著者
上田 昌宏 高垣 伸匡 恩田 光子 荒川 行生 庄司 雅紀 大森 志保 清水 忠
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.140, no.2, pp.301-312, 2020-02-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
21
被引用文献数
3 2

In Japanese pharmaceutical education, the Model Core Curriculum was revised in 2013 to train pharmacists who can appropriately evaluate literature and use evidence-based medicine (EBM). However, in the investigation of EBM education at pharmaceutical universities in 2015, it was found that literature evaluation was hardly performed in the education of undergraduate students. One of the reason is the lack of EBM lecturers at each universities. Therefore, we adopted team-based learning (TBL) to educate more than 50 undergraduate students on the practical evaluation of literatures and the understanding of EBM concepts. The learning outcomes of this strategy were evaluated using the scores of individual tests before and after the class. As a result, the mean scores on the post-test significantly improved from 4.34 to 6.42 out of 10 total points (p<0.001). We further administered a questionnaire survey regarding the understanding of EBM (the mean score was 4.12). In conclusion, it was suggested that TBL for a large number was effective in EBM education for providing knowledge of literature evaluation and the understanding of fundamental concepts.
著者
清水 忠 上田 昌宏 豊山 美琴 大森 志保 高垣 伸匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.8, pp.987-998, 2017 (Released:2017-08-01)
参考文献数
12
被引用文献数
3

This study evaluated the effect of an evidence-based medicine (EBM) educational program on EBM-related knowledge and skills of pharmacists and pharmacy students. Our preliminary educational program included the following four sessions: 1) ice breaker, 2) formulation of answerable clinical questions from virtual clinical scenario using the PICO criteria, 3) critical appraisal of the literature using a checklist, and 4) critical appraisal of the results and integrating the evidence with experience and patients values. Change in knowledge and skills related to EBM were evaluated using pre- and post-seminar 4-point scale questionnaires comprising of 14 questions. A total of 23 pharmacists, 1 care manager, and 5 pharmacy students participated in our EBM educational seminar. Knowledge and skills related to several variables improved significantly post-seminar (pre-seminar 2.80 versus 3.26 post-seminar; p<0.001). Specifically, the skills of formulating answerable clinical questions from virtual clinical scenario and critical appraisal of the literature using a checklist improved. Our findings suggested that EBM educational program using problem-based learning was effective in improving EBM-related knowledge and skills of pharmacists and pharmacy students.
著者
清水 忠 西村 奏咲 上田 昌宏
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.8, pp.1085-1093, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
7

Recently, it has been reported that only a small number of sixth-year students who had undergone a long-term pre-clinical training in the fifth year found organic chemistry useful. To explain this, we hypothesized that pharmacists are unable to utilize the knowledge of organic chemistry to solve clinical problems. With the aim of addressing this problem, we conducted a workshop consisting of a series of lectures and exercises on structural similarity, solubility, absorption, and metabolism of drugs based on a chemical structural formula. Then, we administered a questionnaire survey to 253 participants who had participated in our workshop. The questionnaire comprised 17 questions, and free descriptions were analyzed using text mining. Results showed that, although about 45% of the participants confirmed the chemical structural formula described in the medical package insert, and about 22% of the participants had the opportunity to check the metabolites described in the drug interview form, more than 90% of the participants were interested in the workshop contents. Thus, pharmacists may want to learn how the process of utilizing the chemical structural formula can be applied to their clinical practice.
著者
上田 昌宏 大原 隆司 高垣 伸匡 伊藤 栄次 大森 志保 清水 忠
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.2018-041, 2019 (Released:2019-12-26)
参考文献数
13

薬剤師が信頼性の高いプロトコールを作成するために,診療ガイドラインだけでなく,推奨文の根拠となっているシステマティックレビュー(SR)論文を評価・活用することが求められる.しかし,大学教育および生涯研修においてSR論文の評価と活用に関する実践的な教育についての報告はごく限られている.本研究では,SR論文の評価と活用を志向したワークショップの実践による知識習得度の変化と受講者のEBMの実践可能性への意識とワークショップの理解満足度について調査した.知識習得度確認試験の受講後の平均点は受講前に比べ有意に向上した(9点満点,Pre:2.29点,Post:5.16点,p < 0.001).本研究により,SR論文の評価と活用を志向したワークショップは受講者のSR論文の評価に対する知識習得度の向上およびEBMの実践可能性に対する意識づけに寄与することが明らかとなった.
著者
清水 忠 上田 昌宏 豊山 美琴 大森 志保 高垣 伸匡
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.5, pp.655-666, 2018-05-01 (Released:2018-05-01)
参考文献数
30

Practicing evidence-based medicine (EBM) is likely to gain importance for clinical pharmacists in the relatively near future in Japan. An educational program including research and the critical appraisal of literature was required for pharmacy students as of 2015. We organized a six-month practical EBM course for pharmacy students at Hyogo University of Health Sciences. To evaluate its effectiveness, students took a 10-question test after completing the course. The mean score of six students was 8.33±1.79 points. We also conducted a 1-day practical EBM workshop for pharmacists. Changes in knowledge and skills related to EBM were evaluated based on the responses to 10 questions. Knowledge and skills related to several variables improved significantly after the workshop (6.36 points before versus 9.09 points after the workshop; p=0.023). The results suggested that our EBM educational course is effective in improving EBM-related knowledge and skills of pharmacists and pharmacy students.
著者
上田 昌宏
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2022-029, (Released:2022-05-25)
参考文献数
5

2020年からのCOVID-19の感染拡大に伴い,教育は大きな転換期を迎えた.薬学教育においても,対面授業が大きく制限され,薬学部教員の多くが,慣れないオンライン教育の実施を余儀なくされた.このため,薬学部教員は,全くノウハウがない中でそれぞれが独自に取り組みを行う必要に迫られた.2020年度内から教育系の学会では,オンライン教育の実施に関する情報共有の場が設定された.しかし,その多くは,成功体験や構築例の報告であり,意図せぬ小さな失敗や間違い(しくじり)を共有する機会は限られていた.そこで筆者は,薬学部教員を対象として,オンライン教育における「しくじり」およびその対策に関する調査を実施した.その結果,9名のしくじり先生から,報告を受けた.本稿では,しくじり先生の経験談を紹介することで,オンライン教育における「しくじり」を振り返る.今後の教育に活用し,良い点は継続し,改善すべき点は良くすることで質の高い教育を実践するためのPDCAサイクルを進める一助になることを期待している.
著者
上田 昌宏 安原 智久 串畑 太郎 栗尾 和佐子 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2020-059, (Released:2021-01-29)
参考文献数
6

COVID-19の影響により対面授業が大きく制限され,すべての科目において学習方略の変更を余儀なくされた.本学は,コミュニケーションを育む上で特に重要な時期である1年次,4年次に,small group discussion(SGD)を伴う科目を多く設定している.そのためSGDを実施しない選択は,コミュニケーション能力を醸成する機会を失い,教育効果に大きな影響を与えると考えられる.そこで,複数の科目において,オンラインSGDを試みたので,その運用方法や方略を記す.さらに,ピア評価から得られた結果から,評価基準が発言頻度に大きく依存し,非言語コミュニケーションは評価の対象になる程には発揮されなかったものと推測される.SGDの本質的な役割は,非言語を含んだコミュニケーションを通じての問題解決能力を養うものである.詳細な検証を行えていないことに留意しつつも,本質的な意味でのオンラインSGDがもたらす教育効果は,対面でのSGDと同等なものになりえないものと考えられる.
著者
清水 忠 上田 昌宏 大森 志保
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2017-021, 2018 (Released:2018-08-24)
参考文献数
13

近年,Evidence-based Medicine(EBM)の実践が薬学教育においても取り入れられるようになっている.今回我々は,薬学部3年次学生に対して実施した,講義および演習を組み合わせた授業方略について,学習効果の確認と改善点の抽出を行った.授業は,臨床疑問の定式化,医学論文の吟味,患者への適用,文献検索の順に行った.学習効果の評価は,8週目授業開始前のプレテスト,医学論文の吟味と適用まで終了した12週目の授業後に実施したポストテスト(19点満点)の結果を比較した.さらに,授業内容に対する受講生からの評価も行った.その結果,ポストテストの得点は有意に向上した(pre: 1.72 ± 1.89, post: 11.38 ± 4.16).本授業形態により受講生が受講後にEBMの概念や論文の吟味ポイントについての基本的知識を得ることはできたと考えられるが,受講生がエビデンスを活用して実践する能力を身につけたかについては,適切に評価できておらず,学習方略および評価方法を改善する必要がある.
著者
青江 麻衣 朴 炫宣 安原 智久 串畑 太郎 上田 昌宏 永田 実沙 江﨑 誠治
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-029, 2020 (Released:2020-12-25)
参考文献数
12

大阪大谷大学で,薬学生にとって基本となる50個の化合物を題材とした構造式かるたを作成した.その「かるた」を活用し,薬学部初年次学生を対象に,学習に対する動機付け及び有機化学の基礎となる事項の理解や知識の定着につながるよう学習方略を立案・実践し,試験とアンケートにより評価した.アンケート結果を用いたクラスター分析より,学生は4つのクラスターに分けられた.また,自由記述について,各クラスターを目的変数として対応分析を行った結果,化学を好きと評し,「かるた」への興味をもつ傾向にある成績上位群では「復習-新しい-知識」,化学を嫌いと評する傾向にある成績下位群では「構造-覚える」などの抽出語との関連が確認された.これより,本方略を知識定着への手段とした群や「かるた」の内容の短期記憶の手段とした群などを見出すことができ,成績下位群ほど,短期記憶に頼る傾向がみられることが明らかとなった.
著者
上田 昌宏 清水 忠
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2019-033, 2020 (Released:2020-04-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本研究では,受講生が主体的に論文を評価し,論文データの活用を学習できるチーム基盤型学習(team-based learning: TBL)を取り入れた授業コースにより受講生の論文評価能力が向上するかについて検証を行った.TBL 1回目と2回目の個人準備確認試験(iRAT)を比較した結果,2回目のiRATの平均点が(1回目:4.60 ± 2.11,2回目:6.49 ± 2.11,平均点の差:1.88[95%CI, 1.45–2.31])向上した.アンケートの単純集計から,受講生はチーム議論よりも試験解説で論文内容を理解できたと評価し,EBMの理解においては応用課題演習が重要であると評価していることが示された.さらに,因子分析とiRATの結果から,論文を理解できたと自己評価した受講者はiRATの得点が高い傾向にあった.以上のことから,TBLを取り入れた論文評価学習コースは,EBM実践に必要な論文評価能力の向上に寄与することが明らかとなった.
著者
清水 忠 西村 奏咲 安田 恵 村上 雅裕 橋本 佳奈 大野 雅子 桂木 聡子 上田 昌宏 天野 学
出版者
日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-014, 2018 (Released:2018-08-24)
参考文献数
7

薬学実務実習終了生を対象としたアンケート調査によれば,大半の学生は実習中に基礎薬学の知識を活用する機会は少なかったと感じていることが報告されている.その要因として,教員が基礎薬学は臨床現場でどのように役に立つかを具体的に説明できていないことが指摘されている.しかし,臨床現場での問題は基礎薬学が問題解決に有用となることもある.そのため,基礎系教員と臨床系教員が連携し基礎薬学の臨床現場での有用性を理解させ,それが可能であることを示すことが必要であると考えた.そこで,実務実習事前学習において有機化学を専門とする基礎系教員と実務家教員が連携した医薬品の配合変化に関する実習を実施し,終了後にアンケートを行った.この結果,受講生の90%以上が基礎薬学の内容が臨床の問題を解決するのに有用であることを意識できた.すなわち,基礎薬学が臨床現場でどのように役に立つかを意識させる実習を提供できたと考えられる.
著者
上田 昌宏
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.2022-029, 2023 (Released:2023-04-15)
参考文献数
5

2020年からのCOVID-19の感染拡大に伴い,教育は大きな転換期を迎えた.薬学教育においても,対面授業が大きく制限され,薬学部教員の多くが,慣れないオンライン教育の実施を余儀なくされた.このため,薬学部教員は,全くノウハウがない中でそれぞれが独自に取り組みを行う必要に迫られた.2020年度内から教育系の学会では,オンライン教育の実施に関する情報共有の場が設定された.しかし,その多くは,成功体験や構築例の報告であり,意図せぬ小さな失敗や間違い(しくじり)を共有する機会は限られていた.そこで筆者は,薬学部教員を対象として,オンライン教育における「しくじり」およびその対策に関する調査を実施した.その結果,9名のしくじり先生から,報告を受けた.本稿では,しくじり先生の経験談を紹介することで,オンライン教育における「しくじり」を振り返る.今後の教育に活用し,良い点は継続し,改善すべき点は良くすることで質の高い教育を実践するためのPDCAサイクルを進める一助になることを期待している.
著者
安原 智久 臼井 晴香 木下 淳 安田 素子 串畑 太郎 上田 昌宏 永田 実沙 曽根 知道
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.10, pp.1115-1123, 2022-10-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
17
被引用文献数
1

There is a need for pharmacists to be actively involved in home healthcare through a wide range of collaboration in healthcare and welfare. However, insufficient evidence is available to search for factors that prevent pharmacists from being proactive in home healthcare. In this study, we conducted an extensive questionnaire survey among pharmacists engaged in home pharmacy work who belong to the Hyogo Pharmaceutical Society regarding the current status of pharmacists' work in home medical care and their psychological burden; we also explored the factors that may hinder the future development of home medical care. As a result, 925 (44%) valid responses were obtained, and seven factors— “current multidisciplinary cooperation”, “relationships with patients and their families”, “emotional burden for home healthcare”, “attitude toward patients”, “ideal of multidisciplinary cooperation”, “anxiety about aggressive intervention”, and “anxiety about talking to and dealing with patients”— were extracted. Furthermore, it was suggested that pharmacists' mental burden and anxiety are closely related to their successful experiences in building relationships with patients and patients' families as well as with multidisciplinary cooperation in home healthcare. Therefore, to train pharmacists to be actively involved in home healthcare, it is important not only to impart knowledge and skills but also for them to gain experience practicing their contributions as pharmacists in the field of home healthcare with multiple professions, patients, and patients' families.
著者
上田 昌宏 山田 諒 串畑 太郎 永田 実沙 栗尾 和佐子 安原 智久 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.2020-028, 2020 (Released:2020-10-31)
参考文献数
10

学習方略の適切な設定は,効果的な教育を行う上で必須であるが,方略を比較,検証した研究は少ない.今回,防災に対する意識を涵養するため,シミュレーション(HUG)と講演を組み合わせた学習プログラムをデザインしたが,学習環境の制限により,方略の順序が異なる2クラスでの実施となった.本研究では,順序違いが学習効果に及ぼす影響を検証した.プログラム前後に防災に関するアンケート調査を実施し,Fisherの正確確率検定を行った.その結果,HUG先行群では,災害現場での行動に自信を持ち,上位年次での災害研修への参加意欲につながることが示され,講演先行群では,災害支援への意欲が向上することが示唆された.どちらの方略でも,受講者が災害医療を考えるきっかけとなり,被災地の様子をイメージできることが示された.1回の測定だが,学習効果に違いが出たことから,学習目標に合わせた方略をデザインし,教育を行う必要があることが示唆された.
著者
林 輝明 上田 昌宏 中澤 公揮 橋本 佳奈 桂木 聡子 天野 学 清水 忠
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2021-039, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
10

基礎実習や臨床事前実習の学習効果を向上させるためには,受講生が既に学習済の内容が実習内容と繋がっているかを予習し,関連する部分の知識を整理した上で実習に取り組むことが望ましい.我々は,臨床事前実習コースの化学的な知識を踏まえた配合変化の学習において,チーム基盤型学習(TBL)を導入し,応用演習の部分に実習を位置づけた方略を構築した.授業終了後に行ったアンケートの因子分析およびクラスター分析の結果から,臨床に関連する化学的な知識に自信がなくてもTBLを経験することによって,実習内容が理解できたと実感している可能性が示された.TBLと実習を組み合わせた本授業方略が,化学的な知識と臨床を繋ぐ実習内容の理解度を高める可能性のあるプログラムであることが示唆された.
著者
青江 麻衣 上田 昌宏 江﨑 誠治 清水 忠
出版者
Japan Society for Pharmaceutical Education
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.2021-040, 2022 (Released:2022-05-13)
参考文献数
23

本研究では,臨床事前実習を終えた4年生と臨床実習を終えた5年生を主な対象としたTBL法を用いたEBMワークショップの効果を測定した.学習成果は,ワークショップ開催時および2ヶ月後に実施した知識習得テストと,ワークショップ後のアンケートで評価した.参加者の文献評価能力は,ワークショップの2ヶ月後にも変化がなかった.臨床実習後の5年生は,臨床実習前の4年生に比べて,ワークショップ開催時および2ヶ月後のいずれにおいてもテストの平均点が高かった.アンケートの結果,5年生は4年生に比べてグループワークへの参加やEBMの必要性の認識を高く評価していた.この結果は,EBMに関するスキルの向上と,臨床実習中のEBMの必要性に対する意識の向上によるものと考えられる.臨床実習後にEBM講習会を実施することで,より強固なEBMスキルを身につけることができ,EBMの必要性に対する意識もさらに向上すると考えられた.
著者
上田 昌宏 恩田 光子
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2021-028, (Released:2022-01-26)
参考文献数
5

1次資料を含めた医薬品情報の評価と,患者情報を踏まえて最適な医療を提供し,EBMを実践できる薬剤師の養成が求められている.大阪薬科大学(現大阪医科薬科大学薬学部)では,実務実習でEBMを実践できるように4年次にチーム基盤型学習を用いたEBM演習を行っており,演習の中で患者問題を抽出し,医学論文の評価,適用へとつなげている.2020年度は,新型コロナウイルスの影響による制限で,2019年度に比べ演習内容を縮小しての実施となった.本シンポジウムレビューでは,演習前後で行った理解度確認試験を年度毎に検証することで,本演習の教育効果を報告する.また,EBM演習での学習内容を評価するために,臨床準備教育における概略評価表(例示)〈近畿地区版〉を用いた評価について述べる.
著者
藤原 正規 中澤 公揮 甲谷 繁 塚本 効司 小渕 修平 上田 寛樹 川島 祥 上田 昌宏 清水 忠
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.2020-068, 2021 (Released:2021-03-30)
参考文献数
15

基礎薬学系実習の評価において,これまで汎用されていた実習レポートの評価だけでなく,技能と態度も含めた総合的な評価が求められている.本研究では,物理系薬学実習の受講生に対してアンケートを実施し,レポートルーブリックおよびピア評価の導入に対する意識を調査した.アンケートのCS分析の結果,レポートルーブリックに対して,重要維持項目となったのは,「目標の明確化」と「課題の具体化」であった.一方,要改善項目は「学習意欲の向上」と「目標達成意欲」であった.ピア評価において,重要維持項目となったのは,「実習実施における必要性」,「学習意欲の向上」と「自身の実習態度への影響」となり,要改善項目は示されなかった.以上の結果から,基礎系実習科目において,レポートルーブリックは,受講生に対して目標の明確化および課題の具体化という点で影響を与え,ピア評価は,受講生自身の実習態度に影響することが示された.このため,両評価を組み合わせた評価を行うことが必要であることが示された.
著者
安原 智久 串畑 太郎 上田 昌宏 栗尾 和佐子 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2020-058, (Released:2021-01-29)
参考文献数
4

新入生は,単に学力的な教育をうけるだけではない.高校生から大学生への転換を自覚し,自律的な学習活動姿勢を身に着けていく過程である.ディスカッションやプレゼンテーションなどの能動型学習へ挑戦し,成功体験を得ることで積極的な学習習慣を育んでいく期間である.この期間の教育は,新入生の大学への印象を大きく左右する.自らの大学への帰属意識や満足感を持つかどうかは,この時期に提供される教育の質に大きな影響を受けると考えられる.入学直後に学生が持つ学部への印象は,学習への取り組みを高次学年に及ぶまで左右する要因になり得る.以上,新入生へ入学後に提供する教育は,単なる基礎学力の養成だけではなく,薬剤師を目指す学習意欲を育むうえで極めて重要となる.COVID-19の影響により,新入生が経験するはずであった学習面以外での大学からの支援が,基本的にすべてオンラインとなった環境でどのように展開していったかを記していく.