝子が手に入れば、我々は、その抗体が持つ機能を認識素子として利用し、さまざまな改変抗体を構築することができるようになっている。しかしながら、抗体がどのように抗原に対して高い特異性・親和性を創出するかについて、構造的に、またエネルギー的に理解されるようになったのはごく最近のことである。本稿では、抗原抗体相互作用を生物物理学的にどのように性格づけするかについて、まず、代表的な解析方法についてまとめ、つづいて抗体が標的分子をどのように認識し、高親和性を創出しているかについて述べる。