著者
青江 麻衣 朴 炫宣 安原 智久 串畑 太郎 上田 昌宏 永田 実沙 江﨑 誠治
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-029, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
12

大阪大谷大学で,薬学生にとって基本となる50個の化合物を題材とした構造式かるたを作成した.その「かるた」を活用し,薬学部初年次学生を対象に,学習に対する動機付け及び有機化学の基礎となる事項の理解や知識の定着につながるよう学習方略を立案・実践し,試験とアンケートにより評価した.アンケート結果を用いたクラスター分析より,学生は4つのクラスターに分けられた.また,自由記述について,各クラスターを目的変数として対応分析を行った結果,化学を好きと評し,「かるた」への興味をもつ傾向にある成績上位群では「復習-新しい-知識」,化学を嫌いと評する傾向にある成績下位群では「構造-覚える」などの抽出語との関連が確認された.これより,本方略を知識定着への手段とした群や「かるた」の内容の短期記憶の手段とした群などを見出すことができ,成績下位群ほど,短期記憶に頼る傾向がみられることが明らかとなった.
著者
安原 智久 串畑 太郎 永田 実沙 岩田 加奈 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-021, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
18

6年制薬学教育では研究能力の養成が求められているが社会調査研究に関してはほとんど行われていない.我々は将来の就職先に関わらず臨床上の問題を抽出し,適切な測定と統計解析の実践による研究ができる薬剤師の養成を目指し,基礎的な知識・理解を担保するチーム基盤型学習(TBL)と自由度の高い問題解決型学習(PBL)を共存させたハイブリッド型演習プログラムを構築した.学生の演習への意欲を高めるため,本演習はARCSモデルによる教育デザインを行い,自分たちを対象としてテーマを自由に設定し,アンケートを自作し実際に調査するという実践(Does)を行った.演習終了後に行ったアンケートからは,本演習に対して肯定感の高い層は,評価の追求や競争心の有無に関わらず,将来の研究や学会発表に対して高い関心を示した.本演習が,社会調査研究を担う能力を有する薬剤師の養成という目的を達成する可能性のある教育プログラムであることが示唆された.
著者
安原 智久 臼井 晴香 木下 淳 安田 素子 串畑 太郎 上田 昌宏 永田 実沙 曽根 知道
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.10, pp.1115-1123, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

There is a need for pharmacists to be actively involved in home healthcare through a wide range of collaboration in healthcare and welfare. However, insufficient evidence is available to search for factors that prevent pharmacists from being proactive in home healthcare. In this study, we conducted an extensive questionnaire survey among pharmacists engaged in home pharmacy work who belong to the Hyogo Pharmaceutical Society regarding the current status of pharmacists' work in home medical care and their psychological burden; we also explored the factors that may hinder the future development of home medical care. As a result, 925 (44%) valid responses were obtained, and seven factors— “current multidisciplinary cooperation”, “relationships with patients and their families”, “emotional burden for home healthcare”, “attitude toward patients”, “ideal of multidisciplinary cooperation”, “anxiety about aggressive intervention”, and “anxiety about talking to and dealing with patients”— were extracted. Furthermore, it was suggested that pharmacists' mental burden and anxiety are closely related to their successful experiences in building relationships with patients and patients' families as well as with multidisciplinary cooperation in home healthcare. Therefore, to train pharmacists to be actively involved in home healthcare, it is important not only to impart knowledge and skills but also for them to gain experience practicing their contributions as pharmacists in the field of home healthcare with multiple professions, patients, and patients' families.
著者
上田 昌宏 山田 諒 串畑 太郎 永田 実沙 栗尾 和佐子 安原 智久 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-028, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

学習方略の適切な設定は,効果的な教育を行う上で必須であるが,方略を比較,検証した研究は少ない.今回,防災に対する意識を涵養するため,シミュレーション(HUG)と講演を組み合わせた学習プログラムをデザインしたが,学習環境の制限により,方略の順序が異なる2クラスでの実施となった.本研究では,順序違いが学習効果に及ぼす影響を検証した.プログラム前後に防災に関するアンケート調査を実施し,Fisherの正確確率検定を行った.その結果,HUG先行群では,災害現場での行動に自信を持ち,上位年次での災害研修への参加意欲につながることが示され,講演先行群では,災害支援への意欲が向上することが示唆された.どちらの方略でも,受講者が災害医療を考えるきっかけとなり,被災地の様子をイメージできることが示された.1回の測定だが,学習効果に違いが出たことから,学習目標に合わせた方略をデザインし,教育を行う必要があることが示唆された.
著者
永田 実沙 青江 麻衣
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2022-016, 2022 (Released:2022-05-25)
参考文献数
15

大学教員は個々の裁量が大きく負担度も自律性も高い職業であり,やりがいがある.一方で,ワークとライフの分別が困難な業務が多くもあり,結婚・出産・育児・介護などのライフイベントが発生した場合に困難を抱える場合がある.本来ライフイベントの発生に男女差はないはずだが,現状,女性研究者の離職が比較的多い状況となっている.我々は,どのような原因や葛藤が就労継続を困難にしているかを明らかにすることが第一歩になると考え本シンポジウムを企画した.本シンポジウムでは,ライフイベントと就労継続の困難さについて,特に育児に焦点を合わせて情報共有するとともに議論を促すことを目的とした.本総説では,シンポジウムの実施内容と共にシンポジウム実施後に実施したアンケート結果,また現在進行中の「就業継続」に関する質的研究の概要について報告する.
著者
永田 実沙 岩田 加奈 曽根 知道 安原 智久
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.139, no.5, pp.817-826, 2019-05-01 (Released:2019-05-01)
参考文献数
22
被引用文献数
5

The use of medical supply vehicles (mobile pharmacies) as a disaster measure developed after the Great East Japan Earthquake in 2011 when a massive tsunami destroyed the medicine supply system. In the 2016 Kumamoto earthquake, mobile pharmacies were dispatched from Oita, Wakayama, and Hiroshima and contributed to medical treatment in the disaster area. In this study, we conducted an interview to structure the mental conflicts of the pharmacists supporting the disaster victims by means of the mobile pharmacies, a novel medical support tool. We conducted a semi-structured interview of 21 pharmacists. The modified grounded theory approach was used for data collection and analysis. As a result, 36 concepts and 13 categories were generated. The support pharmacists maintained mobile pharmacies as a method for cooperation among multiple occupations, and talked about further collaboration in the operation of mobile pharmacies.