著者
池 志保 池永 真義
雑誌
福岡県立大学心理臨床研究 : 福岡県立大学心理教育相談室紀要 (ISSN:18838375)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.75-85, 2017-03-31

本研究は,心理学と美術教育学の研究者共同で創造性研究に取り組むことを試みたものであり,大学生の創造性を発揮させる教育者の態度にはどのようなものが有効か,美術の対話型鑑賞を用いて,本人の資質と環境との相互作用を念頭に心理学的に探索し,検証していくことを目的としている。九州地方A大学大学生(男性2名,女性8名,平均年齢21.1歳,SD=0.74)を対象に,2015年12月中旬,大学の附属研究所にて対話型鑑賞を通した実験を行った。その際,創造性を測る目的で,対話型鑑賞前後にバウムテストを実施し,結果をCFBS(Creativity Focused Baum-test Scale;池・山本,2015)の指標を用いて事例ごとに分析を行った。結果,自由な発想で作品を語り合える教育者の態度や学生との相互作用によって,大学生の創造性が賦活する可能性が示唆された。また,創造性に抑制的に働く非創造的態度は減退する可能性が示唆され,資質に関わらず学生の創造性が発揮される可能性が考えられた。
著者
池永 真義 東藤 弥生 橋之爪 美砂
出版者
大阪教育大学 幼児教育学研究室
雑誌
エデュケア
巻号頁・発行日
vol.34, pp.9-23, 2014-03-31

今日,全国的に幼小・小中をはじめとする異校園種間連携が盛んである。だが,そのような連携パターンによる協働だけで,本当に豊かな表現活動における実践創造は生まれるのだろうか。このような疑問が生じるのも,円滑に連携教育が推進されている学校園がある一方で,学校文化の違いや対等互恵の原則が十分に踏まえられていないため,双方が多忙間しかもてない連携教育も見られるからである。このような"疲弊した連携教育"が生じる大きな原因の一つとして,当事者である教員自らの「主体的な実践創造」が弱いことがあげられよう。さらに,相手の校園がもつ子ども観や教育方法に対する無理解もあげられるだろう。本研究では,多くの連携教育研究につきまとうこれらの壁を克服するため,中学校教員による幼稚園の出前保育を一つの実践的媒介としながら,校種の隔たりの大きい中学校美術科(鑑賞領域)と幼稚園(領域「表現」)の教員間によるコミュニケーションを通して,連携教育ならではの表現教育における新しい実践創造のあり方を明らかにしたい。この第一報では,そのような中学校美術科教員による問題提起の内容と出前保育の実践概要を示す。第二報では,これらの内容を受けて幼稚園教員との座談を展開し,最後に本研究全体の省察を行う。出前保育では,18世紀に京都画壇で活躍した伊藤若冲(1716-1800)の屏風『鳥獣花木図屛風』(複製画)を幼児(5歳児:20名)に鑑賞させた上で,表現活動に取り組ませることを試みた。美術にかかわる表現の多くは,幼稚園の表現方法に限らず,「みる」活動よりも「えがく,つくる」活動が中心である。しかし実践では,その逆に「みる」活動にウエイトをおき,園児らの柔軟な言葉のやり取りを通して表現活動への興味づけを高められるようにした。
著者
池永 真義 森永 裕幸
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第5部門, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.105-116, 2013-02

第一報となる本稿では,美術科と社会科による共同授業を通して「思考力・判断力・表現力」を高める教育プログラムの開発にあたってふまえるべき諸点について論じている。まず,「思考力・判断力・表現力」を促進する授業づくりの条件として,従来の教科内範疇を超えた教材開発が必要であること,適切な教材の機能性をふまえることの二点を確認した。次いで実際の教育プログラム開発における基本的視座として,情報分析力を高めるために日本の古典絵画を積極的に活用すること,「みる力」を「思考力・判断力・表現力」を促進するストラテジー(手立て)として捉えること,英語をコミュニケーションメディアとして学習過程に積極的に活用することの三点をあげた。第二報では以上の諸点をふまえ,実際のプログラムおよび授業の展開,考察等について論述する。This paper is intended as a study for a new education program which combines Art and Social Studies ; the aim being enchancing students's ability to think critically and express views. In this first half we are going to point out two conditions for enhancing such abilities. One is the development of teaching materials beyond conventional framework. The other is that teaching materials must be on the basis of appropriate functions. The second half concerning the development of this Education is as follows; 1)Analize information with the help of the Japanese traditional Paintings. 2)Enhance abilities to think critically and express their views by visual training as effective strategies. 3)Making use of English as a communication media through the process of learning. In the next issue we are going to expand the actual curriculum and practices based on these conditions and concepts.