- 著者
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池内 慈朗
- 出版者
- 大学美術教育学会
- 雑誌
- 美術教育学研究 (ISSN:24332038)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.1, pp.33-40, 2016 (Released:2017-03-31)
- 参考文献数
- 23
表象は,ここにいながら自分の前にないモノ・世界を想起する能力である。幼児期,あるモノがそれ以外の何か別のモノをさすことを理解できない時期が存在し,小さな椅子に無理やり腰掛けようとするスケール・エラー等がみられる。本論考では,第一に,幼児期,「表象」「二重表象」を用いてどのように世界を構築していくのか,第二に人のミニチュア(縮小物)への嗜好等を俯瞰し,幼児期における“ごっこ遊び”などから表象理解,スケール理解について考察する。第三に,認知考古学からみた初期人類の知能の用い方と現代人類のMI(多重知能)理論の用い方の違いについて比較し,イメージ・スキーマ,プライマリー・メタファーの発現期を探る。古代から現代に至る過程で,認知的流動性の産物として生まれた芸術であるが,その(芸術)理解の基礎となる時期として,幼児期の2–3歳は重要な時期にあたることを検証したものである。