著者
佐藤 慶明 入口 豊 西島 吉典
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第V部門 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.11-22, 2014-02-28

1993年に10クラブからスタートしたプロサッカー・JリーグもJ1・J2を合わせて40クラブに増加し,現在はJ3リーグ結成が計画されるまでに発展した。Jリーグの誕生が,日本選手のレベルを格段に引き上げ,日本代表チームの4大会連続のワールドカップ出場と世界ランキング上位に躍進させる原動力となったことは疑う余地がない。しかし,順調に発展してきたかに見えるJリーグ・クラブ各チームにおいては,個別には経営上の様々な問題を抱えていることも事実であり,それらの問題の克服なくして今後の大きな飛躍を望むことは困難な情勢にある。本研究は,Jリーグ所属全チームの中でも親会社を持つクラブの順位浮上のためのマネジメント上の問題点を,J1・J2各1チームのクラブ経営のトップであった元社長,GMへのヒアリングを中心に事例的に明らかにすることを目的とする.特に本稿では,J1チームの中でもトップクラスの人気と観客動員数を誇る「浦和レッドダイヤモンズ」の元GMへのインタビューを基に,クラブ経営トップから見た経営上の実情,問題点,GMの現状とあるべき将来像を明らかにする。The purpose of this study is to make the actual conditions of management of a professional football club in Japan (J- league) clear through having an interview with the general manager of the J1- league and the J2- league clubs. Especially, the present study is to examine the actual conditions of management of the "Urawa Red Diamonds" (J1) through having an interview with the former general manager of the Urawa Red Diamonds. The finding and discussions on the following topics are presented in this paper: 1. An outline of the Urawa Red Diamonds 2. Contents of an interview with the former general manager of the Urawa Reds (1)about a management of the general manager (2)the relationship among the front, the staff, and the players (3)the duties of the general manager (4)the present state and the future of the general manager of the J- league
著者
橋本 是浩 土田 秀雄 赤澤 寿一 新井 文子 乾 東雄 加藤 章三 坂本 宏和 下出 心 疋田 直樹 山本 景一
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.61-80, 2005-09-30

本研究は,数学学習での「文字」の習熟の実態について,中学生・高校生・大学生を対象として,予備調査を行った。予備調査の調査結果の部分的な分析から中学生・高校生の文字に対する未成熟なイメージの実態を明らかにするとともに,それらの結果から 仮説(I):生徒は,文字の表す「数」を固定的に捉えている 仮説(II):生徒は,文字のイメージを自然数的に捉えているの2つの仮説が導出できたことを報告する。
著者
中西 一弘 覚道 知津子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.223-238, 1992-02

幼児期の子どもが選択する絵本は,どのような絵本であろうか。それは大人の選択する絵本と一致しているであろうか。このことを明らかにする目的で,異なるタイプの2冊の物語絵本を取り上げ,比較研究を行った。取り上げた絵本は,「うさこちゃんのたんじょうび」(福音館1982年)と「ノンタンのたんじょうび」(偕成社1980年)である。幼稚園児(計165名)を対象として,絵本に対する好みの実態調査を行った。子ども達が選んだ絵本は,識者が推薦し,一般的にも高い評価を得ている前者の絵本ではなく,後者の絵本が圧倒的な支持を得ていることがわかった。幼児に支持されたのは1子どもの興味を引くと共に理解しやすい絵の描き方,2子どもの言語水準にみあったことば表現3絵と文が効果的に適合して豊かな物語世界を構築していること4子どもの共感を呼ぶ主人公像や絵本主題を後者の絵本が具備していることが原因であろうと判断した。識者の推薦する絵本と子どもが選択する絵本とは,大きなズレがあることが判明した。A comparative study two different types of illustrated story books was conducted,with the objective of clarifying whether or not picture books chosen by young children would be the same as those chosen by adults:the books used in this study"Usakochan's Birthday"(published by Fukuinkan,1982)and"Nontan"s Birthday'(published by Kaiseisha,1980).This investigation of actual preferences for books was carried out using kindergarten pupils(a total of 165 children).Our investigation revealed that the picture book,"Nontan's Birthday"was the overwhelmingly favorite among these children,who preferred in to"Usakochan's Birthday",a picture book which has been highly appraised and recommended by well-informed adults including critics and experts on juvenile literature.We feel that"Nontan's Birthday"received the children's support for the following four reasons.1 The style of its drawing could be easily understood by children and generally attracted their interest.2 Its linguisticexpression matches the children's own language level.3 The illustrations conform effectively to the text,and together constitute a rich"story world".4 this picture book contains images of heroes and themes,which can arouse the sympathy of children.The results of this study indicate that there is a great difference between the type of picture book selected by children and the type of picture book recommended by critics and experts juvenile literature.
著者
山村 慎 吉野 秀幸
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.27-43, 2005-02-21

J. L.マーセルは,音楽は感情と深い関係があると述べている。日本の教育課程における音楽科の目標が豊かな情操を養う点にあることからみても,このマーセルの考えは非常に興味深いものである。一方,マーセルはまた音楽における別の視点,つまりその社会性および道徳性についても言及している。マーセルによるこのような音楽の捉え方は, J. C.スマッツの唱えるホーリズムの考え方に相通じる面があるように思われる。なぜなら,感情とは他者および自己自身との社会的,道徳的つながりの中で育まれると言えるからである。そこで,本論文は,音楽教育が感情の教育に有益なものであることを,マーセルの論および音楽美学の考えに基づいて明らかにする。そして同時に,音楽教育が他者とのかかわりを体験する場となり得ることを,マーセルの論とホーリズムにおける「全体性」の概念を統合することによって明らかにする。
著者
越桐 國雄
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第5部門, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.1-12, 2012-02

学習指導要領が改訂されるごとに小学校理科の教育内容も変化してきた。1980年以降,理科の授業時数が減らされるとともに,内容の精選により学習事項も削減されてきた。ところで,2008年に告示された学習指導要領ではこれに歯止めがかかり,一転して理科の教育内容は増加した。その一方で,取り上げられている事項や内容とその妥当性について戸惑いの声もきかれる。ここでは,物質・エネルギー領域の物理分野について,現行の小学校学習指導要領や理科教科書と,内容の精選が始まる以前の1958年に告示された学習指導要領や教科書とを比較した。これにより,今回の改訂で導入された教育内容の問題点について検討するとともに,小学校理科の教育内容の在り方を考察する。Contents of the elementary school science have been changing as the course of study or the national curriculum of Japan is revised. Since 1980, contents of elementary school science were carefully selected and reduced while cutting the time of school science classes. Meanwhile, in the 2008 revision of the course of study in Japan, it stopped to cut the time for school science classes, and it turned to increase and the contents of elementary school science are also increased. On the other hand, voices of confusion about the content and validity of newly introduced units in elementary school science are addressed. Here, we compare the elementary school science textbooks and the current school curriculum guidelines, between 1958 and 2008, since the past course of study of fifty years ago are thought very much appreciate for the science education. In this way, for the units of enegy and matter, we shed new light on the past textbooks and the course of study of 50 years ago and get hints how to improve the current curriculum and teaching method.
著者
大島 昇 北野 洋子 形埜 まり江 河野 健三 福嶋 美津子 山本 晃 藤田 裕司
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.213-223, 2005-09-30
被引用文献数
1

特殊教育から特別支援教育への転換が迫られている折から,大阪教育大学附属養護学校における個別の教育支援の実状を1事例に即して紹介した。事例は知的障害及び場面緘黙症と診断された女子生徒で,高等部入学後3年間の取り組みの経過を,それに連携的にかかわったクラス担任,進路支援担当者,プレイセラピー担当者,養護教諭,精神科校医らの記録に基づいて要約する、とともに,場面緘黙症の生徒への教育支援の在り方について若干の考察を加えた。
著者
疋田 孝彦 三輪 辰郎 橋本 是浩 鈴木 正彦
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第V部門 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.11-22, 1981-10-31

教員養成系の大学における小学校教員養成課程のカリキュラムには,「小学校専門」とよばれる科目がある。小学校では,全教科担任制が実施されていることから,小学校教員には国語・社会・算数・理科・音楽・図画・工作・家庭・体育の8教科全部にわたる広い知識が必要となる。この見地からも,免許法施行規則第2条において,小学校教諭1級普通免許状の場合は,それぞれ2単位以上計16単位以上を,小学校教諭2級普通免許状の場合には,それぞれ2単位以上,計8単位以上を修得するよう規定している。ところで,その性格,実態およびあり方については,教育大学協会においても,しばしば論議されいくつかの報告があるが,特定の教科について論じたものは少ない。数学については,東京学芸大学における研究「数学・理科の初等・中等教員の養成,現職教育及び大学院教育の体系化に関する研究」(研究代表 鳥塚一男,昭和55年3月)が注目される程度である。本研究ではとくに小学校専門の数学に焦点を当てて,その内容と方法とがいかにあるべきかを,実状をふまえながら探究し,できるならば,それらを策定し,それらにふさわしい教材の開発をすることを目的とした。なお,この研究は2年計画で行ない,その第1年次においては,主として実態をとらえることを主眼においた。したがって,研究方法としては,教員養成系の大学における小学校専門の数学の現状,困難点,望ましいあり方等についての分析と,現場教員の意識および大学への要望の分析とを,アンケートと直接面接によって行なった。本報では,各大学の教員養成機関へのアンケートの結果のつぎの諸点について考察を加える。(1)各大学での,一般教養(自然科学)の数学としての内容・範囲・程度(2)各大学での,専門科目の教科(数学)についての内容・範囲・程度また,現場教師へのアンケートの結果のつぎの諸点について考察を加える。(3)大学の数学および数学教育の内容・方法についての現場教師からの意見(4)算数指導上,どのような数学を必要と現場教師は考えているか(5)現場教師の数学観Our problem is what teaching materials of mathematics should be taught in pre-service training for elementary school teachers. For this purpose, we have inquired of (A) elementary shcool teachers about 1) whether materials of mathematics that they studied at unversity are useful for their teaching of arithmetic or not, 2) what materials of mathematics should be taught in pre-service training for elementary school teachers, 3) what teaching methods are good in pre-service training and (B) mathematics professors teaching the pre-service training course for elementary school teachers about 1) what teaching materials of mathematics they teach to the students who do not major in mathematics. The results of these questionnaires are summarized as follows: A 1) YES 15.5%, NO 56.5% 2) properties of the integral and real numbers, and set theory 3) seminar B 1) system of number, integral theory, algebra and geometry.
著者
加藤 好博
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.77-84, 1990-09

平成元年3月に発表された教員免許法の改正で,数学および理科の教員免許状取得に必要な専門教育科目においてコンピュータの活用が強調された。本学理学科では,昭和60年度,パーソナルコンピュータが教育現場へ急速に普及しつつある情勢を考慮して,至急に適切な対処をすべく「理学科情報教育検討委員会」が発足し,昭和61年度から理学科および第二部の学生に,パソコンによる情報教育を実施して多大の成果をあげ現在に至っている。今回の免許法の改正は,われわれの情報教育に対する取り組みが至当であったことを示すものである。これを機会に,その内容をさらに充実させるため今までの実状を振り返り,同時に大きく改編された本学の新しい体制下における今後の情報教育のあり方について提言する。In this paper a Fundamental Teaching Method of Information Science for the School Teacher Training Course in Science and the Night-Time Course of Elementary School Teacher Training is descrived,which has been carried out since 1986.From the experiences during the past few years,a lot of usefull information about the teaching method of information science has been obtained,on the basis of which effective approaches to teaching methods of information science in the fufure are discussed.
著者
本田 勝久 小川 一美 河本 圭司
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第5部門 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.13-30[含 英語文要旨], 2008-09

小学校での外国語活動の必修化を目前に控えている現在,英語活動に関する多くの研究が行われているが,主たる授業者である学級担任の英語学習に対する考え方(ビリーフ)を調査したものは見られない。そこで,本研究は,まず(1)大阪府下における英語活動の実態を明らかにし,(2)小学校教員の英語学習に対するビリーフを明らかにし,(3)その結果から英語活動への提言を試みた。その結果,小学校教員の英語学習に対するビリーフが外国語活動の必修化に影響を与えていることが検証された。同時に,小学校外国語活動に関する「教員への啓蒙活動の必要性」が浮き彫りになった。English Activities has been implemented in many public elementary schools in Japan. According to the Ministry of Education, Culture, Sports and Technology (MEXT, 2007), 95.8% of the public elementary schools in Japan have implemented English Activities in some ways. There is much research on English Activities such as curriculum, materials, teachers' training programs. More than 90% of homeroom teachers (HRTs) are in charge of English Activities in higher grades as a main instructor (MEXT, 2007). In addition to this, MEXT (2007) stated that Foreign Language Activities is to be a compulsory instruction in the near future and said that the language in the Activities is English with some exception. Moreover, it is said that the best way to implement English Activities is team-teaching included HRTs. From these situations, it is clear that the role of HRTs in English Activities become more important. There are many piece of research on issues about implementing English Activities but little research on what elementary school teachers think toward English. Considering these situations, it is necessary to investigate what elementary school teachers think toward English. Therefore, this paper will find this out from the perspective of beliefs. This paper conducted the research that tried to investigate university students and elementary school teacher beliefs toward English by using questionnaires called BALLI (the Beliefs about Language Learning Inventory). The findings are various; 1) there are many differences between the beliefs of English majors or sub-majors students and those of elementary school majors students; 2) HRTs' role in English Activities will become more and more important; and 3) there are some differences among teachers' opinions about introducing English Activities as a compulsory instruction, and the results of this thesis imply that teacher beliefs have an influence on their opinions. The students who belong to English major or sub-major regard English as a really difficult language, but they think learning English is averagely easy. On the contrary, the students who belong to elementary school education major regard English as an average difficult language, but they think learning English is difficult. In other words, the students who belong to elementary school education major have higher affective filter toward English or learning English. English Activities will become a compulsory instruction sometimes soon, and elementary school teachers will insist on many issues concerning the current situation of English Activities such as the instructors, curriculum, and materials. Of course, these issues are important in order to implement English Activities effectively; however, as this paper found that teachers' beliefs, especially about speaking English, might influence their opinions toward English Activities. For that matter, increasing teachers' confidence in speaking English might liberate from their anxiety about implementing English Activities, which might reduce their resistances toward English Activities.
著者
横尾 武夫 片平 順一 小林 英輔 山本 乃里子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C5)教科教育 05 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.p281-290, 1985-12

方位(東西南北)に関する基本的な知識や技術を身につける訓練は、初等教育の段階で行う必要がある。方位の学習は、それが一つの生活技術であること、自然探究の基礎知識であること等の外に「対自的な物の見方」を育てることに意義がある。初等教育における方位の学習の内容には、太陽及び天体の日周運動、地図、方位磁針が含まれる。ここで提案する、各学年の教材については、(1)児童の認識発達に応じた教材の選択を行うこと、(2)それぞれの教材が有機的な連繁を持っていること、に主眼がおかれている。学習をより効果的に行なうには、現在の学校教育の態勢の枠組を越えた考え方が必要である。すなわち、(1)野外教育の場を活用すること、(2)総合学習又は合科学習の場を拡げること、(3)生活学習を重視すること、等である。
著者
山本 信弘 大道 乃里江 戸田 百合子 小山 健蔵 須藤 勝見
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C5)教科教育 05 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.p203-215, 1991-02
被引用文献数
1

昭和20年から現在に至るまでの性教育に関する書物を調査し,教育のなかで性教育はどのようにとりあげられ,位置づけされてきたかを検討した。その結果,性教育は,1)道徳面を重視した純潔教育の時代 2)純潔教育批判から生じた性の生理的側面が強調された教育の時代 3)生理的,心理的,社会的側面を含む人間としての総合的な教育の時代の三つの歴史的段階が認められた。また,学校教育のなかでの位置づけが不明瞭であることが教育現場での性教育の定着を妨げていることが示唆された。
著者
岡森 博和 柳本 朋子 本間 俊宏 西谷 泉 金谷 博史
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 (0xF9C5)教科教育 05 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.p131-148, 1984-12

第2報では,数学教育におけるコンピュータ・プログラミング,とくにLOGO言語による指導について,小学校・中学校・高等学校での実践を通して,その可能性と方向について論じた。この小論では,小学校における図形教育の中でのLOGO言語の活用,とくに子どもにとって価値のある作業-天守閣の測量・カブトの作成・万華鏡模様の作成-の中での実践を通して,子どもの学習へのかかわり方について考察する。
著者
出野 卓也
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第5部門, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.13-21, 2012-02

生物顕微鏡を用いた観察実習において,顕微鏡操作や観察の指導を個別に行うための教具について考察した。既存の顕微鏡観察の指導用機器や市販のデジタルAV機器の本目的への活用について検討を加え,iPod touchを中心とした新たな指導用教具を開発した。また,この指導用教具を利用した指導方法についても検討し,個別指導,グループ活動,全体指導における利用方法を提案した。
著者
中西 一弘
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.29-42, 1970

ベザール著『文学の方法』については、その全体の構成、とくに教材の組織化と指導法の大綱を第1報で述べた。第2報では、読むことの学習指導を主にとりあげ、ベザールの「方法」を具体的にみていくことにする。「文学の方法」における読むことの指導は、「分析的索引」の「読む技術」の項目によってその構造が端的に示されている。読む技術 I.多読 1.一冊の書物または一章・一節の研究 2.作者の研究 3.文学史の研究 II.短いテキストの解釈 1.授業の前に 2.授業中に この多読と精読との2部構成がベザールの指導法の基本であるが,思想(イデー)の研究には、「I.多読」が有益であり、表現の学習には「II.短いテキストの解釈」(精読)が必須とみている。「書くことを学ぶ最良の方法は、もっぱら思想(イデー)に意を注ぐことである。そのために、もし絶対に二つの異なった方法のうち一つを選ばねばならないとするならば、私は、数行を詳しく学習するよりも、おおよその理解を求める長い分量の読みの方により大きな信頼を置くだろう。幸いなことに、この苛酷な二者択一をわれわれに迫るものはいない。最近の訓令(1909)が、前者の読みを加担しているようにみえるが、後者の読み方学習をもまた同様に勧めているのである。そして、訓令はこの二つの方法が相互に補い合うのがよいと認めている。しかしながら,訓令はつぎのことを付け加えている。短いテキストの解釈学習という方法それのみが、正確な表現への意識を諸君にもたらす、と。『選択することと正確に述べること』、この二つこそ、作品解釈に関して考えうるかぎりの忠告のすべてを含んでいる、とも訓令は述べている。」しかし、この2部構成の有機的活用が著者の最も苦心した点であろう。ベザールはどのような方法によって、二者の結合をはかったのか。つぎの4項目が考えられる。○学習計画の設定とその合理化○学級文庫の整備充実○ノート(ルーズ・リーフによるカード化)の作製と整理○課題作文の執筆 これらの4方法による「多読」と「精読」の読むことの学習指導を,『文学の方法』第2部芸術における理性の勝利-17世紀の古典精神-を中心とし、なかんずく、悲劇作家ラシーヌの学習に焦点を合わせて述べていくことにする。Méthode d'observation de Bezard consiste à apprendre la manière de prendre des notes. Exemple des notes analysant une tragédie, Andromaque de Racine, sous la forme de titre et compte rendu de classe qui nous indiquent comment l'auteur dirige l'étude d'un livre ou d'un chapitre.
著者
柳本 朋子 中本 敦浩 福山 志穂
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.89-99, 2002-09

現在の数学教育は, 新学習指導要領による内容の削減, 数学嫌いなどのほか, 学校数学を取り巻くさまざまの観点から, その方向性の検討を迫られているといえる。これからの社会を生きていく子どもにとってどのような数学の力が必要になるのか, まさに教育内容の抜本的な再編成を検討する必要がある。筆者らは, これからの数学教育の内容として, 形骸化した基礎・基本とそれにのった解法を習得するより, むしろ, 与えられた数学的対象から自分の力で数学的性質や構造を感知・抽出し, 個々の問題を論理的に解決する力が必要であると考える。そのための教材として, グラフ理論の導入を検討している。ここでは, 小学生を対象とした教材化・教育実践の試みをとおしてその可能性を考察する。Mathematics educational system in Japan is currently facting problems such as the reduction of contents in the new curriculum; and the negative attitude exhibited by students towards mathematics. One way to solve these problem is to think about the kind of mathematical abilities needed in the society we now live in, thus, there is a need to change the mathematics curriculum dramatically. We have been considering introducing Graph Theory as one of the teaching materials that will help enhance the pupil's mathematical thinking and will make them realize that "thinking"is interesting. An experimental teaching on graph theory was conducted in elementary school. This paper presents the result and considerations in introducing the subject.
著者
秋吉 博之 小椋(国正) 彩沙子 岩間 淳子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第5部門, 教科教育 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.11-21, 2015-09

平成10年改訂の学習指導要領で課題選択制とされた「人の誕生」と「魚の誕生」が,平成20年改訂の学習指導要領から必修になった。改訂に伴い,新旧教科書の内容にどのような変化が見られたかを,「人の誕生」に焦点を当てて調査・分析した。その結果,以下のことが明らかになった。小単元のページ数は全出版社で増えていた。卵の成長を示す「図・写真の数」は増える傾向が見られなかったが,図や写真を大きく表示することで,視覚的によりわかりやすく工夫したものと考えられる。「人の誕生」は,保健の学習内容と重なる部分が大きい。両者の学習内容の分析を行い,学習をより充実したものにすることが今後の課題となると考えられる。In the course of study revised in 1998, there was a choice of either the unit of "human birth" or "animal birth" in elementary school 5th grade of Science in Japan. After that, the unit "animal and human birth" became a compulsory unit in the course of study revised in 2008. In this study, we focused on "human birth"and analyzed what kind of change was seen in the contents of the old and the new textbooks of about 5 publishing companies with revision. The results of the study are as follows: The pages of this unit increased at all publishing companies. The number of photographs displaying the growth of the egg did not increase. The unit was devised more clearly visually, by displaying figures and photographs. "Human birth" has many parts overlapping with the learning contents of Health. These results indicate that it is necessary to analyze the learning contents of Science and Health, and should be improved further.
著者
畦 浩二 村上 貴彦
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第5部門, 教科教育 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.13-26, 2016-02

本研究は,西日本の低地に生育しているコケ植物の中から,学校内でよく見かける雌雄同株の蘚類5種:ヒョウタンゴケ,サヤゴケ,タチヒダゴケ,ヒナノハイゴケ,ノミハニワゴケを選定し,これらの繁殖季節を明らかにすると同時に,中学校理科で活用できる教材を開発することを目的とした。大阪市内外の2地点で一年間にわたり定期採集して標本を集め,Greene(1960)に基づいて配偶子のうの発生から胞子散布に至るまでの一連の過程を追究した。その成果は,以下のようにまとめられた。(1)樹幹性のサヤゴケ,タチヒダゴケ,ヒナノハイゴケの繁殖季節のパターンはよく類似していた。(2)胞子散布の時期は5種にほぼ共通しており,概ね5~6月にかけてであった。(3)大型の胞子をつくるサヤゴケについて,胞子培養により胞子発芽から配偶体形成までの一連の過程を観察した。(4)コケ植物の生活を理解するための教材として,図版「サヤゴケの生活環」を開発した。The purpose of this study was to clarify the reproductive phenology of mosses growing well in the school and to develop the teaching material utilizing in lower secondary school science. The developmental stages of gametangia and sporophytes were investigated for the following five monoicous species: Erpodium sinense, Funaria hygrometrica, Glyphomitrium humillimum, Haplocladium angustifolium and Orthotrichum consobrinum, on the basis of specimens gathered from the two sites in Osaka. The method to record developmental stages was devised by Greene (1960). The results were the following: (1) The following three species growing on tree trunks: Erpodium sinense, Glyphomitrium humillimum and Orthotrichum consobrinum, had the similar patterns on the reproductive phenology. (2) Spores of five species were dispersed almost in May to June. (3) By the spore culture, the authors observed the process from spore germination to gametophyte formation on Glyphomitrium humillimum. (4) The authors developed the new teaching material to recognize the life of moss, which was named "Life cycle of Glyphomitrium humillimum".
著者
宮前 智一 細川 太郎 土谷 友利 前原 充 西岡 賢一 兵井 純子 鈴木 康文
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.21-32, 2004-09-30
被引用文献数
2

力学に関する学生実験やこども達への演示教材としてパチンコの玉を転がす滑走台を製作した。長さ2mのカーテンレールをベニヤ板に打ちつけたものである。」三の速さ(Vm>2m/s)は, 玉がレール上の特定の場所を通過するときに発する電気信号の時間間隔を記録することによって測定した。レールの先端に発射台を取り付け, そこから飛んだ玉の飛距離を測定した。レールの途中にもう一つの玉を置き, 玉どうしの衝突についても演示や測定を行った。これらの測定で求めた玉の運動エネルギーを力学的エネルギー保存の法則に照らして比較考察した。また衝突における運動量についても考察した。これらの考察によって, "慎重に測定した結果からは, 従来の物理教材で無視されがちな効果が見える" ことが例示できた。この教材は, 用い方を選ぶことで, 大学生, 高校生, 中学生, 小学生それぞれに力学現象への興味と有意義な理解を与えるものである。
著者
吉本 直弘 永田 佳奈子
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第5部門, 教科教育 = Memoirs of Osaka Kyoiku University (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.21-29, 2013-09

小中学生の雨に対する科学的な興味・関心の喚起を図るため,雨の強さと雨滴の大きさの関係を可視化する教材の開発を行った。光学式雨滴粒径分布計によって観測された雨滴粒径分布データを基に,雨滴の10倍の直径をもつ発泡スチロール球を用いて雨滴の粒径分布模型を製作した。雨滴の模型を用いることにより,強い雨は弱い雨と比べて大きな雨滴が降っているだけでなく,大小様々な雨滴が数多く降っていることを視覚的にわかりやすく示すことができた。The teaching materials that visualize the relationships between rainfall intensity and raindrop size were developed in order to rouse scientific interest and concern about rain for elementary and junior high school students. Based on raindrop-size-distribution data observed by an optical disdrometer, the raindrop-size-distribution models were made using the styrene foam balls with diameters ten times larger than raindrop diameters. It could be shown intelligibly using raindrop models that large raindrops and a large number of raindrops with various sizes were observed in heavy rain in comparison with light rain.
著者
岩崎 由紀夫 山田 芳明
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. V, 教科教育 (ISSN:03893480)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.135-148, 2000-08
被引用文献数
1

近年, 図画工作科・美術科においてコンピュータを活用した教材の開発が盛んに行われている。コンピュータを用いた教材の実施の分析や傾向についての考察も試みてきたが, 子どもたちの造形表現の発達過程を無視したり, スキルを超えたりしたような教材も多々見受けられる。そこで本稿では, 子どもたちの造形表現の発達を踏まえた図画工作科におけるコンピュータ教材の開発やコンピュータの活用法を探ることにより, 造形表現の発達とコンピュータの有効的な活用法を追究してみることにする。かつて, シルバーマンは『教室の危機』で, オープン・スクールの教育形式は「教師が, 時間の枠組みにではなく, 空間に構成され高度に組織化された環境をつくりだすことから生じてくる。そして教師は, その環境が子どもの興味, 活動, 必要に応じて変わるように処置していくのである。」と述べた。これからの学校のあるべき姿として, 個別化・個性化教育を推進する一方策として, 子どもの造形表現の発達と一人一人の興味・関心に対応するコンピュータ教材の活用の関係を明らかにしたい。We would like to the way of making use of it which is the effective target of the development of the molding expression and the use forthe computer subject in the arts and crafts course and a computer based on the development of the children's molding expression.